公開されたばかりの映画「あなたの微笑み」を渋谷シアターイメージフォーラムで観た。
【解説】「COME & GO カム・アンド・ゴー」のリム・カーワイ監督が映画監督の渡辺紘文を主演に迎え、不器用で憎めない映画監督がインディーズ映画界の底辺で自身と向き合う姿を描いたロードムービー。地元・栃木で映画制作集団「大田原愚豚舎」を旗揚げし、東京国際映画祭でも受賞歴を持つ渡辺紘文。しかし大手映画会社から依頼が来ることもなく、今では脚本も書けずにいた。そんなある日、旧知のプロデューサーから沖縄での映画制作を打診された渡辺は意気揚々と現地へ向かうが、“社長”と呼ばれる男に無理難題を押し付けられた挙句に追い出されてしまう。自分の映画を上映してくれる劇場を求めて日本各地のミニシアターを訪ね歩く旅に出た渡辺は、道中で出会った不思議な少女に導かれていく。
新聞記事で知った作品で上映してくれる劇場を求めて主人公がミニシアターを巡るロードムービー。大分別府のブルーバード劇場、福岡の小倉昭和館、兵庫の豊岡劇場が登場するとのことで、休日に渋谷まで出掛けた。記事にもあるように今年豊岡劇場は一時休館、小倉昭和館は火災で焼失し、コロナ禍もありミニシアターは厳しい状況に置かれている。
訪れたことのある劇場がスクリーンに映るたびに懐かしく感じつつ、映画「カメラを止めるな!」のように単館上映から全国規模に広がって大ヒットになる夢物語と、監督自ら劇場へ上映料を支払い、前売り券を手売りする現実とを垣間見る。尚玄(しょうげん)演ずる独特の存在感のある社長が序盤で無理難題を押し付けられた感じはなく、そもそも約束は守らなきゃそうなるって話から展開していく。平山ひかるが様々な表情を見せてくれるので劇中同一人物と気づくまで少しだけ時間が掛かった。大きな山場がある訳ではなく、淡々としている内容ではあったが、非常にホンワカとした雰囲気のロードムービーでついミニシアターを再訪したくなった。
上映後に監督と出演した平山ひかると父であるフリークライマー・平山ユージのトークショーで撮影裏話を拝聴。このような距離の近い触れ合いもミニシアターならではなのだろう。続編があれば是非高知のあたご劇場、長野の上田映劇や新潟の高田世界館、横浜のジャックアンドベティも登場して欲しいものである。