【社説①】:岸田首相会見 国民の不安解消されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:岸田首相会見 国民の不安解消されぬ
新型コロナウイルスの変異株オミクロン株による感染拡大が続く中、政府はきょう、まん延防止等重点措置について北海道などの期限延長を決める。期限は計31都道府県で来月6日までとなる。
これに合わせて岸田文雄首相は記者会見を行った。短時間の囲み取材ではなく正式な会見は年初以来、1カ月半ぶりである。
新規感染者数はピークを越えたとされるものの、1日当たりの死者数は過去最多の水準だ。重症者数も高止まりしている。いずれも高齢者が感染の中心だ。
全国の自宅療養者は過去最多を更新し、療養中に亡くなる人も多い。第5波と同様の事態だ。
しかし首相は会見で必要な医療は提供できていると述べた。さらに「第6波の出口に向かって徐々に歩みを始める」と語った。
首相は重点措置の延長と同時に水際対策の緩和も打ち出した。メッセージがちぐはぐに見える。
危機的状況を認識しているのか。これでは国民の不安は解消されまい。現実を直視し、命と健康を守る取り組みに力を入れる時だ。
首相は水際対策の緩和について、入国者数の上限を現行の3500人から5千人に引き上げ、原則禁止していた外国人の新規入国の制限を緩めるとした。待機期間も現行の7日を3日に短縮する。
これまで首相は「先進7カ国で最も厳しい」とする水際対策で感染拡大を遅らせ、医療提供体制の拡充に取り組むことをコロナ対策の核心に位置づけてきた。
だが、経済界や留学生から「鎖国」と批判され、与党からも緩和を求める意見が出ていた。
首相はこうした声に押されて緩和に踏み切らざるを得なかったのだろう。そのためか、重点措置の延長と矛盾しないのか、5千人とする根拠は何か、といった質問に説得力のある説明はなかった。
緩和するなら空港での検査や健康観察の態勢などの拡充をセットにして、感染状況を見極めながら判断することが欠かせない。
東京や大阪で重症病床の使用率は緊急事態宣言の要請基準を超え、医療提供体制は逼迫(ひっぱく)している。
鍵を握るのは高齢者に対するワクチンの追加接種だ。しかし、首相は遅れている理由について明確に答えず「さらに加速させる」と述べるにとどまった。
2回目までと異なる種類のワクチンを接種することへの懸念が遅れの一因との指摘もある。
国民の不安に丁寧に応えるのが会見のあるべき姿だろう。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月18日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。