GITANESを再開するときは、
多分周囲の人を皆敵にまわすことになるだろう。
それとは無関係に・・・。
書店にいた。
大きな『ボッコリ、ボッコリ、ボッコリ、ボッコリ』
という足音が店内に入ってきた。
ほぼ同時に『シャンシャンシャンシャン』と高らかな鈴の音も
店内に入ってきた。
サンタを載せたトナカイが立ち読みにでも来たのだろうかと
音のする方を見たら、
前者は、まったくサイズが合っていない靴を履いた男、
後者は、バッグに鈴を沢山つけた若い女性だった。
それぞれ他人のようだったが、えらいタイミングで揃ったものだ
と感じていると、また別の人間が登場。
大声で携帯電話を使用しながら店内に入ってきて、適当に雑誌やマンガを
物色するようなしないような感じで、あっちへ行ったりこっちへ来たり
し続けている。
どこかの会社の作業服風ユニフォームを着た、30代の男だった。
メガネをかけた、それほど大して特徴のない人相である。
サンタとトナカイは静止したらまったく無音だから、それは別に
気にならなくなったのだが、この携帯電話男はずっと喋りっぱなしの
動きっぱなしで、イライラすることこの上ない。
店内にいたほかの客も、一体誰なんだ?と、声の主の方を見て
それでも関わり合いになりたくないから諦めてまた本に目を落としている。
私のすぐそばには、少々ヤンチャな雰囲気の40歳前後と見受けられる男
がいた。
私とほぼ同時に携帯電話の姿を確認し、そして私と目があった。
「うるさいね」
「うるさいね」
というアイコンタクトがあった。
数分経っても、携帯電話男の通話は止まらない。
距離はそこそこあるのだが、大声はますます迷惑なボリュームに
なっている。友人と話しているらしい。
となりの男と再び目が合った。
ニヤニヤ笑っている。
「どうするの?」と問うように、携帯男と私を見比べる。
「どうするの?」って問われても、いや別に関わりあいたくない。
と意思表示するべく、小さく首を振った。
1,2分後、再び隣の男が視線を私に送ってきた。
ニヤニヤ笑っている。そして手に持っていた雑誌を元に戻し、
携帯男の方に近づいていく。
「ボコン!」
いい音が鳴り響いた。
やんちゃ風が携帯男のケツを蹴り上げたのだった。
いや、いい音は鳴ったが、大して痛くもないだろう。
それでもそれで通話は止まった。
呆然とした表情で携帯電話を握り締めたまま固まる携帯男。
店中の物音が止まったようだった。
やんちゃ男がこっちに近づいてきた。
やんちゃ男は私と右手でハイタッチし、猫背で店を出て行った。
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