林道に頚部をちぎられた個体があった。110番通報はしなかったが仔細に検分する。犯人は獣ではなく鳥類の仕業の様だ。丸呑みにしなかったのは中型の鳥類だったのか…。
まだ血液は乾燥していなく新しい。鮮血そのもので傷が痛々しかった。数年に一度程度はお目にかかるが、生体ではなく総て息絶えてからである。
ピノキオのような鼻や、房箒のような尾は生きていればユーモラスで可愛い存在だろうにと惜しまれる。
満開の桜を見たかったのか、地下生活で日光を見たくて出た来たのか、「陽を見たか?」と訊ねても息絶えた身では「ヒミズ」と名前の通りになってしまった。生者必滅・会者定離の現世とは言え、哀れこの上なし。桜は吹雪のように舞い始めた。合掌。