2022年の「週間文春ミステリーベスト10」や、2023年の「このミステリーがすごい 第4位」等、数々のミステリーランキングの上位になった作品だ。
極限状態での密室で、殺人事件が起こる。その密室から脱出するには?誰が犯人なのか?動機は?
最後の最後で、まったく予想のつかない結末も待っている。
正直言って、あまり、こういった小説は、好みではないのだが、一気に読んでしまったし、面白かった。著者の . . . 本文を読む
久しぶりに江戸川乱歩賞の受賞作(第68回)を読んだ。
中々、面白かった。いわゆる警察小説だ。
最後の選評も、面白かった。この作品を、候補作中、一番小説が下手だ。しかし、後から鍛えられないセンスやアイデアを評価するという声が多かったことだ。なるほどと思った。場面の切り替えが、唐突すぎて、前に登場してきた人物なのか読み返してしまった箇所があったし、不要な部分もかなりあるように思えた。わかりずらい部 . . . 本文を読む
芦沢央の5編からなる将棋ミステリー集を読んだ。
ミステリーと言っても、特別なトリックがあるわけではなく、また、謎解きがあるというのでもなかった。
理解できない不可思議とも言えるものに、一緒に答えを考えるような物語だった。
自分的には、最初の「弱い者」と「ミイラ」という作品が面白く感じた。
特に、「ミイラ」の独特な世界は、興味深かった。詰将棋の投稿に関する物語だ。丁度、今、次の一手問題を毎月 . . . 本文を読む
奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読んだ。
丁度、パリオリンピックで、連日、熱戦を繰り広げられている中で、何となく、読んでみたくなった。
この小説のオリンピックの舞台は、1964年の東京オリンピックだ。
東京オリンピック開催のために、全国民が、躍起になって、準備、工事を推進していた。その中で、連続爆破事件の犯人、東大生、島崎国男は、五輪開催を人質に、8千万円を要求する。国家の威信をかけて、 . . . 本文を読む
荻堂顕の新潮ミステリー大賞受賞作である本書を読んでみた。読売の書評で、この作家のことを知って興味を持った。ちょっと、変わった作品であることはまちがいない。ストーリーとしては、少し前に読んだミッドナイトライブラリーに近いかもしれない。他の地域に逃げたり、現実に絶望して、人生から逃げるのを助けるのが主人公の女性だ。ミッドナイトライブラリーの場合は、自分で、やり直したい人生の分岐を選べたと記憶している。 . . . 本文を読む
浅田次郎の「帰郷」を読んだ。
いわゆる、戦争小説と言えるものだ。
帰還兵の話だったり、高射砲の修理兵の話、父が戦死した息子の話などなど、6篇の短編からなる。
一番、最初の「帰郷」が、救いもあり、好きな作品だった。最後の「無言歌」が、何とも、悲しく、救いのない中で、最後にふさわしい作品だった。著者は、私と同じく父母が戦争体験のある戦後第一世代である。それでも、こういった戦争小説が書けるのは、驚 . . . 本文を読む
奥田英朗の「向田理髪店」を読んだ。
少し、軽いものを読みたくなると、奥田氏の作品を手に取ることにしている。
この作品は、「空中ブランコ」に比べれば、いたって、まじめな作品だ。
かっては、炭鉱で栄えたが、今では、寂れ、高齢者ばかりになった北海道の町で、理髪店を営む主人公の物語だ。こんな町では、何の希望もないから、若者は、外に出ていくべきと、悲観的に考える主人公に対して、息子が、帰ってくるという . . . 本文を読む
玉岡かおるの新田次郎賞、舟橋聖一生ダブル受賞作の「帆神」を読んでみた。
新田次郎賞受賞作品は、結構、自分の好みにあうようだ。
船乗りでありながら、船の新しい帆布の創造、拡大に貢献して、かつ、港の浚渫までやってのけ、士分にまで上り詰めた工楽松右衛門の歴史小説と言える。
また、女性作家のせいか、男女の恋愛の想いについても、描かれている。
少々、長く、読むのに苦労したが、工楽松右衛門という人物の . . . 本文を読む
ときどき松本清張が読みたくなる。正直言って、がっつりは、読んだことがない。
最近、テレビで、松本清張の作品をドラマ化したものを見た。「ガラス...」とかの題名だったが、結構、面白かったので、読んでみたくなった。
この短編集には、初期作品8作品からなる。一作品、「張り込み」は、読んだことがあると思った。
その他の作品は、若干、トリックというか、ネタにこっている感じがした。その辺が、文体などは、 . . . 本文を読む
白石一郎の直木賞受賞作、「海狼伝」を読んだ。
白石一郎の作品は、以前にも読んだことがあるが、久しぶりだ。
戦国時代、海で育った笛太郎が、村上水軍の海賊と行動をともにするようになり、新しい船を建設して、当時の中国に旅立つまでを描いている。海洋冒険時代小説の最高傑作と言われているが、なるほどと思った。
当時の船同士の戦い方や、いろいろな船の種類、操船の仕方など、海流の影響など、詳細に描かれており . . . 本文を読む
長岡弘樹の自薦ミステリー集、「切願」を読んでみた。
6つの短編集からなるが、どれも、ユニークで、独特の雰囲気を持っている。
長岡氏は、短編ミステリーの名手と言われているらしい。
後半のちょっと長めの2作、「迷走」と「真夏の車輪」は、中々、面白かった。予想もつきにくかった。 . . . 本文を読む
ちょっと、気楽に読めるものが欲しい時に、奥田氏の作品は、ぴったりである。
今回の短編集も、よくありそうな日常の中で、おこりうる物語をさらりと描いている。in the poolなどに比べれば、現実的であるのだが、だからといって、それほど深刻でもない。
6作の中で、「家においでよ」が、一番、気に入った。突然、妻に別居された男の行動である。自分の若かりし頃の理想の生活を実践するのだ。終わり方が、良か . . . 本文を読む
佐々木譲の「エトロフ発緊急電」を読んでみた。
山本周五郎賞受賞作だ。
真珠湾攻撃前の情報戦が主なストーリーなのだが、非常に内容が濃密であり、大作とも言えるページ数(623ページ)だった。
南京大虐殺も描かれており、残虐な戦争犯罪にぞっとした。
一方で、主人公である日系米国人の不思議な魅力と、ハーフの女性や、朝鮮人、アイヌなどが、複雑に絡み合い、人種というものの難しさや、愛憎までも描かれてい . . . 本文を読む
奥田英朗の伊良部医院シリーズ第3弾を読んだ。
すっかり、このおかしなシリーズにはまってしまったようだ。
4つの短編からなるが、だんだん、洗練されてきたような気がする。
一作目、二作目に負けず劣らずの第三弾だった。
第4弾が楽しみだ。 . . . 本文を読む
恩田陸の「ユージニア」を読んだ。
傑作ミステリーとのことで読んだのだが、正直言って、自分にとっては、不完全燃焼だった。
話の展開や会話のおもしろさは、さすが、恩田陸だと思ったが、これをミステリーと呼ぶには、もやもやっとしたものだが湧いてくる。
もちろん、怪しさや、話が前後左右に振られる目まぐるしさなど、まあ、よく書いたなあという感想はあるのだが・・・
最後のユージニアノートなるものが付いて . . . 本文を読む