学生時代、動物検疫所でアルバイトをしたことがある。
家畜を出荷する前に検査する施設であり、仕事は牛舎の清掃だった。
コンクリートの床にたまった牛糞をスコップで除去し、そのあと水道ホースで洗い流す作業だった。
馬の糞は団子のようでかわいげもあるが、牛糞はべっとりとしており、糞の飛沫が洋服に付着した。
まさにクソまみれで、きつい、汚い、臭い、の4Kの仕事だった。
これらの牛は、やがて肉牛として出荷される運命だったが、当時の私は牛肉など食べたことはなく、三畳の部屋でたまに自炊するときは、一番安い豚のコマ肉だった。
こんなアルバイトばかりでなく、たまにいいアルバイトもあった。
理容コンテストのモデルのアルバイトをしたことがある。
何人か応募したが、私の髪の質が合っていたのか、若い理容師さんは私を選んだ。
当日、複数の審査員の前で、コンテストが行われた。
モデルといっても、ただ座って散髪されるだけなので、こんな楽なことはなかった。
私の髪型は「ロンパリ」といい、ロンドンとパリのことらしかったが、どこがロンドンで、どこがパリなのか、モデルの私にもわからないものだった。
普段と違う奇抜な髪型というのが難点だったが、ただで散髪してもらい、しかもお金をもらえるという、珍しくいいアルバイトだった。