山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

紙背に沁みわたる伊集院静の共感と敬愛

2012-10-31 20:06:38 | 読書
 久々に小説を読み終えた。
 それは、ト書きのないシナリオにぐいぐい引っ張られるような進行だった。

 伊集院静の妻だった夏目雅子の死。
 その精神的絶望から脱却への先生、色川武大(阿佐田哲也)との出会い。

 少年のような色川には幻覚と必死に闘うもう一人の人格がいた。
 それは伊集院自身の姿でもあった。
 結婚してまもなくの妻の死から立ち直れず、酒とギャンブルに彷徨する日々。
 そんなときの出会い。

 人は出会いから立ち直っていく。
 先生との旅で心の傷を癒していく。
 それは自分と人との間に漂う「空気」を吸収する感性の鋭さにある。
 それは、絶望や逆境に直面した人間からしか会得できないものでもある。

 伊集院静『いねむり先生』(2011.4月発刊)集英社。
  行間に滲み込む悲哀と希望。
 それがBGMとなって読む側の心の襞に流れてくる。 
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