夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「夢綺譚」より その6

2016-08-21 15:27:53 | 自作の小説
ー受け継ぐ人ー

祖母が元華族の血筋と言うのは話半分に聞いていた
幼い頃に聞いた不確かな昔語り

郵便配達夫の怪談なんかと一緒に それは現実には結びつかないものの一つ

祖母の年の離れた美しい従姉の身に起きた悲劇

空襲で焼けた美しい洋館

戦死した許婚者


祖母の両親も生活の立て直しに必死だった戦後

結婚で故郷を遠く離れた祖母

ちょっと気位の高かった祖母には母の結婚相手となった父のことは気にいらなかったようだ
けれど父も祖母のことは あんまり好きではなかったようだから お互いさまであったのだろう

祖母はわたしにはいいおばあちゃんだったのだけれど

少女の頃に祖母が死んで 高校生の時に母が亡くなり 大学時代に父も病気になって卒業前に死んだ

3人目ともなれば 看病もその後の手続きもすっかり慣れてしまって 次はこう 次はこうーと

ただ看病に追われて就職活動は全然できていなかった

暫くは父の生命保険とか そうしたものもあるけれど
さてどうしようー


どうすればいいのか思案しているところに弁護士さんからの連絡が来た

祖母から聞いた話そのままの美しい洋館

そこには織物の機械があった

祖母が機織りを仕事としていたから 「趣味が仕事になったー」
そう苦笑いして


祖母が病気となってその機械は何処かにやられてしまったけれど

織ることは祖母から手ほどきを受けて大好きだった


その機械が織ってーと呼びかけている気がした


わたしは何も考えずにその話を受けた

洋館を相続した


その時は何も知らなかったから

洋館に住むようになってから暫くして わたしは夢を視(み)るようになった

ただの夢とも思えず 視(み)た夢を憶えている限り記録するようにした


ある日 遊びにきた従妹が見た夢を話して・・・・・

わたしは 洋館は住人を選ぶのではないかーそう思うようになってきた

いつかは確認しなくてはならないかもしれない

この洋館に何かあるとしても わたしはこの洋館が好きだ

何よりここには機織りの道具がある

織っているととても心がやすらぐ