水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「水の東西」の授業 3象徴・筆者の人生観

2015年04月18日 | 国語のお勉強(評論)

 

Q8「人生のけだるさのようなもの」を感じさせるのは、鹿おどしの動きのどういう点か。30字以内でまとめなさい。
A8 単純で緩やかなリズムが繰り返され、何事も起こらない点。

Q9「なんとなく人生のけだるさのようなものを感じることがある」と筆者が述べるのはなぜか。80字以内で説明しなさい。
A9 単純で緩やかなリズムがいつまでも繰り返され、結果的に何事も起こらない鹿おどしの動
   きは、平凡な日常の積み重ねで成り立っている人生の様相と似たものに感じられるから。


鹿おどしの動き(具体) … 単調な繰り返し 何事も起こらない
  ∥ 共通性
人生のけだるさ(抽象) … 平凡な毎日の繰り返し  そうそうドラマは起こらない
               ↑
               ↓
      ( 青春の盛り上がり・希望に満ちた人生 )

説明
「鹿おどし」から「人生」を感じる。
「鹿おどしの動き」から「人生のけだるさ」を感じる。
 つまり、鹿おどしのどんな動きが、人生のどういう「けだるさ」に結びつくのか、を説明する問題です。
 aはxである。a=x
 bもほぼxである。b=x’
 だから、a≒b と言える、という構造で答えを作ります。

  類似性・共通性の説明    a=x b=x’ → a≒b

 イメージ・性質の類似性・共通性を利用し、抽象概念を具体物で表現することを、「象徴」といいます。

  象徴  抽象概念 → 具体物 … 感覚的に理解させる表現

A9別解 … 単純で緩やかなリズムがいつまでも繰り返され、結果的に何事も起こらない鹿おどしの動きは、平凡な日常の積み重ねで成り立っている人生の「象徴」のように感じられたから。

Q10「初恋の味は夏みかんの味」とはどういうことか。80字以内で説明せよ。

 具体 夏みかん(具体)甘くて
            酸っぱい
 抽象  初恋(抽象)  どきどき うきうき 
                  恥ずかしさ とまどい もてあます せつない

A10 気恥ずかしさを伴いながらも、 x1
     うっとりする魅惑をもつ    x2
    初恋の経験は、                a
      強い酸味とともに              x’1
    魅力的な甘さを持つ            x’2
    夏みかんの味と                b
    イメージが重なる              a≒b
    ということ。           文末処理


 鹿おどしの動き → 人生のけだるさ  … 筆者の人生観
                       ↑
                       ↓
                                          一般的・近代的人生観
説明
 筆者にとっての人生は、このようにけだるい性質もあるものだということがわかる表現です。
 しかし、みなさんが今まで習ってきた話とは違うと思いませんか。みなさんの実感がどのようなものかはわかりませんが、人生とはこのようなものだと聞いてきませんでしたか。
 「自分の人生は人生できりひらくものだ」「君たちにはあらゆる可能性がある」「努力で豊かな人生を築いていこう」「自分の夢を叶えよう」 … 。
「人生って、実のところすべてが徒労に終わるものだよ」と言われた経験は、めったにないのではないでしょうか。
 そういう意味で、この冒頭の部分に垣間見える筆者の人生観は、「一般的」なものではありません。「近代的」な考え方ではありません。
 こういう部分にも、一般論、通念、常識とは違った方向性で主張が述べられようとするのが、評論文なのです。

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「水の東西」の授業 2具体と抽象

2015年04月18日 | 国語のお勉強(評論)

 

〈1・2段落〉

1 「鹿おどし」が動いているのを見ると、その愛嬌の中に、なんとなく人生のけだるさのようなものを感じることがある。〈かわいらしい竹のシーソーの一端に水受けがついていて、それに筧の水が少しずつたまる。静かに緊張が高まりながら、やがて水受けがいっぱいになると、シーソーはぐらりと傾いて水をこぼす。緊張が一気に解けて水受けが跳ね上がるとき、竹が石をたたいて、こおんと、くぐもった優しい音を立てる〉のである。
2 見ていると、〈単純な、緩やかなリズムが、無限にいつまでも繰り返される。緊張が高まり、それが一気にほどけ、しかし何事も起こらない徒労がまた一から始められる。〉ただ、曇った音響が時を刻んで、庭の静寂と時間の長さをいやがうえにも引き立てるだけである。水の流れなのか、時の流れなのか、「鹿おどし」は我々に流れるものを感じさせる。それをせき止め、刻むことによって、この仕掛けはかえって流れてやまないものの存在を強調しているといえる。

Q4「その愛嬌」の「その」は何を指しますか。
A4 鹿おどしの動き

Q5「愛嬌」と意味の似ている単語を一段落からみつけなさい。
A5 かわいらしい

Q6 鹿おどしのどういう動きに愛嬌が感じられるのか。その説明にあたる部分に線を引きなさい。
A6「かわいらしい竹のシーソー … こおんと、くぐもった優しい音を立てる」

Q7「けだるさ」につながる「鹿おどし」の動きを説明した文を二つ、抜き出しなさい。
A7・単純な、緩やかなリズムが、無限にいつまでも繰り返される。
  ・緊張が高まり、それが一気にほどけ、しかし何事も起こらない徒労がまた一から始められる。

鹿おどし … 愛嬌のある動き → 人生のけだるさ

  抽象   具体 (言いたいことは繰り返される)
   愛嬌 … 「かわいらしい竹のシーソー ~ 優しい音を立てる」

    抽象        具体
 けだるさ … 「単純な、緩やかなリズムが ~ 一から始められる。」

 愛嬌 … にこやかで、かわいらしいこと。
 徒労 … 無益な苦労。

Q「具体」「抽象」と同じ構造の熟語はどれか。
 a日没  b流氷  c読書  d善悪  e平易
A c

 具体 … 体を具す    実体をもっている
 抽象 … 象を抽きだす  共通する性質を見いだす

(例)具 りんご みかん バナナ ぶどう → 抽 くだもの
   具 くだもの 野菜 肉 麺類    → 抽 食べ物

説明
 筆者は、自分の主張を伝えるために、繰り返し言いたいことを述べます。
 ただし、まったく同じ言葉を繰り返しても芸が無いので、形をかえ、次元を変えて繰り返されます。
 まず抽象的、一般的に主旨を述べ、続いて具体例をあげていき、最後のもう一度抽象化、一般化する、というように。

 (抽・般)ぼくは甘い物が好きだ。
 (具a) たとえば、シュークリームには目がない。あんみつも好きだ。
      ケーキの中ではモンブランが一番のお気に入りだ。
 (具b) この間はスイパラでたらふく食べてきた。
 (抽・般)このように、種類を問わず甘いものが大好きだ。
      スイーツ男子と呼んでほしい。

 今読んでいる部分が、「抽象」なのか「具体」なのかをつねに意識において読んでいこう。
 「たとえば」「このように」という言い換えのキーワードをチェックしていこう。

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