夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「姫の宿」―4― 憂える姫御前

2007-11-02 23:48:53 | 自作の小説

娘達を すずかの父涼明は すずかと共に車で送り それぞれの親達から感謝された

こっそり狙っていた殺人犯は すずかの両親も貴恋山にいるのだから 自分の姿を見られてかもしれぬと思うのだ

その不審な動きを姫御前は見ていた

何も手出しは出来なくても ついていって 何処ぞの誰か 確認することくらいはできるのだ

そうした犯人の行動を警察も奇妙に思っていた

スポーツ紙のすっぱ抜き以来 警察も それとなく 三人の娘をガードしていたので

下手な動きさえしなければ大丈夫だと犯人は思う 考える
しかし下手でない普通の行動を既に見失っていたりする

―大丈夫だ 捕まるもんか 捕まらない こんなことで 捕まってたまるか―

そうして心の地獄に墜ちていく

じっと 鳴りをひそめていれば いいものを 慾が破綻を招く

状況を見誤らせる

「つながりは表に出ておらぬ
環境調査とでも どうとでも言って 張った囲いの中で 何するかは自由」

「そう言って頂けると心強いです
宜しくお願い致します」

衆議院議員大川光邦との電話が終わり 西山徹也は「まだツキはある」と自分に言い聞かせる

いざとなれば 切り捨てればよい人間を思う
自分も切り捨てられる側になろうとは思わない

自分だけが特別な人間よと思い上がるのだ
警察も馬鹿ではない
景海寺から盗まれた品を買った人間を突き止めていた

骨董趣味の中田松蔵

その中田の張込みをしているのは 三船と雅
ちょっと津田がごねて この組み合わせになっている

津田は何が気に入らなかったか「本名が 雅 京四郎なんて ロクな奴じゃない
スカシすぎなんスよ」そう言って出て行った

張込みの車の中で 三船が「気にするな」と言うと

「いや ぼくは どうして津田さんに嫌われるのか 判らないんです」と あっさり笑顔で言った

そういうところだろうな―と三船は思う

―津田は熱い男だ 暑苦しいほどに

本気で怒って 本気で反抗して 本気でかまってほしいのだ―

三船が見る所 雅は真面目だし仕事にも熱心だ

津田から見れば 難クセつけようのないところが癇にさわるのだろうか

共鳴できる部分が全く無いとも 思えないのだが はて―と三船は思うのだ

「何か仕掛けないと 動きそうにないですねぇ」

中田の家から目を離さずに雅が言う

「ドラマだと囮捜査とか 強引に別件で拘留して締め上げができるんだが」

「ビデオに録って楽しみに見ている古い時代劇があるんです{破れ奉行} 萬屋錦之介が最後{てめえら 叩き斬ってやる}
これがキメの台詞で ぶった斬っていくんですが
やれば暴力警官ですもんね」

どうやら雅は時代劇が好きらしい
やや呆気にとられている三船の前で時代劇について熱く語り始めた
古い映画に異様に詳しい
小さな頃 おじいちゃんと見ていて はまったらしい

嵐寛(あらかん)まで出てきたのには ただ驚いた

お陰で退屈しない張込みになったが

その頃 津田は中田の息子を尾行していた

一応父親の仕事を手伝ってはいるが
何やらうさん臭い男なのだ

単独行をしてはいけない

津田は背後から殴られ地面に転がった