【社説①】:中東情勢緊迫 報復の応酬、即時停止を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中東情勢緊迫 報復の応酬、即時停止を
イスラエルがパレスチナ自治区ガザを連日空爆している。
ガザでは子どもを含め多くの死傷者が出た。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスも、ロケット弾を発射して対抗している。
これ以上の流血で中東の緊張が高まるのは避けねばならない。即時に攻撃をやめるべきだ。
国連のグテレス事務総長は衝突の激化に「深い懸念」を表明した。安全保障理事会は対応を協議する予定で、調停を模索している。
国際社会は結束して停戦の実現を働きかける必要がある。
イスラム教徒のラマダン(断食月)が始まった先月半ば以降、三つの宗教の聖地が集まるエルサレムで、パレスチナ人とイスラエル当局の小競り合いが続いていた。
今月10日に大規模な衝突が起きてパレスチナ人が多数負傷したため、ハマスが報復としてエルサレムにロケット弾を撃ち込み、イスラエルが空爆を始めた。応酬はエスカレートする一方だ。
衝突の背景には米国の中東政策がある。トランプ前政権は極端にイスラエル寄りの立場で、エルサレムをイスラエルの首都と認め、大使館も移転させた。あすでちょうど3年となる。
また、イスラエルが占領したヨルダン川西岸の一部併合を認め、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化を積極的に仲介した。これによりパレスチナはアラブ諸国から孤立しつつある。
軍事力で圧倒する上に米国の後ろ盾を得たイスラエルは占領した東エルサレムへの入植を進め、パレスチナ側の不満は高まった。
バイデン政権は中東和平の大前提であるイスラエルとパレスチナの「2国家共存」を推進する方針を改めて打ち出し、トランプ前政権からの転換を強調する。
ただ、イスラエルとの関係維持にも腐心し、具体的な関与は見えない。中国との競争やイラン核合意問題に力をそがれているのだろうが、米国は本格的に仲介に乗り出す責務がある。
イスラエルのネタニヤフ首相は3月の選挙後、他党との連立協議が難航し、失脚の可能性が出ている。パレスチナへの強硬姿勢で求心力を回復する狙いが透ける。
また、パレスチナでは15年ぶりの評議会(議会)選が22日に予定されていたが、自治政府のアッバス議長が敗北を回避するためか直前に延期したことで、反発するハマスが勢いづいている。
内部の事情から目をそらすため力に訴えることは認められない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年05月13日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。