夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「道案内」

2015-08-17 21:50:31 | 自作の小説
ーどうぞ 足元 お気を付けて お行きなさいまし

この先は たいそう昏(くろ)うございますー



細い声の女の案内で わたしは歩いているのだ

声の響きは優しいが 女の声はたいそう聞き取りにくい

それでも 女についていくしかないのだ


この姿もしかとは視(み)えぬ女の後を


心細い 時々 足が竦む




ーおや 怖ろしゅうございますか  あなた様は いつも そうですものー


いつも? いつのことだろう
わたしは この女を知っているのか 知っているのか

おや 女の背中が震えている あれはー笑っているのか



ーこうするしかないー そう決めたはずなのに あの時も また別の時も いざとなれば お迷いになるー



ーだからーと女は続けた


ーだから 死んでからも こうやってお迷いになるのですよー



にっこり笑って振り返った女の顔は 
ああ その顔は

わたしが殺して捨てた女のものだった






盆過ぎて コスモス咲くや 晩夏なり

2015-08-17 21:32:05 | 子供のこと身辺雑記
信号待ちの合間に横を見ると コスモスが咲いていました

暑い暑いと つい先日までは酷暑に喘いでおりましたのに 車の冷房も 時々ゆるめなければ 少し冷えすぎに感じます


甲子園の高校野球も終わりが見えてきて 随分寂しく感じられます

まだ準決勝 決勝と残ってはおりますけれど



お盆が過ぎると どうしてこう様々なことが ひどく寂しく感じられるのでしょうか


八月もあと半月を割り 夏も終わりに近づいているのでした



子供の頃 海水浴へ行くのはお盆までで 
お盆を過ぎると 温水プールなどになりました



父が言うには お盆や お盆を過ぎて海に行くと 連れていかれると

お盆には地獄の釜の蓋が開いているからーなどと


盆を過ぎれば 海月も増えて刺されることも多くなるからーとも


縁起を担ぎすぎるかもしれませんが


子供の頃のそうしたことは 守らなくてはいけないこととしてー私の中に残っています


さて そろそろ仏壇に置いた 胡瓜と茄子の馬と牛も片付けましょう

玄関に置いた鬼灯も




「誰かの眠りの為に・・・」

2015-08-17 21:16:02 | 自作の詩
ひとりの娘は夜の闇を織り上げ いまひとりの娘は夜の闇をほどいた糸に金色の陽(ひ)の光を合わせて編み込んでいく


ふたりの娘の手仕事は永遠に終わらない


織り上げる端から解かれていく夜の闇


編んでも編んでも 追い付いてくる夜


裂いた端から 夜の帳(とばり)は降りてくる


それでも季節は巡る



与えられた罰を受け続けているのか 罪を贖い続けているのか ふたりの娘はー




まるで徒労とも思えるその作業を 飽きることなく 倦むことなく ふたりの娘は続けていく

おのれの存在がある限り


夜はなくてはいけない 夜が続いてもいけない

だからー


娘達の仕事は終わらない


此の世のある限り



だから

ふたりの娘は背中合わせに 終わりの無い手仕事を続けている