夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「夢綺譚」より その3

2016-08-19 22:24:41 | 自作の小説
恋すれど 其は形見にて 想ひぞ告げじ

ー青衣(あおぎぬ)-

病院であっさり余命を宣告されて・・・

ああ・・・そうなのか これで終わりの人生なんだ
なんとまあ


ひとごとのように そう思った

ーしゃあない じたばたしても


命が必要な家なのだもの

鈴(れい)姉さん  そしてわたし わたし・・・・・

すると弓鈴(ゆりん)は 一人で家を背負うことになるのか 一人きりで

弓鈴の命は どれだけ保(も)つだろう


わたしは家守(いえもり)に恋してしまった

それが失敗


憧れた鈴姉さん 鈴姉さんと同じに わたしも夢を視(み)た

生きた人ではない家守 家守とあの者が人であった頃に起きたこと

たとえ人で無くなろうとも あの者は家守と一緒

わたしには その邪魔はできない

だから この想いは胸に秘めたまま 逝こう 

ひっそりと

「夢綺譚」より その2

2016-08-19 15:53:37 | 自作の小説
ー鈴羅(れいら)の恋ー


背負う務めは分かっていたから 一生ひとりでいいと思っていた

この運命に人を巻きこむのは できはしないと

それでもー
あの男性(ひと)


「わたし 結婚はしないからー」
幾ら言っても・・・

ちょっと哀しそうな表情(かお)にはなるけれど じきに優しい笑顔になって

店にやってくる事をやめない
およそ似合わない品でも何か一つ見繕っては買っていく

いつか店に来てくれない日は寂しく思うようになり
来てくれることを待つようになっていた


そうして わたしは夢を視(み)たのだ

何か嬉しいことがあって とっても喜んでいるあの人

なのに! その笑顔のまま あの人は事故に遭って死んでしまう

ああ・・・・

若い顔のまま 死んでしまう

そんなにも早く死ぬ運命にいるのなら いるのなら!

夢の中でも 夢からさめてもーわたしは泣いていた


たとえ短い時間でも 束の間でも あの人の妻でありたい!

わたしは そう願っていた

だって だって とうにわたしは恋に落ちていたのだもの
好きになっていたのだもの!


「結婚するわ!今すぐするわ!」

店に来たあの人に成彰(なりあき)さんに そう言ったらー

あの人 それは嬉しそうな笑顔になってくれて

わたしは彼の真剣な表情も笑顔も大好きだった

それから娘が 弓鈴(ゆりん)が産まれてー

ああ 胸が痛くなる

わたしは繰り返し 彼の死を夢で見るようになっていて


店に電話がかかったわ

「宝くじ 当たったんだ! 一等が! 」

どういう笑顔でいるか わかったわ

「ねえ 気を付けてね」
繰り返し そう言うしかなかったけれど

電話が終わる前に・・・・随分イヤな音が聞こえてきたの




運命は変えられない
知っていたわ
できることはない


操作ミス? 突如異常な動きを始めたクレーン車の腕が・・・あの人にぶつかった

不幸な事故だと言われたわ

ー僕は当たりがいいんだ 美人の奥さんに飛び切り可愛い娘に その上さ宝くじも当たったー

でもクレーン車にまで当たってしまったじゃない
お馬鹿さん

もしかしたら わたしと一緒にならなかったら あの人の運命は変わったのかしら

長生きできたのかしら

だけど あの人と一緒じゃない人生は わたしが嫌だったの

どんなに短い時間でも あの人と暮らしたかった
一緒にいたかった


貴方が幸運なんじゃない 幸運だったのはわたし
貴方と一緒になって わたしは娘も手に入れたのだもの


わたしは わたしの運命に貴方を巻きこんでしまった
貴方への恋ゆえに・・・・・