ー振袖狂乱ー
気に入ったかー魔のモノに魅入られたは おしずの不運
それが己への娘らしい思慕の念ゆえに
ならば哀れを誘う
あの無垢で清らかな娘をこうも汚すか
「お前は この娘の為にはならぬ」
主膳の言葉におしずに憑いたモノはせせら笑う
「何とすると 我が身は妖し その刀では我は斬れぬ この娘の体が傷つくだけ
それに ほれ哀れやな お前の拒否の言葉に娘は傷つき 我の中で泣いておる
我が離れると この娘 羞恥から自ら果てるやもしれんぞ」
「案ずるな 俺には一つ方策がある」
主膳はおしずに当身を喰らわせ肩に担いだ
「お前!」
意識ないおしずが魔物の声で口をきく
振袖の形となる魔のモノは主膳が何者かを知らぬ「何をするつもりだえ」
「案ずるな 天下の往来は人目につきすぎる 何をしようにも・・・な」
「信ぜぬぞ 男というケダモノは女を騙す 犯す 食い物にする
我が妻でさえ 己が出世の為に利用する
金の為に娘さえ売る」
「そんなろくでもない男の一人であるこの身にお前は その娘をけしかけ誘わせたではないか」
ソレは言葉に詰まった・・・・・
だが今はおしずに憑いていて 離れられぬ
主膳がどうするつもりか好奇心もあったのだ
此の世との依り代となっている娘おしず
おしずは魔のモノにその身の自由を奪われていて 魔のモノの内側から魂がもがいている
ーこれは わたしがしたい事ではないのに 言いたいことではないのに
ー出して 出して ここから出して
振袖が帯がおしずの体を身動きとれなくし 締めあげる
おしずは もう一度自分を救ってくれた男に逢いたかった
娘らしい憧れを持って
言葉を交わせたら それで良かった
それで嬉しかったのに
娘の着飾りたい気持ちに ソレはつけこむ
取り入る
娘の魂を取り囲み・・・・・・
主膳が壊れた塀から入っていったのは荒れ寺だった 住職どころか狐狸さえ逃げていきそうな薄気味悪さ
本堂だったらしき場所で主膳は足を止め おしずの体を下に置いた
「ここは・・・」魔のモノが気味悪げな声を立てる
「先代の住職は ここで果てた
大層な化け物と戦って血を吐いて死んだ」
おしずの体の横に腰を下ろした主膳は乾いた口調で続けた
「たまにいるのさ 人間も生まれつき人外の輩に対抗できる力を持った者が そういう家系もある
先代の住職は気の毒に その力を二親から気味悪がられ寺に捨てられた
寺はその力を重宝に使って金儲けしていたよ
欲にかられた先々代の住職は そうした欲深い人間にあだなす化け物に取り込まれてな
妖怪と成り果てた
先代の住職を親が捨てたのは 双子だったからだ
親は気味悪く思う子供の方を捨てた
双子の片割れは いつか自分に兄弟がいたことも幼さゆえに忘れ 随分大きくなるまで存在を知らなかった
乳母が教えてくれるまで兄弟が何処にいるかもわからなかった
兄弟の死闘に双子の片割れは間に合わなかった
助けてやれず看取るしかできなかった
ただ その最期の言葉を聞くしかー」
「その双子の片割れがー」
「ああ・・・・ここは兄弟の血が染みた場所だ 」
兄弟の遺産 それは血による化け物封じの結界
この寺の最後の住職となった若者が魂の最後のひと欠片までも・・・
魔を封じる場所として
「おのれ おのれ たばかったな」ぎりぎり歯噛みをする おしずの体を使って話す魔のモノは
おしずの体を覆う振袖がひくひく震える
「ただ封じるだけでは いつかお前はまた人に仇なそう 完全に消えていただく」
「どう・・・やると・・・」
魔のモノの声が怯えを含む
ただの人間が自分という存在に何かできようはずがない
しかし いっそ疲れたような主膳が不気味だった
魔のモノを怯えさせる男
その魔のモノを何処からか現れた二本の腕が おしずの体から引き離した
「つかまえた」
主膳には二本の腕の持ち主が視(み)えたらしい
「ご助力忝い」
腕の持ち主は明るい陽気な声でこたえた「とどめをどうぞ」
「や・・・やめろ やめろ やめろ やめろ!」未練がましく振袖の形をしたモノはもがく 暴れる
主膳が懐から出したモノは青い炎
それが魔のモノを貫いた
ザ・・・ン
ソレは消えた
ソレをとらえていた二本の腕も消える
気に入ったかー魔のモノに魅入られたは おしずの不運
それが己への娘らしい思慕の念ゆえに
ならば哀れを誘う
あの無垢で清らかな娘をこうも汚すか
「お前は この娘の為にはならぬ」
主膳の言葉におしずに憑いたモノはせせら笑う
「何とすると 我が身は妖し その刀では我は斬れぬ この娘の体が傷つくだけ
それに ほれ哀れやな お前の拒否の言葉に娘は傷つき 我の中で泣いておる
我が離れると この娘 羞恥から自ら果てるやもしれんぞ」
「案ずるな 俺には一つ方策がある」
主膳はおしずに当身を喰らわせ肩に担いだ
「お前!」
意識ないおしずが魔物の声で口をきく
振袖の形となる魔のモノは主膳が何者かを知らぬ「何をするつもりだえ」
「案ずるな 天下の往来は人目につきすぎる 何をしようにも・・・な」
「信ぜぬぞ 男というケダモノは女を騙す 犯す 食い物にする
我が妻でさえ 己が出世の為に利用する
金の為に娘さえ売る」
「そんなろくでもない男の一人であるこの身にお前は その娘をけしかけ誘わせたではないか」
ソレは言葉に詰まった・・・・・
だが今はおしずに憑いていて 離れられぬ
主膳がどうするつもりか好奇心もあったのだ
此の世との依り代となっている娘おしず
おしずは魔のモノにその身の自由を奪われていて 魔のモノの内側から魂がもがいている
ーこれは わたしがしたい事ではないのに 言いたいことではないのに
ー出して 出して ここから出して
振袖が帯がおしずの体を身動きとれなくし 締めあげる
おしずは もう一度自分を救ってくれた男に逢いたかった
娘らしい憧れを持って
言葉を交わせたら それで良かった
それで嬉しかったのに
娘の着飾りたい気持ちに ソレはつけこむ
取り入る
娘の魂を取り囲み・・・・・・
主膳が壊れた塀から入っていったのは荒れ寺だった 住職どころか狐狸さえ逃げていきそうな薄気味悪さ
本堂だったらしき場所で主膳は足を止め おしずの体を下に置いた
「ここは・・・」魔のモノが気味悪げな声を立てる
「先代の住職は ここで果てた
大層な化け物と戦って血を吐いて死んだ」
おしずの体の横に腰を下ろした主膳は乾いた口調で続けた
「たまにいるのさ 人間も生まれつき人外の輩に対抗できる力を持った者が そういう家系もある
先代の住職は気の毒に その力を二親から気味悪がられ寺に捨てられた
寺はその力を重宝に使って金儲けしていたよ
欲にかられた先々代の住職は そうした欲深い人間にあだなす化け物に取り込まれてな
妖怪と成り果てた
先代の住職を親が捨てたのは 双子だったからだ
親は気味悪く思う子供の方を捨てた
双子の片割れは いつか自分に兄弟がいたことも幼さゆえに忘れ 随分大きくなるまで存在を知らなかった
乳母が教えてくれるまで兄弟が何処にいるかもわからなかった
兄弟の死闘に双子の片割れは間に合わなかった
助けてやれず看取るしかできなかった
ただ その最期の言葉を聞くしかー」
「その双子の片割れがー」
「ああ・・・・ここは兄弟の血が染みた場所だ 」
兄弟の遺産 それは血による化け物封じの結界
この寺の最後の住職となった若者が魂の最後のひと欠片までも・・・
魔を封じる場所として
「おのれ おのれ たばかったな」ぎりぎり歯噛みをする おしずの体を使って話す魔のモノは
おしずの体を覆う振袖がひくひく震える
「ただ封じるだけでは いつかお前はまた人に仇なそう 完全に消えていただく」
「どう・・・やると・・・」
魔のモノの声が怯えを含む
ただの人間が自分という存在に何かできようはずがない
しかし いっそ疲れたような主膳が不気味だった
魔のモノを怯えさせる男
その魔のモノを何処からか現れた二本の腕が おしずの体から引き離した
「つかまえた」
主膳には二本の腕の持ち主が視(み)えたらしい
「ご助力忝い」
腕の持ち主は明るい陽気な声でこたえた「とどめをどうぞ」
「や・・・やめろ やめろ やめろ やめろ!」未練がましく振袖の形をしたモノはもがく 暴れる
主膳が懐から出したモノは青い炎
それが魔のモノを貫いた
ザ・・・ン
ソレは消えた
ソレをとらえていた二本の腕も消える