Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

泡坂妻夫引退公演

2016-05-21 09:46:30 | 読書
新保 博久 編集,東京創元社(2012/8).

泡坂妻夫は2009年に亡くなったミステリ作家.これは単行本未収録短編と戯曲をまとめたもの.「第一幕 絡繰,第二幕 手妻」の二冊が一つの箱に入って売られた.手の込んだ造本だが,図書館では二冊別々に貸し出している.
絡繰は「からくり」と読む.

第二幕最後に「舞台裏」というタイトルで,新保博久の「泡坂さん幕を閉じ」と題する解説と泡坂氏の著作リストが載っているが,そこに引用されている川柳が
 年ごとにミステリ作家はタネが尽き
確かに,初期の泡坂ミステリはものすごく面白いが,直木賞受賞あたりから作者は次第にミステリから離れていった.
解説も泡坂さんの川柳で始まっている :
 言うまでもないことならばもう言うな

さてこの本は,言うなれば「落穂拾い」であるから,冷静に見ればたいした作品があるわけがなく,ファンと研究者向き.16 トンはファンだから,喜んで読了した.

どちらかと言えば,亜智一郎ものを中心とした第一幕が,晩年の傾向を反映していて粒が揃っている.

第二幕のヨギ・ガンジーものの3作目は,作者が死の前日に筆を置いたとところまでという,文字通りの絶筆.
第二幕中で一番長くて面白かったのが,戯曲「交霊会の夜」で,解説によれば「レーゼ・ドラマ」すなわち上演を意識しない戯曲と思うべしとのことだ.
文士劇のようなかたちで上演されたが,切符のノルマの代償に全ての役者さんに芝居の「仕どころ」を作るように改変したので,ヘンテコなものになってしまったそうだ.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg