畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

連載52-2『身近な生き物になったカモシカ』(その2終り)

2016-01-30 11:44:54 | 自然

 昨年山のとなりの畑に出て来ました。


 こちらをしばらく見ていると思っていたら逃げ出してしまいました。

身近な生き物になったカモシカ』(その2終り)

 しばらく佇んだ後静かに尾根に向かって上り始める。危害を加えられた事は無い。
しかし、ある時我が家の山の畑にまで出現した。
スイカの蔓の下に敷くカヤを刈っていると、カヤと畑の境目を一頭のカモシカが走り去った。

 驚いて声も出なかったが、我に返り手伝ってくれていた友達に話した。怪訝な疑わしそうな目で見られた。
その数分後、大胆にもカヤの藪から突然、私と友人のすぐ目の前に出てきた。
軽トラックの荷台を挟んで対峙した。畑に入るなよ、と声を懸けたが大きな歩幅でサツマイモの畑の中を歩き、崖の方に姿を消した。

 今年は初めて鳴き声を聞いた。それは十二月の茸採りの時の事だ。茸の出る枯れ木を探しながら、
細い尾根を登っていた。突然聞いた事の無い、妙な鳴き声がする。「ギャウー、ギャウー」と聞こえる。
さて、鳥にしては野太い声だし、何だろうと見渡すと、なんと沢一本を隔てた尾根に、一頭のカモシカがいる。

 私が縄張りを荒らすライバルに思えたのだろう。縄張りから出て行け、とばかりに威嚇していたのだ。
私は「ここは昔から俺の縄張りだぞ」と声を懸けた。心なし小さな鳴き声になり、やがて姿を消した。
越後野兎と同じような頻度で姿を見る事が出来るようになった事に、驚きを覚える。

 決して、自然が豊かさを取り戻したなどという事は無い。
住み易い環境を失い、追われる様に出て来たのに違いない。
ツキノワグマの出没と同じに心が痛む。

                     (終り)
コメント
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