これまでも震え上がってきたこの冬の寒さ。
「悲しくなるほどの寒さ」と表現された人もある。
雪下ろしの順番がようやく廻ってきて、安堵の胸を撫で下ろされた豪雪地帯の人もある。
温暖な瀬戸内の恩恵に浴している者が、例年より少し寒いからと言って不平をかこっていては申し訳ない。と思いつつも、やっぱり寒いものは寒い。
そして今日からは、いよいよこの冬最高の寒さが訪れる大寒である。
煌々と冴えわたる寒の月にあれこれ風流を思い浮かべるのは、同じ寒いのならせめて月の美しさを愛でるのも一興という余裕の表れか。
寒月や 喰ひつきさうな 鬼瓦 (一茶)
青白い月の光に不気味に照らし出される鬼瓦が、子供心に妙に印象強く残ったものだ。
寒月や 影も小走り もらい風呂 yattaro-
そして今ひとつ。遠い昔の貧乏だった頃がふと頭をよぎる。
この寒さのお陰で、湯たんぽという昔ながらの暖房器具が離せない。
湯たんぽを包む袋は、まだ元気な頃の母の手縫い。
稚拙な針運びの跡が如何にも温かさを感じさせる。
冬の寒さはまた人間くささを思い起こさせる不思議を秘めているのだろうか。
( 写真 : 東の空に浮かぶ17夜の寒月 1月20日午後8時30分 撮影 )