ーあげはの夢ー
「・・・だ」覚えているのはその声
泣いている小さなわたし 慰めるその声が最初の記憶
「大丈夫」
その声の主がずうっとわたしを守ってくれた
その声の主とずうっと一緒にいると安心だった
その声の主・・・雪丸
雪丸はわたしの親であり兄であり ただ一人の家族
雪丸も親が死んで一人で生きてて そうしてわたしを拾ったのだった
ただ泣いている小さな童を
やがて誰もいなくなった村を見つけて 雪丸とわたしはその村にあった家に住むことにした
見捨てられた田畑
それでも耕し手を入れると実りをくれた
雨を風を防いでくれる家の中で横になれる
わたしは幸せだった
雪丸は少し離れた所のお寺へと出来た少しの野菜やお米も届けるようになり お坊様は雪丸に字を教えてくれる
飢饉で 村の人々はいなくなったのだ
そう雪丸が教えてくれた
南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏
そう唱えるだけで良い
お坊様が教えてくれる
「お前達は感心じゃ しかし気を付けよ 世の中には悪い者がたんとおるゆえな」
雪丸が唇をかみしめる
昔 武士であったというお坊様は雪丸に戦い方の手ほどきもしてくれるようになった
「自分の身は自分で守らねばならぬ こういう世の中であるゆえに」
だがー逃げることは卑怯ではないぞーとも お坊様は言われるのだった
「あげは お前は美しい娘に育った この世はな美しい娘には生きにくくもある」
悪い者 悪い者達
食べる物を自分では作らぬ流れ者たち
とうとうそれらが流れてきた
「おお!美しい娘がおるぞ これは」
逃げても逃げても追いかけてくる汚らしい男達
追うのをやめてはくれない
雪丸が走ってきてくれた
「なんじゃ お前はこの女の亭主か 邪魔じゃ どけ」
「あげは逃げよ! お坊様のところへ」
雪丸が棒を構える
だけど男達が持っているのはギラギラした刀
男達の数は多い 多すぎる
雪丸はよく戦ったけれど
血まみれになって 斬り刻まれてー
倒れた
「雪丸 雪丸!」
どうして一人逃げられようか
雪丸に救われたこの命 育ててもらったわたしが
一人生きのびられようか
雪丸の血に染まった刀が落ちている
ならば ならば わたしも!
雪丸 あなたがいないこの世など わたしは生きていかれないー
雪丸の身体に重なるようにわたしの身体は落ちた
朱(あけ)に染まりながらー
雪丸の命を追うように その魂を追いかけるように
わたしはこの世に別れを告げた
雪丸 雪丸
夢を見るわ「大丈夫だ」
そう言う声 その声の響きを捜すわ
あなたがいないこの世など わたしは生きていかれない
だから
「・・・だ」覚えているのはその声
泣いている小さなわたし 慰めるその声が最初の記憶
「大丈夫」
その声の主がずうっとわたしを守ってくれた
その声の主とずうっと一緒にいると安心だった
その声の主・・・雪丸
雪丸はわたしの親であり兄であり ただ一人の家族
雪丸も親が死んで一人で生きてて そうしてわたしを拾ったのだった
ただ泣いている小さな童を
やがて誰もいなくなった村を見つけて 雪丸とわたしはその村にあった家に住むことにした
見捨てられた田畑
それでも耕し手を入れると実りをくれた
雨を風を防いでくれる家の中で横になれる
わたしは幸せだった
雪丸は少し離れた所のお寺へと出来た少しの野菜やお米も届けるようになり お坊様は雪丸に字を教えてくれる
飢饉で 村の人々はいなくなったのだ
そう雪丸が教えてくれた
南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏
そう唱えるだけで良い
お坊様が教えてくれる
「お前達は感心じゃ しかし気を付けよ 世の中には悪い者がたんとおるゆえな」
雪丸が唇をかみしめる
昔 武士であったというお坊様は雪丸に戦い方の手ほどきもしてくれるようになった
「自分の身は自分で守らねばならぬ こういう世の中であるゆえに」
だがー逃げることは卑怯ではないぞーとも お坊様は言われるのだった
「あげは お前は美しい娘に育った この世はな美しい娘には生きにくくもある」
悪い者 悪い者達
食べる物を自分では作らぬ流れ者たち
とうとうそれらが流れてきた
「おお!美しい娘がおるぞ これは」
逃げても逃げても追いかけてくる汚らしい男達
追うのをやめてはくれない
雪丸が走ってきてくれた
「なんじゃ お前はこの女の亭主か 邪魔じゃ どけ」
「あげは逃げよ! お坊様のところへ」
雪丸が棒を構える
だけど男達が持っているのはギラギラした刀
男達の数は多い 多すぎる
雪丸はよく戦ったけれど
血まみれになって 斬り刻まれてー
倒れた
「雪丸 雪丸!」
どうして一人逃げられようか
雪丸に救われたこの命 育ててもらったわたしが
一人生きのびられようか
雪丸の血に染まった刀が落ちている
ならば ならば わたしも!
雪丸 あなたがいないこの世など わたしは生きていかれないー
雪丸の身体に重なるようにわたしの身体は落ちた
朱(あけ)に染まりながらー
雪丸の命を追うように その魂を追いかけるように
わたしはこの世に別れを告げた
雪丸 雪丸
夢を見るわ「大丈夫だ」
そう言う声 その声の響きを捜すわ
あなたがいないこの世など わたしは生きていかれない
だから