夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「姫の宿」―13― 姫御前 読書中

2008-02-07 00:41:22 | 自作の小説

何とか書いたものを本にしてくれる奇特な出版社がついているだけの夫に脅迫状が届いた事は 一応警察に知らせ相談したものの 縦穴の妻茂子にとっては何か現実とは思えなかった

脅迫状は自宅に届いた
だから犯人は縦穴の家を知っている
案外身近な人間かもしれないと言う

借家住まいで さしたる貯金もなし

夫の書く作品の何が犯人の気に触ったのだろうと 茂子は思う

「要る髪毛の一族」(鬘王と呼ばれた一族の長が死んだ時 なきことあるの呪いにより連続殺人が起きた)

「穀物塔」(貯蔵しておいた倉 穀物塔と呼ばれる場所で 三度起きる見立て殺人 一茶の句は何か意味があるのか)

幾つか思い浮かべてみる

「ヒル歩く」(蛭が歩いた!しかし事件には何の関係もない)

思い浮かべるうちに原因不明の目眩に襲われる茂子だった・・・

それから現在 こんな話にしようと思う―と聞かされた「生きてる限りずんどこどん」は あの忠臣蔵を題材にし 「用心棒」の三船敏郎を主役にイメージしている・・・と

昔書いた「人魚見つけ捕物帖」の外伝となる話で 仇討ち話に謎解き人魚が絡むのだ

と設定だけはわりかしマトモなのに 縦穴脇道が書き始めると どんどん妙な話になっていくのだ

あれも一つの才能なのだろうか

茂子は夕食に作る料理を思い浮かべることで 現実を取り戻した

話を思い付いたら 書かずにいられない子供のような脇道の何処が他人の恨みをかったのだろう
子供だから だろうか
この脅迫事件は 犯人にとっては実は逆効果で あての外れた犯人は家の床踏み抜いて悔しがっていたのだが

脅迫状事件が記事になり にわかに注目集めた縦穴は仕事が増え 妻の草鞋編みを教える教室は生徒が増えている

ずんどこずんどこ暴れては家が壊れていく間抜けな犯人さんである

「お母さん ただいま~」娘の智子が帰ってきたのだった
家政科を卒業し 今は料理学校へ通っている将来 料理教室を開く為の勉強中なのだ

草鞋編みは子供の頃から手伝ってきたので 茂子に代理で教えられる
料理 裁縫 編物 どんどん勉強して教えられる人間になる
父親を見ていて女性も生涯かけた仕事を持ってないと駄目だという考えを身に着けた―娘 智子なのだ

ちなみに智子という名は「女王蜂」から 縦穴がつけた

絶世の―とまではいかないが かなりの美人である
外見は父親似 中身は母親に似たようだ

「編物教室の先生の所ね 大工さん入ってるみたい 車止まってたから
元気よね~
町内会長もしてるし」
「また? こないだも何処かいじってたようだけど 景気がいいのね」
母と娘がそんな会話をしていると 呼び鈴が鳴った

「あら刑事さん」母親の声に智子は後ろから顔を覗かせた

そして津田は言葉を失う
もろ・・・ストライクゾーンだったのだ

ぽかんと口開けたままの津田の背後からお約束の黒いので身元確認してもらいつつ雅京四郎が話し出す

「あれから何か変わったことは無いかと思いまして
大丈夫ですか」

智子の視線は話している雅に向けられる

それは面白くないない津田政彦だった

雅は人には言えない体の中の勝手に同居霊 雪景新九郎から多少の情報を得ていた

どうも捜査に協力してくれているらしいのだ

京四郎は知らないことだが
新九郎に協力している姫御前は 縦穴脇道のファンとなりつつあった

なつきは思う
姫君というは理解しがたい思考回路を持つのだと


水上勉著「死火山系」光文社文庫

2008-02-07 00:23:46 | 本と雑誌

水上勉著「死火山系」光文社文庫
水上勉著「死火山系」光文社文庫
大学で陸稲の研究をしている江田は 山林王の娘 絵理子と出会う
彼女の父親 修平は江田の研究の協力者となる予定であったが その身辺で連続して死人が出る

江田の研究へ断りの手紙を出して間も無く修平も行方不明になった

昔の白骨死体も絡み 事件は根が深く 警察は犯行を明確に把握できない

殺す男は もし逮捕されなければ これからも周囲の人間を殺し続けていったのではないだろうか

帯に「いくつもの死体を呑みこむ怖ろしい山」とありますが
誤解なきよう ホラーではありませぬ

誰が何故どういう理由で殺したか

四十五年前に書かれた小説

全編にある種の昏さが漂うように思えるのは 気のせいでしょうか