アクシナティの兵士達と皇女ファナクが無事に帰国できるように船に食糧や飲み物を用意するなど 通訳代わりとしてもベルナーは多忙きわまりなかった
船旅でファナクが不自由しないように準備を任されてロズモンドも忙しい
よく治められているレイダンド国では・・・ディスタン王は暇だった
ディスタン王はアクシナティの兵士達を前にしたベルナーの姿が忘れられない
あれこそ 王そのものではないか
王位につかず事が片付けば かの領域に帰るとはーなんと惜しいと思っている
普通は王位を巡り殺し合いなど起きたりするものだが この国の人間ときたら血筋なのだろうか
王位に固執しない
なり手が無いから仕方なく王座を預かるとか 王位につくとか
そんなディスタン王に客があった
かの領域の住人である
かの領域では大長老アスザックの下に三人の長老がいる
そのうちの一人バイオン長老がアスタリオンについて伝えたいことがあると そう申し出たのだ
バイオンはアスザールの兄弟子でアスザールの死後はアスタリオンを指導してきた
アスタリオンがアクシナティがレイダンド国を攻める噂を聞き その真偽を確かめ夷実であればレイダンドを守りたいと申し出た時
かの領域を出ることを許されたのは それが一種のテストでもあったからだとバイオンは話す
なまじ術の使える人間が自分だけの私利私欲の為に動けば世は乱れる
かの領域はそういう間違いを起こしそうな人間は外に出さない
領域の外の世界を知ることも重要だが 外へ出ることは危険なことでもある
アスタリオンに隠れてバイオンや数名の者が彼の言動を見張っていたという
アスザールとバイオンの師であるアスザック大長老が自分の後継者としてアスタリオンに期待をかけている
この旅でアスタリオンは一つ間違えば命を喪う自然を操る・・・海の流れを変え風を使う術を使った
力の無い者なら術が自分に返り その身が木っ端微塵に砕け死ぬ
術を使ったあとアスタリオンは一度倒れたが甦った
その後を見るにつけ 逆に力が増したように見える
むしろ今迄その力を塞いでいた栓が抜けたように そのふるう術がより力強く大きくなった
無理な力を使わずごくごく自然に術を操っているよう
「術を使うには胆力がいる
アスザールのさせるどんな修業にもアスタリオンはそれが当たり前の事と受け止め音を上げなかった
その稀に見る素直さ
我々はアスタリオンの成長に目を見張ってきた
あの誰からも憎まれぬ性格 人柄
力をひけらかすことなく」
それでも本当はレイダンド王家の人間
アスタリオンが王子リオデールとして生きるなら それも良しーと
アスザック大長老は話していたと
アスタリオンとして かの領域に戻るならば いつか大長老としてかの領域を統べる者になるという
特別な場所ではあるが その地位は魔法使いの王と呼ぶこともできる
今後もアスタリオンの言動を見届け 必要あらば守るのだとバイオンは話す
ひと通りの話が終わると ディスタン王に問われるままにバイオンはアスタリオンの子供時代の話をした
そしてベルナーは 確かに忙しいのだが 忙しくして自分の本当の心と向き合わないようにもしている
必死で助けに来てくれたロズモンド
彼女の温み 彼女の声
あの呼びかけがなければー自分は体に戻って来られなかった
何処かに魂が飛んでいた
傍にいるだけで・・・心が温かくなるロズモンド
いつかメリサンドが母親の跡を継いだように メリサンドの跡を継いでロズモンドも立派な女官長になるのだろう
ー全て片付けば必ず戻ると大長老と約束をした
人知れずベルナーは唇を嚙みしめる
恋心は想う気持ちは消そうと思って消せるものではありはしないのに
伸ばしかけた腕を指を握りしめる
想うほどに・・・・・言葉は胸の奥にたたまれる
ー去って行こう 気紛れな歌うたいとしてー
それでも想いは深まる その眼差しに心が溢れる
歌うたいのベルナー 歌えば心が現れる
歌うたいは歌えなくなる
魔法使いのアスタリオンは沙漠を越えてかの領域に戻らねばならない
ブロディルの第一王子アンドールも今後を真剣に考えていた
王妃のいないこの国
マルレーネとメリサンド女官長が城の内うちのことは決定して采配している
ブロディルには 母がまだまだ元気な王妃がいる
元気過ぎる両親 国王夫妻のもとで弟たちには充分な見習い期間がある 国王になる為の
長男としてまずは自分の決断を弟たちに話す
アクシナティや皇女ファナクのことなどで思いがけず滞在が長引いたが いつまでも帰国せずに
このままだらだらレイダンドにいるわけにはいかない
「ディスタン王の許しを得ることができれば マルレーネ姫をブロディルに招待しようと思う」
そう言って弟たちの顔を見る
「国を継いだら そうそう他の国にも出かけられまい マルレーネ姫が申し出を受けてくれたなら」
アンドールは両親に 特に母親にマルレーネ姫を会わせたいと思っているのだった
それで話がまとまれば ブロディルの国王夫妻を説得しマルレーネ姫と共にレイダンド国で暮らしたいと
アンドールは言った
「ははん・・・のった」とロブレインが言う
「のった・・・って兄さん ブライ?」
ダンスタンは楽しそうなロブレインが不思議だ
「たぶん アンドールは思ったんだ 兄弟の誰かがレイダンドの王にならないといけない
ならば国王夫妻も元気なブロディル国ならば」
「頼りない弟たちでも大丈夫 任せられると」
ロブレインの言葉をリトアールが受ける
「さて僕は王ってのはガラじゃない サブの身 補佐とかが気が楽だ
かと言って弟なんぞを王よーと呼ぶのもごめんだね
僕はアンドールについてく 兄弟半々だ
弟二人はブロディルで どっちかが王になればいいさ」
ロブレインは本の部屋でフレイダのアデリスの話をしたエルディーヌ姫の姿を思い返していた
レイダンドの国を愛している姫
彼女をこの国から引き離すことはできない
「-となれば 僕もエルディーヌ姫に申し込んでこよう
うまくいけばアンドールと僕は一度国へ戻り それからレイダンドへ帰ってくる
リトアール ダンスタン 我が愛しき弟たちよ
お前達はその間に今後についてしっかり決めておけ」
それからアンドールを見て「じゃ行こうか 一生を決めに」
やや呆気にとられた弟二人を置いてアンドールとロブレインは部屋を出て行く
残された二人は どちらからともなく笑い出した
「何なんだろ あのコンビネーションは」
まいったという表情のダンスタン
リトアールも首をかく「猶予をくれたというわけか」
船旅でファナクが不自由しないように準備を任されてロズモンドも忙しい
よく治められているレイダンド国では・・・ディスタン王は暇だった
ディスタン王はアクシナティの兵士達を前にしたベルナーの姿が忘れられない
あれこそ 王そのものではないか
王位につかず事が片付けば かの領域に帰るとはーなんと惜しいと思っている
普通は王位を巡り殺し合いなど起きたりするものだが この国の人間ときたら血筋なのだろうか
王位に固執しない
なり手が無いから仕方なく王座を預かるとか 王位につくとか
そんなディスタン王に客があった
かの領域の住人である
かの領域では大長老アスザックの下に三人の長老がいる
そのうちの一人バイオン長老がアスタリオンについて伝えたいことがあると そう申し出たのだ
バイオンはアスザールの兄弟子でアスザールの死後はアスタリオンを指導してきた
アスタリオンがアクシナティがレイダンド国を攻める噂を聞き その真偽を確かめ夷実であればレイダンドを守りたいと申し出た時
かの領域を出ることを許されたのは それが一種のテストでもあったからだとバイオンは話す
なまじ術の使える人間が自分だけの私利私欲の為に動けば世は乱れる
かの領域はそういう間違いを起こしそうな人間は外に出さない
領域の外の世界を知ることも重要だが 外へ出ることは危険なことでもある
アスタリオンに隠れてバイオンや数名の者が彼の言動を見張っていたという
アスザールとバイオンの師であるアスザック大長老が自分の後継者としてアスタリオンに期待をかけている
この旅でアスタリオンは一つ間違えば命を喪う自然を操る・・・海の流れを変え風を使う術を使った
力の無い者なら術が自分に返り その身が木っ端微塵に砕け死ぬ
術を使ったあとアスタリオンは一度倒れたが甦った
その後を見るにつけ 逆に力が増したように見える
むしろ今迄その力を塞いでいた栓が抜けたように そのふるう術がより力強く大きくなった
無理な力を使わずごくごく自然に術を操っているよう
「術を使うには胆力がいる
アスザールのさせるどんな修業にもアスタリオンはそれが当たり前の事と受け止め音を上げなかった
その稀に見る素直さ
我々はアスタリオンの成長に目を見張ってきた
あの誰からも憎まれぬ性格 人柄
力をひけらかすことなく」
それでも本当はレイダンド王家の人間
アスタリオンが王子リオデールとして生きるなら それも良しーと
アスザック大長老は話していたと
アスタリオンとして かの領域に戻るならば いつか大長老としてかの領域を統べる者になるという
特別な場所ではあるが その地位は魔法使いの王と呼ぶこともできる
今後もアスタリオンの言動を見届け 必要あらば守るのだとバイオンは話す
ひと通りの話が終わると ディスタン王に問われるままにバイオンはアスタリオンの子供時代の話をした
そしてベルナーは 確かに忙しいのだが 忙しくして自分の本当の心と向き合わないようにもしている
必死で助けに来てくれたロズモンド
彼女の温み 彼女の声
あの呼びかけがなければー自分は体に戻って来られなかった
何処かに魂が飛んでいた
傍にいるだけで・・・心が温かくなるロズモンド
いつかメリサンドが母親の跡を継いだように メリサンドの跡を継いでロズモンドも立派な女官長になるのだろう
ー全て片付けば必ず戻ると大長老と約束をした
人知れずベルナーは唇を嚙みしめる
恋心は想う気持ちは消そうと思って消せるものではありはしないのに
伸ばしかけた腕を指を握りしめる
想うほどに・・・・・言葉は胸の奥にたたまれる
ー去って行こう 気紛れな歌うたいとしてー
それでも想いは深まる その眼差しに心が溢れる
歌うたいのベルナー 歌えば心が現れる
歌うたいは歌えなくなる
魔法使いのアスタリオンは沙漠を越えてかの領域に戻らねばならない
ブロディルの第一王子アンドールも今後を真剣に考えていた
王妃のいないこの国
マルレーネとメリサンド女官長が城の内うちのことは決定して采配している
ブロディルには 母がまだまだ元気な王妃がいる
元気過ぎる両親 国王夫妻のもとで弟たちには充分な見習い期間がある 国王になる為の
長男としてまずは自分の決断を弟たちに話す
アクシナティや皇女ファナクのことなどで思いがけず滞在が長引いたが いつまでも帰国せずに
このままだらだらレイダンドにいるわけにはいかない
「ディスタン王の許しを得ることができれば マルレーネ姫をブロディルに招待しようと思う」
そう言って弟たちの顔を見る
「国を継いだら そうそう他の国にも出かけられまい マルレーネ姫が申し出を受けてくれたなら」
アンドールは両親に 特に母親にマルレーネ姫を会わせたいと思っているのだった
それで話がまとまれば ブロディルの国王夫妻を説得しマルレーネ姫と共にレイダンド国で暮らしたいと
アンドールは言った
「ははん・・・のった」とロブレインが言う
「のった・・・って兄さん ブライ?」
ダンスタンは楽しそうなロブレインが不思議だ
「たぶん アンドールは思ったんだ 兄弟の誰かがレイダンドの王にならないといけない
ならば国王夫妻も元気なブロディル国ならば」
「頼りない弟たちでも大丈夫 任せられると」
ロブレインの言葉をリトアールが受ける
「さて僕は王ってのはガラじゃない サブの身 補佐とかが気が楽だ
かと言って弟なんぞを王よーと呼ぶのもごめんだね
僕はアンドールについてく 兄弟半々だ
弟二人はブロディルで どっちかが王になればいいさ」
ロブレインは本の部屋でフレイダのアデリスの話をしたエルディーヌ姫の姿を思い返していた
レイダンドの国を愛している姫
彼女をこの国から引き離すことはできない
「-となれば 僕もエルディーヌ姫に申し込んでこよう
うまくいけばアンドールと僕は一度国へ戻り それからレイダンドへ帰ってくる
リトアール ダンスタン 我が愛しき弟たちよ
お前達はその間に今後についてしっかり決めておけ」
それからアンドールを見て「じゃ行こうか 一生を決めに」
やや呆気にとられた弟二人を置いてアンドールとロブレインは部屋を出て行く
残された二人は どちらからともなく笑い出した
「何なんだろ あのコンビネーションは」
まいったという表情のダンスタン
リトアールも首をかく「猶予をくれたというわけか」