![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/29/20aee67cba1c09041a4c66c2edf8cd97.jpg)
米山登山口
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/6a/5bf8274c1ec63b741a6d5c31420fe17d.jpg)
米山山頂で。後方のブルーは日本海。左端がこの日のリーダースベルべです。
(年末年始で休んでいた新聞連載が再開されました)
遭難(その1)
土曜日の夜十時過ぎの電話で事件は始まった。
従姉妹からの電話で「お父さんが米山に登山に出かけ、午後二時に山頂から電話をくれて以来、
連絡が付かない。こちらから電話をしてもかからない。」と言う。
酒を飲んでいて運転できない私に代わって妻が運転しアパートに向かった。
従姉妹の夫は大手電機メーカーを定年退職後、その会社の先輩が役員をしている会社に請われ、
単身赴任で勤めていたのだ。
駐車場のナンバーと両隣の車を確認すると、すべての条件は合致するのに該当の自動車は無い。
残念ながら最悪のケースを想定し、所管の警察署に届けることにした。
帰宅後、真夜中に再び従姉妹からの連絡が入った。
登山口で自動車が見つかったが本人の姿は見当たらない。
捜索活動は朝六時から開始される。
従姉妹たちは神奈川から電車で駆けつける。などの会話を交わした。
朝になり五時半頃、近くに住む従兄弟と叔母が来宅し起こされる。
相談の結果私が現地に行くことになり、急いで登山支度を整え出発した。
その山には私は昨年三月の積雪期に山仲間十人ほどと登り、
従姉妹達にも日本海を望む美しい風景や仲間たちとの嬉しそうな記念写真などを見せていた。
その事が原因かと私の気持ちに後悔がはしる。
車を飛ばし登山口に近付くと頭上にヘリコプターが見える。機影から県警のヘリと確信した。
しかし、登山口の駐車場に自動車は一台きりで捜索隊の様子は無い。
八合目付近まで続く林道かと思い、悪路に踏み込んだ。
昨年の豪雨、地震の影響か道は荒れ果て、「崩壊のためこれより先交通止」の看板の前にも車は一台のみ。
家に居る従兄弟に携帯電話で、警察に問い合わせて結果を聞かせてくれと頼んで林道を引き返す。
返事は意外と言うか、私の思い込みと言うか別の、一般的ではないコースの登山口に自動車はあり、
その地区のコミュニテーセンターが現地対策本部になっているとのことだった。
急いで現地対策本部に行くと、地区の町内会長、警察署の副署長、消防署の副署長を始め多数の人達が詰めていた。
私は大きな声で名乗り、迷惑をかけていることを詫びた。
(続く)