本能寺の変により織田信長は死んだ
中国攻めで毛利と戦おうとしていた豊臣秀吉は 急ぎ和睦を成立させ 京を目指す
その戦いに行動を共にしながら 黒田官兵衛は ある種の空しさも覚えてくる
秀吉の心が見えるだけに 官兵衛は身の危険
縋りつく天下なるものの危うさも判るのだ
光秀は無策のうちに権勢の迷い子のように死に
度し難い朝鮮への出兵をした秀吉も世を去る
その頃 九州にあった官兵衛は今一度だけ天下を夢見るが 時期は彼に無かった
かくして 隠居し如水と名乗って十年目
彼は死んだ
あとがき
文庫本のためのあとがきを読むと 作者が この人物が好きで 書きたかったのだと そんな気がしてくる
「播磨灘物語」というこの題が作品の中身にあったものであるかは分らないが
作者は黒田如水のルーツから 岡山 播州の地との関わりを描いていくことで かの地に住んだ諸将 各一族
人々をも書きたかったのかもしれない
播磨から九州 福岡へと移り住んだ如水
福岡で生まれ 多分 姫路で終わるだろう自分とひきかえて思う時
如水と言う名前には
所詮人とはこの世を流れさすらう存在(もの) そんな思いもあったのではないかと
ゆえに拘らず 水の如く生きたいものよと―そんな願いもあったのではなかったかと
黒田如水こと官兵衛―彼が生きそして死んだのは四百年の昔である