美麗蝶カキカモルフォの採集
南米ペルーのリマから出発し東へ向かうと標高5000m級の山並みアンデス山脈がそびえ立っている。
このアンデスを越えて下ってゆくとアマゾン川の源流域アンデスアマゾンに到達する。
そこは大蛇アナコンダやジャガーの棲息する原始のジャングル地帯だ。
この密林の奥地に美麗蝶が乱舞する蝶の谷 Shimaシマがある。ここに雨期の一時期にだけとりわけ美しいカキカモルフォ ( Morpho cacica )が出現する。
雨期の蝶採集は運次第。
雨期艱難辛苦のすえ、やっとシマにたどりついても連日の雨で涙をのんで引き返すことは稀でない。
私がシマを訪れたときは雨期の真っ最中。毎日雨が降り続き、キャンプ地の前を流れるシマ川は轟々と流れる濁流で大増水。
20XX-12-29 。 運よく連日の雨がやみ、みるみる青空が広がった。
急速に川の水は引いて蝶の集まる川岸が現れはじめた。
やがて、待望のカキカモルフォが次々と現れた。
カキカモルフォ(現地ではカシカと呼んでいる)の飛翔は美しい。褐色の濁流の上を目も覚めるようなメタリックブルーの大きなカキカが滑空し、羽ばたいて反転して、また滑空する。まるで夢かと思うほどの美しい光景で現実のものとは思われないほどだ。
しかし、地面におりたカキカはなんと格好悪いことか。
異様に羽根の高さがあるためか重心が不安定でこけつまろびつヨタヨタよちよちと歩き、つまずいてつんのめったりする。
見ていて吹き出してしまう。地面を歩くのがこんなに不器用な蝶は見たことがない。
地面のトラップを吸いはじめるとまるで麻酔状態になる。酔っぱらったかのようにものすごく鈍感になり、100%の確率で指でつまんで容易に採集できる。本種の採集はいかにもあっけない。
私は死んで乾燥ミイラ標本となったカキカしか見たことがなかった。
標本になったカキカの美しさに異論をはさむ気はないが、いかに構造色とはいえ、実際に生きているカキカのメタリックブルーは明らかに乾燥展翅標本の何倍も美しい。
しっとりとしたメタリックブルーとでも言おうか、青いギラギラが手に照り返す美しさは例えようもない。
夢のような至福の時間はたちまち終わり、再び猛烈な雨が降り始めると美麗蝶の姿は消えていた。
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