ーどうぞ 足元 お気を付けて お行きなさいまし
この先は たいそう昏(くろ)うございますー
細い声の女の案内で わたしは歩いているのだ
声の響きは優しいが 女の声はたいそう聞き取りにくい
それでも 女についていくしかないのだ
この姿もしかとは視(み)えぬ女の後を
心細い 時々 足が竦む
ーおや 怖ろしゅうございますか あなた様は いつも そうですものー
いつも? いつのことだろう
わたしは この女を知っているのか 知っているのか
おや 女の背中が震えている あれはー笑っているのか
ーこうするしかないー そう決めたはずなのに あの時も また別の時も いざとなれば お迷いになるー
ーだからーと女は続けた
ーだから 死んでからも こうやってお迷いになるのですよー
にっこり笑って振り返った女の顔は
ああ その顔は
わたしが殺して捨てた女のものだった
この先は たいそう昏(くろ)うございますー
細い声の女の案内で わたしは歩いているのだ
声の響きは優しいが 女の声はたいそう聞き取りにくい
それでも 女についていくしかないのだ
この姿もしかとは視(み)えぬ女の後を
心細い 時々 足が竦む
ーおや 怖ろしゅうございますか あなた様は いつも そうですものー
いつも? いつのことだろう
わたしは この女を知っているのか 知っているのか
おや 女の背中が震えている あれはー笑っているのか
ーこうするしかないー そう決めたはずなのに あの時も また別の時も いざとなれば お迷いになるー
ーだからーと女は続けた
ーだから 死んでからも こうやってお迷いになるのですよー
にっこり笑って振り返った女の顔は
ああ その顔は
わたしが殺して捨てた女のものだった