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今は座る主が居ずに寂しそうな裏庭のテーブルセット。
ここは、同級生の家の裏庭で、裏庭に続く野菜畑が見えるところ。
同級生とは昨年末から五十年ぶりに付き合いが復活した。
長男では有るけれど、仕事の関係から東北へ移り住み、四十年近く経つ。
ところが、二人暮らしの御両親がお二人とも九十歳を越えられ、特に父上が体調を崩したと言うことで、
嫁に出た妹さんたちと交代で、ご両親の面倒をみるために、たびたび帰省することとなった。
久しぶりの再会に、「あの時は、スベルべともう一人の男の子と、そして一人の女の子と三人で、
共同作業所の二階で送別会をしてくれたっけ」なんて言われたが、とんと思い出せない。
年明け早々に父上はご逝去。今度は母上だけの一人暮らしになってしまった。
そのため、友が十日ごとに東北の家から通ってきて、実家で十日、自宅で十日の暮らしを繰り返すこととなった。
東北の実家に帰る際は、近くの養護老人ホームに母上を託して帰るのです。
先回の帰省時に、二人で近くの居酒屋で痛飲した。
「もう帰るぞ」と言うスベルべに友は「バーさんの顔を見て帰ってよ」と引きとめる。
「分かった、少しだけだぞ、酒はもう本当に要らないからな」と言ってお邪魔することに。
聞くと妻の母、義母と同じく九十歳を二つ越えておられると言うが矍鑠としている。
痛飲し、酔ったスベルべは何を話したかは忘れたが、随分軽口、冗談を披露したようだった。
母上は、身体をゆすってお笑いになり「あーあ、久しぶりに腹の底から笑えた」と言われる。
友も喜び、「またバーさんを喜ばせに立ち寄ってくれよな」と言葉を交わし帰宅した。
そして、今は彼が不在の十日間になっている。
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今回帰宅する際に相談を受けた「頼みが有るんだ、家の野菜の収穫をしてくれよ」と言う。
裏の畑には一通りの野菜が植えられているから、毎日収穫しないと大変なことになるのです。
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若くして、養豚業に就農し、その後大手養豚業者と有名なハム会社の合弁事業に誘われた彼は、
定年後はEM菌関連の商品を扱う仕事の東北地域での責任者になっていたようだ。
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その仕事の関係も有り、彼の畑も徹底した無農薬主義。
変なところで二人とも、同じような農業を目指していたのだった。
明日帰省する予定になっているけれど、今日も野菜の収穫は休むわけにもいかない。
これから、梅雨明けで乾いている山の畑に散水に行き、帰りには彼の畑に立ち寄って来よう。