メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『ウミガメと少年』野坂昭如

2010-08-12 18:32:12 | 
野坂昭如 戦争童話集 沖縄篇『ウミガメと少年』
野坂昭如/著 黒田征太郎/絵 講談社

▼あらすじ
太平洋戦争の激戦区、沖縄。毎年この浜辺に卵を産みに来る母アオウミガメは、
豊漁の儀式で果物や酒をもらい、甲羅についている藻やウツボを取ってもらうのが常だったが、今回は違った。
焚き火の火が激しく、漁船が多すぎ、嫌な臭いが漂っている。けれども気にせず卵を産んで海に帰る。
父母、祖父母ともはぐれた少年は、もう何日も食べてなくて、1人隠れていた洞窟から海亀の産卵を見ていた。
「このままでは爆撃でヤラれてしまう」と、卵を安全は砂地に避難させ、毎日砂をかえて温めていたが、
フラフラして割れた卵を1つ無意識に食べてしまってから、次々とすべての卵を食べてしまっていた。。

本書の読書感想文を小学生が書いた原稿を校正したことを思い出す。
子どもたちはみんな戦争の理不尽さと、少年の状況、本当の気持ちを理解していてよく書けていた。
この少年は死んでしまったのだろうか?親亀は子どもが孵化するか、無事に海に還るかまでは考えない。
そんな、つき放したようでいて、毎年繰り返される大自然の営みと、人間の愚行の対比が鮮やか。

イラストの深い蒼の水彩画と、火と死体だらけの真っ赤な数ページの対比も素晴らしい。

同書はスタジオジブリからも出版されている。この絵もリアルでステキ。

野坂昭如戦争童話集はほかにもいろいろあるみたいで、アニメ映画化もされているようだ。
とりあえず、図書館にあるだけ全部借りてみたので、随時その読書メモを書いていく予定。


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『年老いたメス狼と女の子の話』野坂昭如

2010-08-12 18:32:11 | 
絵本 野坂昭如 戦争童話集1 年老いたメス狼と女の子の話
野坂昭如/原作 水谷明子/文  平田敏夫/絵  汐文社

前文
「戦争ほど、童話にふさわしい、といっては語弊があるかもしれないが、舞台、道具立て、人物の配置にふさわしいものはない。つまり、人間が生きるということは、常に戦争なんだし、人間そのものがえがくのが、童話という枠組。人間は残酷なものであり、生物であればこれは当然、生きるためには何でもする、しかし、人間なればこそ、べつだん人間を特別に考えるわけじゃないが、やさしさを、自らを養うために食べる相手にだっていだく。そして、人間は、やさしさゆえの悲しみを知っている。」野坂昭如

逃げるのに足手まといとなって母親に捨てられた、はしかに罹った少女を助けた、老いた狼の話。
切羽詰まった時に生まれる奇妙な助け合いは、
タイムドーム明石で見た絶滅寸前で共存した細菌の話とリンクした/驚
幸せに暮らせるはずだった親子を引き裂く戦争の無情さ、理不尽さが
短い文と絵の中に鮮やかに描かれている。
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『焼けあとの、おかしの木』野坂昭如

2010-08-12 18:32:10 | 
絵本 野坂昭如 戦争童話集2 焼けあとの、おかしの木
野坂昭如/原作 水谷明子/文 百瀬義行/絵 汐文社

本書は戦後の話。空襲に怯えなくてもよくなったことで復興のきざしが出てくるけど、
とにかく食料やモノが不足していて、子どもたちもお腹一杯食べたことがない。
いい香りのする木を見つけ、葉や枝をかじると甘くて、やさしいおかしの味がしてビックリ!

そのおかしの木の根元には、そこにあったお屋敷に住んでた8歳の男の子が埋まっていた。
病弱だった男の子のためにお母さんがバウムクーヘンを買ってきてくれて、男の子は喜んだ。
父を早くに亡くし、母は空襲で焼け死に、1人残った男の子もおかしの木の夢を見て防空壕で亡くなった。

その木が子どもにしか見えない空想の木だって分かる最後にじぃーんとした。

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『Lの世界』the L word ファイナルシーズン

2010-08-12 12:05:31 | ドラマ
『Lの世界』the L word ファイナルシーズン(2009)
ジェニーの死体が発見された衝撃のシーンから始まる/驚×5000
どうしてそうなったかっていうミステリー仕立てになってる。
ファイナルは8話までで短くて、シーズン6まで続いた完結版にしては釈然としない終わり方。
最後に笑ってるのは、重苦しいままにしない演出?
なんだか、みんなで計画してジェニーを殺してほくそ笑んでるか、死んでくれてやっと解放されたみたいな印象に見えない?

結局、冒頭から終わりまで、登場人物も視聴者もずっとジェニーに振り回されてたんだな。他殺か自殺かも分からないままだし。
彼女の暗い過去を考えれば、自分でもどうしようもなかったのかもだが、人を傷つけてもいい理由にはならないのでは?
ティナとベットの餞別として撮られた映像に、これまでの出演者をざっと振り返ることができる構成になってた。
それぞれの物語はこれからも続くだろうし、押し付けがましいハッピーエンディグより、
この先は本人たちだって全然分からないけど、人生は続いていくって感じでいいかも。
マックスも子どもを産む心構えになったみたいだし。ほんとに複雑だねトランスジェンダーって。


映像特典
●彼女たちのラストダンス
●グッバイ ジェニー
では、女優たちの素の顔がわかるけど、なんとなくそれぞれのキャラクターを引きずってるように見えるから面白い。
彼女たちの今後の活躍が見もの。ずっとビアン役が定着してしまわなければいいのだけど。



『Lie to me』
おまけで第1話が入ってた。ティム・ロス、ケリー・ウィリアムズ、モニカ・レイマンド、ブレンダン・ハインズほか出演。
ティム・ロスもドラマ出演か~。ハリウッド俳優の間では、ドラマやCM出演を格が下がると嫌がるケースが多いって話はもう古いのかな?
まだシーズン1だけがDVD化されてる状態かな?おや?ジェニファー・ピールズが元妻役で出てる。
犯罪心理学、ボディランゲージとかは大好物な分野だから、1話目も面白かった。

story
心理学者カル・ライトマン博士は、女教師を殺した容疑の男子生徒から事情を聞き、無実だと直感。
学校の校長、クラスメイトらにも質問して彼らのウソを次々と暴いて検証していく。
一方、カルのパートナーのジリアン・フォスター博士は、売春疑惑がかけられた政治家の調査を依頼される。
高級ナイトクラブに常連である証拠は掴んだが、その女の子は養子に出した実の娘で、助けたい一心で相談に乗ってたことが分かる。
真実を話して娘を傷つけるより、自分が政界から去るほうを選ぶ政治家。
「人はウソをつく。けれども、自分が信じたいほうを信じればいい」

ちょっとした表情の変化、カラダの動き、目線などから、言葉で言わなくても雄弁に、
時として口でゆってることとは真逆のことを伝えてるのが分かるなんてスゴイ!
シリーズ見終わる頃には、みんなちょっとした心理学者になれるかも?
まあ、知らなくてもいいこともたくさんあるけどね


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『星の方言集 日本の星』野尻抱影/著

2010-08-12 11:54:48 | 
『星の方言集 日本の星』野尻抱影/著 中央公論社(昭和48年発行)

野尻抱影(のじり ほうえい)
日本の英文学者、随筆家、天文民俗学者。準惑星である冥王星の命名者。古今東西の星座・星名を調べ上げたことから「和製アレン」とでも言うべき存在でもあった。とくに、星の和名の収集研究で知られる。日本各地の科学館やプラネタリウムで行われる、星座とその伝説の解説には、野尻の著作が引用されることが多い。星の和名の収集を始めたのは40歳を過ぎてからであった。(ウィキ参照

ん?著者は、しょこたんの遠縁にあたるみたい/驚
和歌に詠まれたり、古典文学に出てきたり、山民&漁民に農業や漁業の目印として利用されたり、
民謡などで昔から口伝されてきたり・・・日本においても星々は身近な存在だった。
それらをネットのない時代に、取材や、地方にいる知り合いからの手紙のやりとりなどで
これだけの資料を集めたんだから凄すぎる!1つの名前を知るのに10年以上かかってるものもあるし/驚
同じ星でも、地方によってさまざまな呼び方があるってゆうのも面白い。

以下は、今でもよく聞くものから、今回知ったステキな呼び名のメモ。

金星=宵(暁)の明星

シリウス=冬のあおぼし

オリオン座=三ツ星(平家星、源氏星)

カシオペア=いかりぼし

さそり座=うおつり星(主星アンタレス=あかぼし)

こと座・ヴェガ=織り姫

わし座・アルタイル=彦星

はくちょう座=十文字星(デネブ=天の川星)

おとめ座・スピカ=真珠星


なにせ古いのでネット上には見つからなかったが、表紙はタイトルもなく段ボール紙のようなシンプルさ。
背のタイトル名と、著者名の書体および扉のイラストに昭和感が滲み出ててなかなかステキ
こうゆう味のある本は今となっては図書館にしか残っていない。
書店はもちろん、通販でももう手に入らないような昭和の本がたくさん眠ってる図書館は貴重だ。

裏表紙には、今時見かけない読書カード?と、返却期日票が貼ってある。
もう使われていないのか、押されたスタンプは昭和57年のままストップしている。
小学校の図書室とかで借りると、こうゆうシステムだったから、
自分の読書カードにこれまで読んだ本のリストが出来て、
スタンプがたまってゆくのがなんとなく嬉しかったりした記憶が甦った。

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