“ 丸い卵も 切りようで四角 ものも言いようで 角が立つ ”
言い古された言葉ではあるが、改めて思い知らされるような笑い話に出会った。
中学校同期会の幹事仲間にとっても気のいい男がいる。
閑に任せて同級生の家を頻繁に訪れ、元気に働く仲間はその動向を。病気に悩んでいる者はその病状を。定期的に我が家にやって来て報告してくれる。実に有り難い存在。陰の幹事長と言っても差し支えないくらいの小まめな彼。今日も午後からやって来た。
「オーイ、家庭訪問してきたよ~」というのが彼の挨拶である。
「誰と誰のところへ行ったの?」訊く間もなく、事細かな説明が始まる。
誰それはこうこうした病気で入院をしてもう退院した。誰それは仕事を息子に譲って引退したのだが、ここんところ忙しくてまた仕事を手伝っているので職場を訪ねた。そろそろ一杯やろうという声が上がってきよるで・・・などなど。
そんな情報を持って、わざわざ来てくれたのだと思い込み「ありがとう」などと感謝の気持ちで聞いている。
するとボソッと一言。「火曜日と木曜日は昼からのテレビの面白いのが全くないんよ・・・ 」と、のたまう。
ナヌッ?テレビの面白いのがないから俺んちに来たのか?俺はアンタと違って忙しいんだぜ! とは言わない。
「そうか~木曜日は面白いテレビがないのか~」というと、今度はしばらくテレビの番組談議になる。
嫌みがなくて、茫洋とした彼は、誰のところでも気軽に訪問し、他愛ないおしゃべりでダラダラっと引き上げる。
そんな気安さがみんなから愛されている。気を許せるのか、なんでも話してくれるようだ。
それにしても「テレビの面白いのがないから来たよ・・・」などと言わなきゃかっこいいのに、と思う。そう思うのはこちらだけで、彼にはそんな頓着はない。誠にのんきないいキャラである。腹など立てたらこっちがバッカみたい。
中には、こちらの言うことすべてに『否定形』で返事をしてくる人はゴマンといる。
そういった悪癖に比べれば、同じ「ものも言いようで角が立つ」とはいっても、彼の「ボソッと」は可愛いものである。
「そうじゃないんよ・・・」「それは違うんじゃない?」などと、否定形で切り返すクセの持ち主。そこのアナタ、ご用心あそばせ。知らず知らずのうちに、うとまれているかもよ。