先週の「週刊文春」の連載エッセイに「平松洋子」さんが面白い事をお書きになっていた。
「この味」と言う題での連載で有り、その都度興味深い食べ物の話を読ませて下さる。
今回はなんと、私の大好きな「ホヤ」の話でした。
私がその味を絶賛しても、友達もいや、家族でも賛意を示した人はいなかった。
(この写真はずいぶん前だけれど、生のホヤが手に入った際のもの)
平松洋子さんと、そのお仲間一行が九人で雪の中、「山形美術館」を訪れたそうな。
「鬼海弘雄写真展」の見物がその旅の目的だったと言われます。
その写真展のお話と彼女の素晴らしい経験談はさておき、次はその夜の宴席での話。
美味しい山型の郷土料理と、美味しい地酒で二本目の一升瓶が空になるころ、
彼女の隣席の男性が「へへへ」とバッグからキャラメルの小箱のような物体を取り出した。
(これも以前の写真。このように切ると強い海の香りがします)
読み進めて思わず笑みがこぼれてしまう。
小箱には「三陸 磯の風味 酔明 ほや」と書いてあり、中にはオレンジ色の短冊が。
名代の酒好きたちが一瞬静まり返り、でも、あちこちから(もっとおくれ)と手が伸びた。
呆けたように、八人がそれぞれ左手を差しだし、右手で盃の酒を舐めたとか。
「ホヤは、乾いてなお怪しい。
雲丹にも似て、くちこにも似て、ひたすら濃厚一直線。
ほや×雲丹×くちこ、三つ巴のアブナイ不倫関係が露呈した。」
なんて、さすがにお金の取れる大人のエッセイストの表現です。
別名海のパイナップルなんて呼び方もするけれどいえいえ、「ほや」は酒飲みを虜にします。
なんでも、デビューは東北新幹線が開通した昭和57年だとか。
他にも「風味無双 滋養豊富」なんて懐かしいような文字も入って一箱340円。
もちろん震災前のことだけれども、盛岡から帰る新幹線の中で車内販売の売り子を、
いまや遅しとばかりに待ち構え、期待して満載の土産物の台車を確認すると「有った~」。
妻には呆れられながらも数個有ったその「乾燥ほや」を全て買い占めてしまった。
そして、トイレにと席を立った際に、通路で売り子さんが電話している場面に遭遇。
なんと、彼女は次の停車駅での「乾燥ほや」の積み込みを依頼していたのでした。
買占めの私は危なくって、悪いオジサンだったわけです(笑)。
ま、久しぶりに我が意を得たと言う感じの話に出会えました。
それよりも嬉しかったことは、私の大好きな「三陸」で、震災にも関わらず作られていたこと。
そうかー、「ほや」も、「ほや」を養殖する漁師さんたちも無事だったのかー。
また何時の日か、復興し元気になった東北、三陸海岸を訪れよう。
新幹線に乗ったら、懐かしい「乾燥ほや」を真っ先に買い込もう。