【筆洗】:フランスの美食家ブリア・サバランの有名な警句はこう言っている。
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:フランスの美食家ブリア・サバランの有名な警句はこう言っている。
<どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人であるかを言いあててみせよう>。スペインのセルバンテスは『ドン・キホーテ』で書いた。<おめえがどんな人間と歩いてるか、言ってみな、おめえがどんな人間か、言ってやるだ>▼日々の食卓の上ににじみ出し、友人という鏡に映し出される。たしかに人格や品性に、そんな一面はあろうとうなずきつつ、別の言い方を考えてみたくなる。これはどうだろう。「ポイントカードのデータを見せてみたまえ」。どんな人間か、場合によって、かなり分かりそうな当世ではないだろうか▼会員六千七百万人超というTカードの事業を展開する会社が、会員情報を裁判所の令状なしに捜査当局に提供していることが先日、明らかになった。ポイント付与に関する履歴やレンタルの記録も含むという▼違法でないそうだが、そうした個人情報を外部に渡せる仕組みがあるというだけでも不気味に思う人は多いだろう。しかも、報道されるまで周知はされていなかったという▼いまさらだが、一枚のカードを通じて相当の個人情報が外部に委ねられているのに驚く。提供により厳しい歯止めがあったほうがいいのではないか▼どんな個人情報の管理をしているのかは、どんな社会なのかを映す鏡にも思えてくる。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2019年01月25日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。