〈6・7・8段落〉
6 時間的な水と、空間的な水。
7 そういうことをふと考えさせるほど、日本の伝統の中に噴水というものは少ない。せせらぎを作り、滝をかけ、池を掘って水を見ることはあれほど好んだ日本人が、噴水の美だけは近代に至るまで忘れていた。伝統は恐ろしいもので現代の都会でも、日本の噴水はやはり西洋のものほど美しくない。そのせいか東京でも大阪でも、町の広場はどことなく間が抜けて、表情に乏しいのである。
8 西洋の空気は乾いていて、人々が噴き上げる水を求めたということもあるだろう。ローマ以来の水道の技術が、噴水を発達させるのに有利であったということも考えられる。だが、人工的な滝を作った日本人が、噴水を作らなかった理由は、そういう外面的な事情ばかりではなかったように思われる。日本人にとって水は自然に流れる姿が美しいのであり、圧縮したりねじ曲げたり、粘土のように造型する対象ではなかったのであろう。
Q20「そういうこと」とはどういうことか。40字以内で述べよ。
A20 日本人は時間的な水を好み、西洋人は空間的な水を楽しむということ。
「そういうこと」が、直前の「時間的な水と、空間的な水。」を指すのはわかりますね。この部分を、「どういうことか」という問いの答えになるように、必要な言葉を補います。
「どういうことか」に対する答えの骨格は次のような形になります。
何(S)が ~(V)する ということ。
何(S)が ~(C)だ ということ。
このように、体言的な表現は用言化し、抽象的な表現は具体化するという方向性で答えを作ります。
Q21 日本人が噴水をつくらなかったのはなぜか。本文の語を用いて40字以内で説明せよ。
A21 日本人にとって水は自然に流れる姿が美しく、造型する対象とはならなかったから。
手順 「本文の言葉を用いて」 … 該当箇所を抜き出す → 変形する
a 該当箇所 … 日本人にとって水は自然に流れる姿が美しいのであり、圧縮したりねじ曲げたり、粘土のように造型する対象ではなかったのであろう。
~のだ。~のである。 … 何らかの事情・理由を表す文。
b このまま抜き出すと字数がオーバーするので、短くする。
→ 「圧縮したり~のように」は「造型」の具体例なので、ここをカット。
c 「なぜか」という問いなので、「~だから。」と文末処理をする。
6 時間的な水←→空間的な水
7 日本 … 伝統的に噴水が少ない
8 日本人が、噴水を作らなかった理由
↓
日本人 … 水を造形の対象にはしなかったから(内面的事情)
↑
↓
西洋人 … 噴水を作る
↑
外面的事情 a空気の乾燥 b水道の技術
Q22 西洋人が噴水を作った「内面的事情」はどういうものと考えられるか。
A22 西洋人にとって水は自然に流れる姿を美しいと感じるものではなく、人為によって造型すべき対象であったから。
書いてないこと内容 … 書いてある内容から類推する
A … a1・a2
↑
↓
B … b1・(b2)
b2が空欄だったなら、a2の反対の内容か、b1と同じ内容かが入る。