GITANESをトレーニングの合間に吸いたいのだが、
それではプラマイゼロのような気もするし。
それとは無関係に・・・。
今夜は15kmぐらいでいいや、と出発した自転車トレーニング。
自宅からお城まで行って帰ってくるコースが、ほぼ15kmコース
になる。
並木も城も堀もそれなりにいい景色だから、それを楽しみながら
走ればいいのだろうが、私のトレーニングは夜間だから、
周囲を見ながら走る余裕などない。余裕があっても暗くて
景色など見えないのである。
城外周の半分を過ぎたところで信号に引っ掛かった。
前方に、同じような自転車に乗る男性。
年のころなら30台半ばくらい。暗いし興味もないので
はっきりとはわからないが、多分それぐらいだろう。
その彼、足元をしきりに気にしている。
どうしたのだろうか。
近付いていくと、彼の足元になにやら大きな物体。
おっさんが、手で自分の顔を覆うようにして倒れている。
傍らにはそのおっさんのモノらしい自転車も倒れていた。
30半「大丈夫ですか?」
30台半ばさんは、こちらの土地のイントネーションでは
ない言葉で、倒れたおっさんに恐る恐る声をかけているようだ。
私「どうしたん?」
30半「倒れているようで。大丈夫ですか?」
私「そんなにやさしく声かけてもアカンやろ。寝てるにしても
倒れたにしても。」
30半「そうですか」
私「彼女を起こすんじゃないんだから。」
歩道とは言え、道の真ん中だ。
30半「大丈夫ですか?」
私「そうそう、そんな感じ。」
それでも倒れたおっさんの応答はない。
30半「どうしましょう?」
私「おーい、おっさん!こんなところで寝てたら風邪ひくぞ。」
倒男「んー、ああ・・・はいはい。」
意識はあるようだ。
私「自転車でコケたか?酒飲んだか?」
倒男「飲んだ・・・。」
私「頭打ったか?」
倒男「いや、ちょっと・・・寝てた・・。」
30半「ああ、よかった。」
私「おっさん、ちょっと道の端へ寄らんかい。踏まれるぞ。」
倒男「おお・・・」
おっさんは道の端へゴロンゴロンと寝返りをうちつつ移動。
ヤケに重い自転車を30半ばさんと一緒に、道の端へ移動させる。
30半「どうしましょうか?」
私「まあ酔っ払いだろうけど、転んだかも知れんね。靴履いてないし。」
30半「あ、ほんとだ。どうしたんでしょう。」
私「知らんがな。」
酔っているらしいが、このままここで眠ってしまっては
何があるかわからない。関係ないが、無関係でもなくなってしまった。
私「一応警察に電話しておくから、あとは大丈夫やで。」
30半「あ、それじゃよろしくお願いします」
私「はいはい。じゃあね。」
30半「お疲れ様でした」
30半ばさんはちょっと笑いながら、自転車に乗り去っていった。
30半ばさんはナカナカの好青年だった。
トレーニングのスタイルでもないし、バッグななめ掛けで
ネクタイこそ巻いていないが、ボタンダウンのシャツを着て、
ジャケットを羽織っていた。細めのコットンのパンツ、
関東方面のイントネーションだから、仕事関係でこちらに
住んでいる人間だろう。
大手の会社か、あるいは学術関係か・・・。
あ、おっさんを忘れていた。
道の端に移動したおっさんからちょっと離れたところで
携帯電話を取りだし、警察に電話。
警「はい、○○警察交換です」
私「あのう、城の南西の交差点で、おっさんが一人倒れてまして」
警「はいはい、城の交差点・・・」
私「○○という店の前。」
警「車道ですか?」
私「歩道です。呼びかけたら応えるし意識はあるみたいだけど」
男の年恰好などを尋ねられ、今どんな様子かも訊かれた。
警「わかりました。すぐに警察官がそちらに行くようにします」
私「はいはい、よろしく。」
警「ではお宅さんのお名前を。」
私「え?ボクはただの、通りすがりの男前です」
ミナミの帝王で山本太郎が言っていたセリフが無意識に出てしまった。
どうして山本太郎なのだ?
警「まあ、そんなこと言わんと、男前のどちらさん?」
私「・・・○○です。」
警「電話番号は?」
私「090-78ちょっと待って、自分が警察の到着待ってるの?」
警「放っとけないでしょ?すぐに着きますんで。」
おお、そりゃあそうだが、それでいいのか?
すでに8kmほど走って出た汗がどんどん冷やされていく。
白のナイロン上下を着て携帯をいじくる私の足元におっさん。
通りすぎる自転車やジョギングの人、アベックが私とおっさんを
一瞬見比べて、みなスピードを上げて立ち去っていく。
違うぞ、みんな。そうではない。
6分後警察到着。
なんとパトカーが2台。警察官が5人。
私「こっちこっち。」
近くの飲食店などから、何事か?とどんどん人が出てきた。
通行人も立ち止まりはじめる。
警官の輪の中に私と足元のおっさん。
警「はいはいどうも。ちょっとご主人!」
倒男「・・・はいはい・・・」
警「お酒に酔うたか?」
倒男「うん、ちょっと・・・」
警「家はこの近く?」
倒男「・・・○○丁」
警「あ、そう。自転車はどうする?押して帰るの?」
倒男「・・・うん、・・・もうちょっと寝る」
警「あのなあ、ここは寝るところと違うがな」
私「あのう、もう帰っていい?」
警「あ、はいはい。ありがとうございました。
あなたが男前の○○さん?」
私「何か、異存でも?」
警「いやいや!あの住所と電話番号とフルネーム教えて。」
私「ええ?なんでやねん。面倒臭い。」
警「申し訳ないです!でもちょっと教えてくださったら助かりますぅ」
ちょっと教えるっていうのは、ヒントだけ頂戴という意味ではない。
結局色々と尋ねられた。こうして個人情報をついでに集めていくのだろう。
もしこのおっさんが死んだとき、重要参考人にもなるのだろう。
警「どうも、ありがとうございました。」
私「はいはい。」
汗が完全に引いてしまった。
冷えた身体を再度温めるべく、速めに走る。
次回からコースを変えようと思う。
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