the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 



GITANESの煙は妄想を促す。
それとは無関係に・・・。


カウンターの一番奥に座って、Aに預けられた写真を見ていた。
30歳前後の女性が一人写っている。
今朝がたアパートを訪ねてきたAは、
「この写真の女、知らない?」とあいさつもそこそこに訊いてきた。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「いや、知らないな。誰?」
「お前、顔広いから知ってるかと思って。」
「誰でも知ってるわけないだろ。」
「知り合いに当たってみてくれない?お前、顔広いから。」
「お前な、先週も『この犬知らない?』って訊いてきたよな?」
「だって、顔広いじゃん。」
「いくら広いって、犬の世界に顔が利く訳じゃないと、」
「ま、犬はもういいから。その女知ってる奴当たってくれよ。」
言いたいことだけ言ってAは出て行った。
人のアパート訪ねるのに、ちょっと時間が早すぎないか。
もう一度寝るには中途半端だった。
嫌々ながら着替えをして歯を磨いた。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

写真を無理やり持たされたが、人探しなど経験がない。
どうしたらいいのか何のプランもないまま、いつもの
「怪奇堂喫茶アフタヌーン」へ行く。
ちなみにこの、怪奇堂喫茶アフタヌーンにはホラー的な要素が
まったくない。まったく普通の、どちらかと言えば明るい店内の、
流行っていない店である。
アフタヌーンという割には朝早くから営業している。
つまりいろいろ出鱈目である。

カウンターの一番奥に座り、「本日のコーヒー」を注文し
例の写真を見る。30歳前後の人当たりがよさそうな女性が
写っているばかりである。
ちなみに、「本日のコーヒー」はこの怪奇堂喫茶アフタヌーンが
2年前に開業して以来、ずっと同じコーヒーなのだが
店主曰く「ずっと同じなのはたまたまだ。」とのことである。

常連の、いつも酔ったような調子のTも店内にいた。
「よう、先生!調子は?」
Tはいつも俺を先生と呼ぶ。根拠はないらしい。
「やあ。」
Tが定位置のテーブルから自分のコーヒーを持ってカウンターに
移動してきた。来なくていいのに。

いつものようにやや酒臭いTは、この界隈では最も不躾な人間である。
「先生、朝早いねえ!どうしたの?」
「いやちょっと早くから起こされてね・・・」
「あ、そうなの?!いいことですよ!人間はさあ、早起きが
何銭か得って言うぜ!」
「言うかね?」
「言うよ!だってこの耳で聞いたんだぜ!」
「それが信用できないんだよな・・・」
「あれ、それなに?彼女の写真?先生やるなあ!」
さっと写真を裏向けたが、Tは酔っ払い業界で最も目ざとい人間
だったようである。
「いいや、違うよ。ちょっと人探しで・・・」
「見せてみなよ、知り合いかも知れねえし」
目つきの悪い二人組の男が入ってきた。
すぐに彼らは出入口付近のテーブルについた。

「見せてみなよ!俺は顔が広いんだぜ!」
できることならTとは絡みたくない。ロクなことにはならないような
気がするからだ。
「いやまあ、これはあんまり人に見せるのが・・・」
「だってその女、Mちゃんだろ?もうちょっとよく見せ、」
「知ってるのか?」
「ああ、多分Mちゃんだろ?ほらよく見せて・・・」

「お話し中申し訳ない。Tだな?」
目つきの悪い二人組がすぐそばに立っていた。そしてその背後に
5人増えていた。
「誰?」
「中央署刑事一課のものだ。ちょっと聞きたいことがある。」





という夢を見た。
続くか?







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