
カンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した韓国の映画「パラサイト/半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)を観に行く。学歴偏重の韓国社会の格差社会を、半地下で暮らす貧乏家族が裕福な家族にパラサイト(寄生)していく前半がユーモアとハラハラが混じりあう。
半地下の住居は北朝鮮の攻撃を想定して作った防空壕のようなシェルターだった。それを安価な賃貸で暮らしている失業家族が主役だ。便器の下で暮らしているのが象徴的だ。悪人は登場していないがその必死に生きているちょっとした誤りが亀裂を深め後半の奇想天外な悲劇をもたらしていく。
本映画はアカデミー賞6部門にもノミネートされ、従来の欧米中心の受賞を塗り替える快挙になるのではないかという下馬評だ。是枝裕和監督の「万引家族」がすぐ想い出されたが、両監督の視点は共通しているように思う。しかし、是枝監督の誠実な正攻法に比べて、ポン・ジュノ監督の社会性あるユーモアと背筋が凍る戦慄とを緻密に展開していく手腕が輝く。二人とも社会派監督と言われるのを嫌う。
トランプ大統領の登場でアメリカ型資本主義=「格差社会」の驀進は、ますます世界を席巻・分裂させていく。それは人間の心をも浸透させ、人間どおしの反目・不信を拡大していく。その結果は言うまでもなく、戦火となり、事件となり、破壊・殺戮へと人間を追い込んでいく。これらを受けて、ひとり一人はどのような暮しと生き方を選択し実現していくかが問われている。そんな一石を投じた映画でもあると思う。(画像は映画パンフから)