オックステールシチュー(その1)
今は廃止になって長い年月が過ぎたが、屠畜を含めた食肉処理場が近くに有った。
牛でも豚でも新鮮な食肉が手に入り有り難かった。牛なんて頭から尻尾まで、総ての部位を食べた。
その屠畜場の近くに、その名も「ゲンキンヤ」と言う、新鮮な肉類が揃った店が有った。
牛の頭肉を使った煮込みの評判が良かった。家族に余りにも評判が良いので、随分通ったが、
身を明かさずに通っていると「お前さん店してるがんだかい」なんて親父さんに聞かれてしまった。
何回か顔を出したけれども、運悪く牛の頭肉の品切れが続いたことが有った。
久しぶりに店に顔を出すと「お前さんだったいのう牛の頭肉が欲しいって言ってたのは」なんて言葉に次いで、
「今日は牛を処理した筈だから、取りに行ってくる」と言って出掛けた。
少し待つと、自転車のハンドルに大きなレジ袋に入れた頭肉をぶら下げて帰って来た。
(続く)