水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

劇団子「カメコが笑った日」

2011年11月23日 | 演奏会・映画など

 10年前。舞台は、台所、トイレ共同、風呂なしのアパート。
 今時こういうアパートに住む日本人は減ってきたが、そこでアルバイトをしながら自分の夢を追う若者達を描いたお芝居だ。住んでいるのは、漫画家、映画監督、ミュージシャン、画家、を目指す若者達と、なぞの女。
 劇団後さんのお芝居って、誰が主役っていう感じがあまりなくて、どの登場人物の人生もがちっと描かれている。
 たんなる賑やかしかなと最初思えた人も、後半泣かせる台詞を発したりする。
 10年前に書かれたこの作品は、主宰の石山英憲氏がもう劇団をやめようかなと思いながら書いたという。
 書いても書いても評価されず、これでだめだったら終わりにしようかなとの思いだったそうだ。
 夢を追いながらも、自分の才能に疑問をもっては、それを打ち消し、なんとかがんばろうとする青年。
 自分の才能のなさを自覚し、仲間がいつかうれていくことを望み、ゆがんだ形でバックアップする青年。
 ついに夢をあきらめて国に帰る決心をする青年。
 どの人の台詞もほんと切実で、なるほど石山氏がそういう思いで書いてたからなのか、と上演後にパンフを読んでわかった。
 ちょっとゆがんだ人のセリフがしみたなあ。
 「おれ、わかってるんだよ、自分に才能がないのは。だから、おまえらの誰かがうれたときに、おれはあいつと暮らしてたんだって、そういう日がくるのを待ってるんだよ。そういうとこでしか自分を支えられないんだよ! だからうれてくれよ」
 これって、教員のありようと同じだなって。
 この作品をきっかけに注目されはじめる劇団子さん。 
 最近は有川浩さんとのコラボでも注目されてるし、たぶん演劇界の中ではメジャーな方だと思う。
 お客さんも入っていた。それでも、劇団員に裕福な暮らしがもたらされるほど経営状態がいいとは思えない。
 前から二番目の席だったからよりはっきりわかったけど、青年役がきびしい役者さんもいらっしゃった。
 それでもお芝居を続けていく情熱ってどこからわいてくるんだろう。
 それこそ、人間の業なのだろうか。
 それをやらねば自分が自分でなくなるという思いだろうか。
 だとしたら、やはり夢を追い続けられることは、幸せなことにちがいない。
 値段の高いお芝居よりも、小さな小屋でかかるお芝居に心動かされるのは、そういう情念をより強く感じ、羨望の念を抱けるからだろう。

コメント
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