解説を読んで 心の準備をしてから 本編を読むのが 私は好きです
だから解説がある本は とても嬉しいです
ハードカバーの寂しい所は あとがきも解説もない所だったりします
シリーズ第一作にふさわしく 詳しく丁寧な解説を香山二三郎氏が 書かれています
主人公 四十五才 高城賢吾は失踪課に配属になる
そこの室長は彼より三才上の女性
彼女は他の課の男達の鼻を明かす為にも 高城に本来の実力を発揮してほしいと 大きな期待を寄せていた
捜査一課に回されるはずが割食った明神愛美は 不満で仕方ない
心臓が悪い法月
元野球選手の醍醐
お嬢様刑事 六条舞
射撃以外は?な森田
個性豊かな面々が揃った失踪課
高城と同期の長野に言わせれば 事件を呼ぶ男体質の高城は 結婚を控え消えた男 赤石を捜すが
インチキな健康会社
別な行方不明者
殺人事件
暴力団も動き始め
人探しは 思わぬ広がりを見せていく
高城は かつて娘が行方不明となり 遂に見つからなかった
その為 妻とも離婚
酒びたりの生活となっていた
高城再生
果して 高城の娘は 何処かで生きているのだろうか
でかい 強い ごつい
酒が好き 女が好き そこそこせこい
子供と薄幸の女 年寄りに弱い
情に篤い
末法院不覚と名乗る
気分で変わる寺のご本尊は 石 欠けた茶碗 おたまじゃくし
ネズミも逃げ出す荒れ寺に 儲け話を持ち込むは瓦版売りの佐一
「相対死(あいたいじに)」供養してくれと長持ちに入れ男女の死体を持ち込んだ天女のように美しい女
その女おひろを襲っ た男達の正体はー
二組の盗賊の暗闘が浮かぶ
「用心棒」菓子を売る亀屋の主人は幽霊に怯え 不覚が幽霊退治で泊まり込むことに
裏には後妻のとんでもない行状があった
幽霊騒動が収まってから 売り出された菓子を見て不覚は思う ーなんとしぶとい女だ あれは 生きているうちから 化けて出るかもしれんー 不覚は思わず懐に手を入れ ひしと念珠を握り締めた
そこはかとないユーモアが漂います
「姫街道」狐つき騒動にカタをつけての帰り道 襲われる男女を不覚は救うが
再度の襲撃に 男傷ついた身で更なる深傷を負いながら 女を庇い命を落とす
女 何処かとぼけたばあさまを守り 不覚は敵の首領らしい男と命のやり取りを
最後まで ばあさま老女に振り回されっ放しの不覚の人の良さが笑いを誘います
「邪剣」辻斬りにしても余りに残虐な手口が続き その被害者の死体を見つけた不覚と佐一は 死体の娘の言動に 人殺しを捕まえようとする
その相手はさしもの不覚も驚く動きを見せた
「人部薬」行方不明になった子供
墓地を歩く店主
その裏には鬼畜な男率いる一味がいた
子供になつかれた不覚
寺にいた猫の意外な行方
「帰郷」死んだ女中は生き返り 狐がついた
相談を受け不覚は店に泊まり込む
だが その話には裏があった
薄幸の女の死の間際の願いを叶えるべく不覚は及ばぬながら尽力する
「兄弟子」剃髪させ守ってやろうとした男
今の立場ゆえ死へおいやられるを黙認した 不覚の兄弟子
若き日の懐かしき思い出ごと断腸の思いで不覚は 信じる正義の為に槍をふるう
「女地獄」障子がひき開けられれば 刃物が落下し 死ぬ仕掛け
娘が開け 父親が死ぬ
かかるややこしい方法で何故殺したのか
不覚の見つけだした真相は
「淫虫」不覚さんは出てきません
村中の女に手を出そうとしてる好色医者
そいつを懲らしめてくれと頼まれた鹿蔵はー
あんた達ってば!しゃあないわねー
しゃあなさぶりが笑えます
男をあげようと村から出てきた矢吉は 実直すぎて悪人にはなりきれない
危ない所を助けてくれた顔に傷のある武士はー五年前 行方不明になった凄腕のうわばみ左門なのだろうか
茶屋で男達に絡まれたおかめ女を助けようとした矢吉は それが美人で名高い胡蝶の変装だったことを知る
縄張り争いのいざこざ
そこに 矢吉を迎えに来ていた妹おりくが巻き込まれ 役人に捕えられてしまった
今は乞食をしている元盗賊の万蔵
変装得意の胡蝶
酒さえ入れば無敵の彦六
彼らの力を借りて作戦決行
兄貴分の隆次に 妹助けだしゃ 村に帰れと言葉もらい
青春ぐらふてぃ
後味良い物語あります
ドアを閉め もたれて遠ざかる足音を聞く
聞こえているつもりになる
エレベーターに乗った
車は待たせていたのだろうか
それとも電話で呼んだか
使ったグラスを洗い シャワーを浴びて
真っ暗い部屋のソファーに座る
と声がした
「あんさん アホやなぁ」
懐かしくさえ感じる謎の仏像センセンちゃんの声だった
「アンタが出たら余計揉めて纏まるもんもぶっ壊れるってナナちゃんが言うから
ずうっと我慢してたんや
けど 纏まるように見えへんしな
見るにみかねたわ
さっきも期待したのに
なんで押しが弱いんやろ
こう押し倒してやな
一気に」
ここでセンセンちゃんは言葉を切った
「つまりは ずっと見てたーと」
相手が仏像でも 見られるのは 嫌だぞ
あんなことや こんなことしてるのを
「しやけどホンマ後ろ向きやなぁ 他の男とは付き合うてないて まりいはんも言わはったやないかいな
もっとマトモに ぶち当たってみては どないだ」
黙っていると センセンちゃんは どんどん言葉を重ねる
「うじうじ片思いしてるんが 黙って見てるんが 優しさやあらへんのでっせ
きちんとケジメつけなはれ
人生限りがあるんでっせ
ぼやぼやっとしてたら あかんがな」
身振り手振りも賑やかにパワーアップしたように見えるセンセンちゃん
「元気だ・・・」思わず呟く
「お腹は空いてますけどな
夜食には蕎麦 うどんもええなぁ」
明け方近く うどんすする仏像
シュールだ
暫く会わなかったから センセンちゃんの一挙一動がとても新鮮で不気味だった
当たって砕けろか
確かに確かに ここんとこ いじけていたかもしれない
センセンちゃんは飲んで食べて飲んで食べる
「お供えくらいはしてくれへんと マンゴーとかメロンとか 季節の果実酒とか ワインも宜しいなぁ」
「起きといてや これ飲み終わったら真剣な話あるさかいになぁ」
だがしかしセンセンちゃんはー寝た
待っているこちらの事も考えずー
このいい加減さ
誰かに似ている
仏像に布団が必要かどうか分からないが かけてやる
暫く眠る気になれず 明けてくる窓の外を眺めていた
恋・・・
まりいは優しい
好きだーと言われたら相手を好きにならないといけないと思い込むようなところがある
「そう 実はわたしも好きなの
付き合いましょうか」
学生時代のまりいとは どうだっただろう
なんとなく一緒にいて恋人同士になった
まりいが「見合いした 結婚するから」と言うまでは
俺は映画「卒業」のダスティン・ホフマンにはなれなかった
まりい まりい
強気のマドンナ
毒舌のプリンセス
百万本の薔薇は贈れないが
君に相応しい深紅の薔薇を花屋で探そう
愛しているよーとカードを添えて
ああ 新しい携帯の番号も入れておこう
花屋で選んだ薔薇の花束を面倒だけど時間差で届けてくれるように頼んだ
俺は まりいの家の前で花屋が配達するのを眺めてた
ー愛しているよー
ーずっと好きだったー
ーただ 君が好きなんだー
ー愛してる 愛してる まりいー
続いて届けられる花束には それぞれカードを添えた
ー さあ どうする まりい?
ー駄目なら 一言「大嫌い」それでいい
君の前から完全に姿を消すよ
準備はできてるー
電話がかかってきた
「何よ 何よ これ 今 何処よ バカ ツマコ」
半分 涙声だ
「君の家の前にいる」
ほどなく玄関の扉が開き
まりいが駆けてくる
「ば ばか 馬鹿たれ」
「なんで なんで オカマになったりゲイ・バーのママになったり
他のコと付き合ったりするのよ
そりゃドレス似合うけど」
「言われてみれば 幾らまりいが物好きでも こんなアタシを好きになれるはずなかったんだわ
ごめん 今の忘れて
なかったことにして」
くるりと背中を向ける
その背中に飛び蹴りが入った
「何故ここで オネエ言葉になるのよ
遊ぶなツマコ
ツマコなんて ツマコなんて」
ドンドン背中を殴られる
「キスが違う ツマコみたいなキスは誰もしてくれない
いつもいつも結婚がうまくいかないのはツマコのせいなんだから
他の男はダメなの 全然 ぜんぜん
ツマコみたいには
ツマコがいいの」
力いっぱい どつかれて背中が痛い
なのに笑いがこみあげる
叩かれながらまりいに言う
「ねえ まりい 男の趣味最悪だ」
バン!今度は頭を殴られた
長生きできないかもしれない
「何度も諦めた 他の男と付き合っても ツマコとは違うの」
「まりいを幸福にできる自信がなかった
今もないけどね」
「バッカね 一緒にシアワセになるんじゃない」
と まりいが言う