夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「踏み続ける男」

2015-08-18 22:35:27 | 自作の小説
「なんで なんで」とあんまりうるさいから殺してしまった


さて この女の死体をどうしよう
邪魔だ


捨てに行くには重い

切り刻むのは面倒だ


鬱陶しいから飲みに行って戻ったら 女の死体はあるのに

「なんで なんで」と別の体で繰り返す


ーうるさいなー
うるさいのは嫌いなので殺したら 同じ女の死体が二つになった


増えちまった
もとは同じ一人の女なのに


いいや ほっといて眠って仕事に行った

帰ってきたらーまた増えている
「なんで なんで」

他の言葉を知らないのだろうか

面倒だから また殺してやった


そんな日々を続けるうちに家中が女の死体でいっぱいになった

この女は何なんだ


面倒すぎる



そんなある日 死体女たちは言い出した
「もう留守番はいや」


勝手に出ていけばいいじゃないか
居てくれと頼んだことはないぞ



なんとね 家中の死体女達がついてくるんだ



ぞろぞろ ぞろぞろ


街を行く人々が見ないから この死体女の集団はきっと幽霊なんだろう
俺にしか見えない



それでも俺は触れる
幾度も殺せる

今度は燃やしてみた

死体女達はほどよく乾いていたのか よく燃える
じきに真っ黒になった




俺の人生
死体集団幽霊女なんぞに邪魔されてたまるものか


真っ黒になった幽霊女たちの残骸を俺は踏み潰す


幽霊がどうした


とっとと成仏しやがれ!





「ああやってずっと 何かを踏みつけ続けているんです 薬を打って眠らせても足は動いています」

「何を踏んでいるのでしょうね」


ガラス越しに医師たちは その珍しい患者を観察している

踏むことをやめない男を


動きを止めない男は すっかりやせ細って今にも朽ち果てそうだ

なかなか病院は終わらない^^;

2015-08-18 22:14:07 | 子供のこと身辺雑記
踵の抜糸が無事に済んで 病院行きは今日で終わりかーと思ってましたら

また三日後 CT検査があるとか



主人いわく「今度こそ 終わりと先生が言った」


もう一人で行ってこいよーと思うのだけど
やっぱり一緒に来てほしいそうで


病院で周囲を見ると ご主人が患者さんだと 奥様同伴て方が多いんです

で女性は 一人のことが多くて
付き添いがいても娘さんとか 母親とか
まあ運転手さんがわりかなーと


これって面白いなーと思いました






主人を姑の家まで送ったら 主人が畑で試し掘りしたサツマイモをくれました

姑が「土を落として洗って保存したほうがいい」と教えてくれたので 洗ってかわかしています


さてさて これで何を作りましょうか
スイートポテトも長いこと作ってないし

大学イモもいいかしらん

土橋章宏著「幕末まらそん侍」 (ハルキ文庫)

2015-08-18 21:26:01 | 本と雑誌
幕末まらそん侍 (ハルキ文庫 と 6-1 時代小説文庫)
土橋 章宏
角川春樹事務所










映画化された「超高速!参勤交代」も話題となった著者のこの「幕末まらそん侍」も映画化が決定したと帯にありました


藩主の板倉勝明により 鍛錬のため家臣一同による遠足(とおあし)で安中城より熊野権現神社まで28.3キロメートル走るようにー
50歳以下の藩士はすべて参加すべしー
と書状が回覧されます


第一章 「遠足(とおあし)」では藩主の五番目の娘の雪姫にあこがれる若い片桐と黒木は競って走ることとなる
しかし片桐は禁止されている駕籠や馬などを使ってインチキをたくらむが 黒木は早く走る走法にて ひたすらマジメに走り抜ける

ところが二人がゴールの神社に着いた時 それを記録する神社の宮司がまだ戻ってきていなかった


二人は後日あらためて走り直すこととなる



第二章 「逢引き」 江戸で惚れた女がいた石井は たっぷりと未練を残している
国元で勧められて妻にした幼馴染が作る料理はおそろしくまずかった
惚れた女が江戸から近くまで訪ねてきている報せに 遠足を利用して逢いにいく石井だが
妻が持たせてくれたおにぎりの味にー
妻はみごもっているという

石井は妻をとった
石井は知らない
妻のしたことを

いじらしい女心ととるか 男を操るたくらみとみるか



第三章  「隠密」 代々公儀の隠密ー草として潜入していた唐沢は 自分の送る知らせはきちんと読まれているのかー試すように
この遠足につき板倉勝明に乱心の気ありーと書いて送ってしまう
さっそく恐るべき反応があった

そう板倉勝明は知っていたのだ
唐沢の正体を
唐沢が答えた言葉に 板倉は新しい生き方を与えた




第四章 「賭け」 藩で身分の低い足軽の上杉 しかし足は一番早いだろうと評判であった
この遠足を町の者たちは賭けの対象にしており 本命の上杉に負けるように金を寄越す

暮らしが困窮している上杉は その金を受け取ってしまったがー

走るうちに 襲われて勝てないように足を怪我させられー
逆に誇りを取り戻し 傷ついた足でなお人より早く走り出す
身分の低さでいじめられている上杉の子供も妻も応援にかけつけてきていた

殿の板倉勝明は 走りぬいた上杉に褒美としてその身分をあげてやった

そして追従しかしない人間の身分は落とす
また板倉の命を受けた藩一番に腕が立つ石井と 元隠密で手裏剣の腕に長けた唐沢は 上杉の足を傷つけた男たちを襲う
やがて卑怯な男たちは放逐された




第五章  「風車の槍」  栗田は隠居してから妻とつつましく暮らしていたが 人々の困窮ぶりに私財をなげうった
その評判を聞いた人間たちが遠方から物乞いにやってきたがー もう与えるものは残っていない
断ると言いがかりをつけてきて なおも栗田と妻の留守に泥棒に入り 何もかも盗んでいった

親切があだになったのだ


苦しい生活の中で妻は体を壊して死んだ


栗田も病気を抱えている

そんな時 栗田は9歳の少年を出会う
栗田がどうしても勝てなかった男の息子の伊助
父親が死んで後を継いだ伊助は 遠足に出るために走る稽古をしているが 

それは弱い自分を案じる母親を安心させたい気持ちもあるのだと


栗田は伊助に走り方を教えることとした

遠足当日 も少しで熊野神社というところで 栗田は血を吐く

その栗田を支えて一緒に進むという伊助


そんな姿を見た片桐と黒木は 明るいうちに二人が到着すればいいーと ある工夫をした




この遠足には 藩士たちの絆を深める以外にも大きな目的があった

板倉勝明の命を狙う刺客の炙り出し


襲ってきた刺客達を退治する唐沢 石井 藩士達

そして主君の板倉を守る槍の達人の栗田



平和が戻った安中城で 伊助は来年も遠足をするべきだと言う

栗田はまだ50歳に間がある殿も来年は参加すべきだと話し

運動が苦手な板倉は苦い顔をするのだった



栗田が少し年上ではあるが 栗田と主君の板倉勝明は竹馬の友ーという設定です



黒船にてペリーが浦賀沖に現れてから二年後ーという時代の物語であるとか

解説は文芸評論家の末國善巳(すえくに よしみ)氏



とても読みやすい一冊です