路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない

2024-11-05 06:00:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.05】:デブリ取り出し/廃炉の先行きは見えない 

 東京電力は、福島第1原発事故で生じた溶融核燃料(デブリ)を2号機から試験的に取り出す作業を、約40日ぶりに再開した。

 2011年3月の事故発生後、10年以内に取り出しを始める計画だったが、工法変更などで3回延期された。今年8月の準備作業開始後も初歩的ミスで一時中断し、9月10日にようやく着手した。ところが採取装置の先端にあるカメラの映像が見えなくなり、2台を交換した。

 国と東電による廃炉工程では、使用済み核燃料の取り出し開始までを第1期、その後を第2期としており、今回の着手によって最終盤の第3期に移った。しかし「最大の難関」とされるデブリの取り出しは、冒頭でつまずきを重ねた。今後の廃炉作業に不安を抱かざるを得ない。

 取り出し装置はパイプをつなげた伸縮式で、最長約22メートルになる。原子炉格納容器の貫通部から入れて、先端の爪形器具で少量のデブリをつかむまでには至った。

 デブリは冷却できなくなった核燃料が溶け落ち、固まったものだ。1~3号機を合わせると880トンあると推計される。試験的に採取するのは3グラム以下、耳かき一杯分程度で、全量のごく一部に過ぎない。作業全体の道のりはあまりにも遠い。

 東電は段階的に取り出しの規模を拡大し、2号機に続いて3号機、1号機の順に進める計画だ。しかし大規模な採取方法は検討中で、極めて高い放射線を出すデブリの処分先も決まっていない。技術的な問題だけではなく、社会的な合意も含めて廃炉の先行きは見通せない。

 8月に起きたのはパイプの並べ順のミスだった。背景には現場を下請け任せにしてきた管理体制があるとされる。協力企業の作業員らの準備に関し、東電や元請けの三菱重工業が一度も確認していなかった。

 カメラの問題に関し東電は「高い放射線量の影響で帯電し、異常な電流が流れた可能性が高い」とみる。当初、放射線による故障は考えにくいとしていた。今後も想定外のトラブルが起きないとは限らない。

 現時点で東電は事故から30~40年とする廃炉の完了目標を堅持している。作業でデブリを巡る知見が得られれば、目標変更を余儀なくされる不都合なデータであっても、速やかに国民に示す姿勢が求められる。

 作業員の被ばくも懸念される。格納容器外の装置周辺では毎時2~4ミリシーベルトの放射線量が検出されている。放射線業務従事者の年間被ばく線量限度は50ミリシーベルトとはいえ、一般の人の限度(1ミリシーベルト)を15~30分で超える量だ。過酷な現場である。東電は下請け任せにせず、安全を最優先にした進行管理を徹底してもらいたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月05日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.04】:同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ

2024-11-05 06:00:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・11.04】:同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.04】:同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ 

 同性婚訴訟の控訴審判決で東京高裁は、同性の婚姻を認めない民法などの規定を「違憲」と断じた。3月の札幌高裁に続く違憲判断だ。

 全国5地裁で起こされた計6件の同種訴訟のうち一、二審合わせて8例目の判決で、違憲は4件、違憲状態は3件、合憲が1件となった。いずれも賠償請求は退けたが、同性カップルの権利を保障する司法の流れは定着しつつある。国会は最高裁の統一判断を待つまでもなく、立法措置に向けた議論を始めるべきだ。

 東京高裁判決は、婚姻制度で同性同士を男女と区別するのは「不合理で、性的指向による差別的な取り扱い」と認め、法の下の平等を定めた憲法14条と、婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に立脚するとした24条2項に違反すると判断した。

 判決は、まず婚姻の意義を説く。人生の伴侶と定めた相手と法的身分関係をつくることで安定、充実した社会生活を送る基盤になるとし、同性カップルの婚姻も重要な法的利益として尊重されるべきだと強調した。生殖の能力や意思は婚姻の要件とされておらず、カップルに子が生まれないとしても、法的関係を区別する合理的根拠はないと明言した。

 「婚姻は両性の合意のみに基づき成立する」と定めた24条1項についての判断は示さなかった。だが、判決の中で「両性」の文言があるからといって同性婚を認めないのは憲法の趣旨とは解せない、と指摘している。より当事者に寄り添い、丁寧に検討を重ねた経緯が読み取れる。

 特筆すべきは、同性婚を可能にする制度の具体的な在り方に言及した点だ。民法と戸籍法を改正して同性婚を認めるか、婚姻とは別の制度を新設するか、複数の方法を想定した上で、男女が婚姻によって得られる権利と異なれば違憲の問題が生じると警告した。男女と同じ婚姻制度の利用を重視する原告側の主張に沿って、立法の道筋を示したと言える。

 踏み込んだ判断の背景には、社会の変化への認識がある。各種調査で同性婚を認める人が反対する人を上回り、パートナーシップ制度を導入する自治体は440を超えた。同性婚を認める国も増えている。判決は「社会的受容度は相当高まっている」との見解を示した。

 国会が動かなければ、こうした現状と法制度とのずれは広がるばかりだ。東京高裁は具体的な制度構築を国会の裁量に委ねる一方で、「(裁量は)立法措置をとらない根拠にはならない」とくぎを刺した。

 衆院選で、自民党は公約に明記しなかったが、立憲民主党などは同性婚に前向きだ。与野党の政策協議が欠かせない新国会は、議論に踏み出す場にふさわしい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【HUNTER・11.05】:鹿児島県警、ストーカー事件被害者の申し入れに不誠実回答|当事者が語る県議会答弁「謝罪した」の実態

2024-11-05 05:15:50 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【HUNTER・11.05】:鹿児島県警、ストーカー事件被害者の申し入れに不誠実回答|当事者が語る県議会答弁「謝罪した」の実態

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・11.05】:鹿児島県警、ストーカー事件被害者の申し入れに不誠実回答|当事者が語る県議会答弁「謝罪した」の実態 

 昨年2月、霧島市内のクリーニング店に勤めていた20代の女性がストーカー被害に遭った。犯人は霧島署の巡査部長だったが、ハンターの取材や県警の疑惑が追及された県議会質疑などから、女性が同署に被害申告した際にいったん作成されたはずの「苦情・相談等事案処理票」がシステムから削除され、証拠となる防犯カメラ映像の重要部分まで消去されていたことが明らかとなっている。闇に光を当てたのは、鹿児島県警の本田尚志元生活安全部長による「公益通報」だった。

 県警は記者会見で被害女性に「謝罪」すると明言しながら何のアクションも起こさなかったため、一連の動きを受けた被害女性は今年9月初め、謝罪と説明を求める「申入書」を送付していた。県警は、2か月余りの間、被害女性の申し入れを無視。警官による複数の犯罪を隠ぺいするよう指示した疑いが持たれている野川明輝前本部長の異動に合わせるタイミングで、回答文書を発出したことが分かった。

 ■申し入れから2カ月でようやく回答

 霧島署の署員によるストーカー被害を初めて県警・霧島署に相談して以来、まともな対応をしてもらえなかった被害女性が、県警に事件捜査の過程について説明と謝罪を求めるのは当然だ。被害女性は9月初め、県警本部長あてに文書による謝罪と説明を求める「申入書」を郵送していた。

 県警は、この申し入れを黙殺。ハンターが事実関係を報じた(既報)後も、被害女性に対しては連絡さえなかった。ところが先月24日、県警総務課が被害女性に対し突然電話をよこし、回答ができたので手交したいと言ってきた。いまだに警官署との接触に恐怖心を抱く女性はこれを拒否。回答文書を郵送するよう求めたという。

 申し入れを行ってから約2か月。ようやく送られてきたのが下の3枚の文書だった。(*黒塗り加工はハンター編集部)

 

〇〇様の申入書の回答

 ○○様の申入書の回答につきましては以下のとおり回答させていただきます。

 まず、「8月2日の会見で、貴殿は「被害者」と述べられていますが、その被害者とは誰を指していますか?また、「お詫び申し上げます」とは、誰を対象に発せられた言葉ですか?」について回答いたします。

 8月2日の会見での「被害者」とは〇〇様を指す言葉であり、「お詫び申し上げます」については、〇〇様が霧島署に相談をされた以降の県警察の対応に関して、警察に対する疑念や不安を与えてしまったことについてお詫びの言葉を発したものであります。

 次に「8月6日の県議会質疑で貴殿は、一転して「被害者に対する個別の謝罪については、これは当事者間で行われるべきもの」と謝罪拒否ともとれる発言をされています。発言に整合性がないと感じていますが、この点についてご説明下さい。」について回答いたします。

 8月6日の県議会での質疑につきましては、警察官が被疑者となった事件のそれぞれの被害者に対する謝罪のあり方についての認識を問われたものとして、一般論として「謝罪については、当事者間で行われるべきのもので、基本的には、公の埸で明らかにするものではなく、社会常識に照らして対応すべきものと認識している。」旨を回答しております。
 従いまして、8月2日の会見での発言をもって個別の謝罪がなされたという考えではないという認識です。

 次に「6日の発言だと2日の「お詫び」発言とまったく違う姿勢ということになりますが、貴殿が言う「当事者間」とは、私と犯人の警察官のことですか?」について回答いたします。

 8月6日の県議会で説明した「当事者間」とは、被害者、被疑者をはじめ、対応に当たった警察職員及び組織を含む趣旨です。

 次に「貴殿は、「謝罪」については私に犯人と交渉しろとおっしゃっておられるのですか?」について回答いたします。

 謝罪につきましては、謝罪する者が自発的な意思に基づいて誠実にお詫びの思いを伝えることが前提となるものであり、謝罪を受ける側が交渉をしなければならないものではないと認識しています。

 次に「県警はこれまで、私に対して事件についての説明はもちろん、防犯カメラ映像の内、昨年2月18、19両日の静止画は残してその後の映像を消去したことなどまったく説明してきませんでした。県公安委員会から受け取った文書には、県警側からの報告として「防犯カメラなどの関係資料を精査しましたが、2月20日から少なくとも3月3日までの間、当該署員が、勤務先及びその直近の駐車場に接近した客観的な証拠は認められませんでした」とあります。県警はなぜ、公安委員会に18、19の両日の静止画はあるが、20日以降の画像は消去したと正確に報告しなかったのか、合理的な説明を求めます。」について回答いたします。

 公安委員会に対しては、防犯カメラ画像を確認した結果を含めて、県警で事実関係を確認した結果を報告しております。
画像の処分については、公安委員会に説明することを要しないと判断したことから説明をしておりません。

 これまで〇〇様の相談の対応などに当たった霧島署の副署長と警務課長が、直接、〇〇様にお詫びの思いの一端をお伝え申し上げているところではありますが、〇〇様からの相談を霧島署が受理した際、〇〇様への対応や説明が不十分であったことや霧島署と本部との連携を欠いていたことが結果的に、〇〇様の疑念や不安を引き起こしたのではないかと憂慮いたしております。
 今後、このようなことが無いように努力して参りたいと考えており、警察安全相談を受理するに当たっては、相談者は警察に対して切実な気持ちで解決を求めて、警察を最後のよりどころとしてなされていることを十分に認識し、相談者の心情に寄り添った対応をするよう改めて全職員に指導を続けてまいる所存です。

 それぞれの項目の「~について回答いたします」で始まる紋切型の回答文は、この腐敗組織の警察官から被害を受けた女性に対するものとしては最低。被害者に寄り添う気持ちなどさらさらないことの証明だ。しかも、申し入れは野川明輝本部長宛てだったのに、回答文書の発出人は「総務課長」で、印鑑さえ押されていない。被害者を愚弄するにもほどがある。事実、この回答文を受け取った被害女性は、本部長の氏名はもちろん、発出課の印鑑さえもない文書の体裁を見て「怒りを覚えた」と話す。

 回答の中では、野川氏が記者会見で「お詫び申し上げ」た相手が被害女性であることを認めているが、当該質疑はネット上で公開されていない。つまり、その場にいない被害女性には、野川本部長の「お詫び」は伝わらない。被害女性が会見におけるやり取りの一部を知ったのは、報道関係者からの連絡によるもので、会見質疑のすべてを把握できているわけではない。相手がいないところで「お詫びした形」にした野川氏らの行為は、その場限りの単なるパフォーマンスであり、ずる賢さの象徴だ。野川氏が正式な記録(議事録)が残る県議会において“謝罪拒否”に転じたのがその証だろう。

 クリーニング店勤務の女性に対する警官の犯罪が議論されている中で、都合の悪い話については「一般論」だったと逃げを打つ県警。子供からもバカにされるような回答で、被害者が納得するわけがない。そもそも記者会見の場で「謝罪する」と言い出したのは県警側。県議会で一転して「謝罪」を拒んだのも県警だ。被害女性が問うているのは、県警が「謝罪については、当事者間で行われるべきのもので、基本的には、公の埸で明らかにするものではなく、社会常識に照らして対応すべき」などと訳の分からない話を持ち出した理由。つまり回答文は、聞かれたことに対する答えになっていない。国語力の欠如か、単なるごまかしか、あるいは他に答えが見つからなかったかのどれかだ。

 《8月6日の県議会で説明した「当事者間」とは、被害者、被疑者をはじめ、対応に当たった警察職員及び組織を含む趣旨です。》という回答も、後付けの屁理屈。県議会での「被害者に対する個別の謝罪については、これは当事者間で行われるべきもの」という答弁から、「当事者」の中に「警察」が入っていると理解するのは不可能だ。

 《結果的に、〇〇様の疑念や不安を引き起こしたのではないかと憂慮いたしております。》に至ってはまるで他人事。県警は「当事者」ではないのか?

 ■不足した公安委報告に開き直る県警

 この回答文で重要かつ悪質なのは2箇所。《画像の処分については、公安委員会に説明することを要しないと判断したことから説明をしておりません。》という記述と、《これまで〇〇様の相談の対応などに当たった霧島署の副署長と警務課長が、直接、○○様にお詫びの思いの一端をお伝え申し上げているところではあります》という一文である。

 まず、決定的な証拠となるはずだった防犯カメラ映像が消去されていたことは、これまで報じてきた通り(既報2)。県警は県議会で初めて、昨年2月18、19両日の静止画だけ残してその後の映像を消去したことを認めたが、被害女性が県公安委員会から受け取った文書には、県警側からの報告として「防犯カメラなどの関係資料を精査しましたが、2月20日から少なくとも3月3日までの間、当該署員が、勤務先及びその直近の駐車場に接近した客観的な証拠は認められませんでした」とあった。

 被害女性は申し入れの中で、県警が公安委員会に「18、19の両日の静止画はあったが、20日以降の画像は消去した」と正確な報告をしなかった理由を聞いたのに対し、完全に開き直って《画像の処分については、公安委員会に説明することを要しないと判断したことから説明をしておりません。》――。判断を下すのは公安委員会のはずで、そのための材料を勝手な判断で省いたというのだから開いた口が塞がらない。県警から必要な報告を上げてもらえなかったとすれば、公安委員会も舐められたものだ。公安委員会という制度が形骸化している証左でもある。

 ■「謝罪した」に被害者激怒

 次いで、《これまで〇〇様の相談の対応などに当たった霧島署の副署長と警務課長が、直接、○○様にお詫びの思いの一端をお伝え申し上げているところではあります》だが、これはまったくのでっち上げ。県民や県議会を欺く、不正行為と言うしかない。この回答文の最大の問題がこれだ。

 今年10月3日の県議会総務警察委員会。質問に立った共産党の平良行雄県議が、問題のストーカー事件発生当時に霧島署長だった南茂昭生活安全部長に問いかけた。「南生活安全部長にご質問ですけれども、霧島市のクリーニング店女性ストーカー事件で、被害者本人に謝罪を行っていらっしゃるかどうか、現時点において謝罪をされたかどうかというのをお聞かせください」。

 南氏の答弁は「本件は、私は霧島署長在任中の事案であってですね、職員の軽率な行動と被害者の心情に寄り添った対応を取れなかったことで、被害者に対し、怖い思い、不快な思いや、警察不信を招いたことを当時の現場責任者として改めて謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした。謝罪に関してはですね、当時、対応が悪かったということでですね、副署長、対応を行いました警務課長、二人が直接謝罪しております。私は直接は謝罪をしておりませんけれども、記者会見の場で謝罪をさせていただいております」というものだった。

 このあとの質疑は以下の通りだ。

平良議員:私はこのご本人と電話でしたけれども、いろいろと事情をお聞きしました。ご本人は、現時点においては謝罪を受けてない、というふうにおっしゃってますが、そこのところの食い違いはどのように説明されますか。
南元霧島署長:私はですね、明確に副署長、並びに警務課長から、謝罪をいたしましたという報告を受けておりますし、直接謝罪をするように私の方からも促したところでございます。本人はそれを受け入れなかったということを、報告を受けております。

平良議員:謝罪をされたというのは、日時がわかりますか。
南元霧島署長3月14日です。

平良議員:3月14日に、ご本人のご自宅に出向いて謝罪されたんでしょうか。
南元霧島署長:直接警察署の方に来ていただいて、経過の説明をする中で、不手際があったということで、謝罪をしております

 南氏は、昨年3月14日に、問題の事件に関与した霧島署の副署長と警務課長が、被害女性に直接謝罪したと明言している。しかも、被害女性ががそれを受け入れなかったとまで述べている。まるで謝罪を受け入れなかった被害者が悪いような物言いである。しかし、前述したように、この話はでっち上げ。ある一部の事実だけを利用して保身を図るための、悪質な虚偽答弁と言うしかない。このでっち上げを既成事実化したいのだろう、被害女性への「回答文」には、《これまで〇〇様の相談の対応などに当たった霧島署の副署長と警務課長が、直接、○○様にお詫びの思いの一端をお伝え申し上げているところではありますが》などとさらりと記している。被害女性は、「こんな回答、到底受け入れることはできません。謝罪など受けていませんし、事件についての詳しい説明もしてもらったことはありません。ただの一度も、です。こんな嘘を、県議会という公式な場で言っていたのですね。許せない」と反論する。

 ■霧島署の対応実態

 このスートーカー事件が起きたのは昨年の1月から2月にかけてのことだ。クリーニング店に勤務していた被害女性が、霧島署員によるストーカー行為について霧島署に申告したのが2月20日。それから何の進展もなかったことに恐怖心を募らせた被害女性は、同月27日から29日頃、霧島署に苦情を申し立てる。

 この時、対応したのは警務課長。残された記録によると、課長は女性に対し「会議があり連絡が遅れた。(加害者の警官)が名刺を渡したことは認めている。(被害女性から)好意を持たれていると勘違いしていたようだ」と署員を庇う発言を行っていた。犯人を逃がそうとする霧島署の姿勢に驚いた被害女性は、激しく抗議したという。

 ところが、3月になっても事件には何の進展もない。霧島署の対応に不信を抱いていた被害女性は、同月10日頃から14日頃にかけて県警本部に実情を伝え、捜査を促した。県警が県議会で、「3月14日」に被害女性に連絡して霧島署に来てもらったと言っているのは本当のことで、当事者である女性も認めている。県警本部からの連絡を受けた同署が、あわてて動いたということだ。

 被害女性が霧島署に出向いたのは事実だが、「経過の説明をする中で、不手際があったということで、謝罪をしております」(県議会答弁)や「霧島署の副署長と警務課長が、直接、○○様にお詫びの思いの一端をお伝え申し上げている」(回答文の記述)は、県警側の都合に合わせた虚構。被害女性は次のように振り返る。

 「私が県警本部に苦情を申し立ててからすぐに霧島署から連絡があったのは事実です。霧島署に行って、出てきたのは確かに副署長と警務課長でした。そこまでは合ってます。ですが、話の内容は犯人の警察官を庇うための言い訳ばかりでした。霧島署はそれまで、2月23日に犯人が防犯カメラの映像に映っていたはずなのに、『映っていない』とか、犯人の訪問先がたまたまクリーニング店があった商業施設内の別の店だったなどと言ってましたが、その日も同じ話を繰り返しただけで、謝罪などではありませんでした。抗議する私に「すいませんね」程度の、話の中での軽い言葉だったんです。大体、真摯な謝罪があり、まともに捜査してもらっていれば、県警本部に何度も苦情を申し立てて、最終的に告訴状を送る必要などなかったはずです。私が謝罪を受け入れなかったとか、よくそんなウソが言えますよね。私は霧島署の対応を受け入れなかっただけで、正式な謝罪など聞いたこともありません。酷すぎます。私が求めているのは、防犯カメラ映像の画像を消したことや、2月18日と19日の画像への犯人の写り込みを隠していたことの説明。それと、ここまでいろんな事実が隠されてきたことへの謝罪です。デタラメな捜査をして犯人を逃がしておいて、謝罪したなどと作り話することは許せません」

 野川明輝前本部長の警察庁への異動に合わせるかのように、「回答文」を発出し、他の事件に関与した数十名にのぼる警察官に訓戒や注意を行ったと公表した県警――。これで幕引きと考えているのだろうが、そうはいかない。鹿児島県警に対する「追跡」は終わらない。

 ちなみに、警察の「正式処分」に「口頭厳重注意」や「業務指導」などというものはない。警官不祥事に対しては「懲戒処分」と「監督上の措置」に分かれており、措置は「訓戒」と「注意」の2種類。「注意」は『本部長注意』と『所属長注意』の二つだけで、最近になって県警が多用している口頭厳重注意や業務指導は、「処分台帳」という公文書にも残らない、いわば外向けの言い訳に過ぎない。県警監察課が発表した警官不祥事への対応について、全員を対象者としてカウントする「●●名処分」などという見出しがあれば、誤報に近い。あしからず。 <中願寺純則> 

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【話題・隠ぺい疑惑に揺れる鹿児島県警・昨年2月、霧島市内のクリーニング店に勤めていた20代の女性がストーカー被害に遭った。犯人は霧島署の巡査部長】  2024年11月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【HUNTER・09.29】:届かぬ悲痛な叫び|野川鹿児島県警本部長が「謝罪と説明」求めたストーカー被害女性の申入れを黙殺

2024-11-05 05:15:40 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【HUNTER・09.29】:届かぬ悲痛な叫び|野川鹿児島県警本部長が「謝罪と説明」求めたストーカー被害女性の申入れを黙殺

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・09.29】:届かぬ悲痛な叫び|野川鹿児島県警本部長が「謝罪と説明」求めたストーカー被害女性の申入れを黙殺 

 野川明輝鹿児島県警本部長が、警察組織ぐるみの証拠隠滅が疑われるストーカー事件で被害に遭った20代女性が謝罪と説明を求めた「申入書」を黙殺。3週間経った現在も連絡さえしていないことが分かった。被害女性の申入れは、記者会見や県議会で「謝罪」「お詫び」を明言した野川氏らの発言を受けてのもの。公言した自分たちの言葉に責任を持とうとしない腐敗組織トップの卑劣な姿勢が、被害女性にさらなる苦しみを与えている。

 ■警察組織が証拠隠滅

 問題の事件は、明らかな「公益通報」を単なる情報漏洩にすり替えられ逮捕された本田尚志元生活安全部長が、北海道のジャーナリスト・小笠原淳氏に送った文書に記されていた「署員によるストーカー事件2件」の内の1件。

 2023年2月に起きたこの事件は、同月19日、鹿児島県霧島市のクリーニング店で働く20代の女性に、霧島署に勤務する巡査部長が名刺の受け取りを強要。それ以前から巡査部長に待ち伏せされるなど付きまとわれていると感じていた女性は翌20日、別の署に勤務していた顔見知りの警部補からアドバイスを受けて霧島署の警務課長に被害状況を申告したが、同署は直後からもみ消しに動いていたことが分かっている。

 もみ消しの手口は極めて悪質。相談初日(2月20日)にいったん作成された「苦情・相談等事案処理票」のデータが消去されたり、犯行の具体的な証拠となる防犯カメラの映像が消されるなど証拠隠滅が実行されていた。当然、検察が出した答えは「不起訴」。事件の真相が闇に葬られた疑いが濃い。

 警察・検察によって、一度は事実上の“もみ消し”となった霧島署巡査部長によるスートカー事件。そこに光があたったのは、昨年まで県警の警部補として県民の暮らしを守ってきた男性に郵送されていた文書のおかげだ。ハンターが絡んだ2件に続く3件目の「内部告発」だった(*下、参照

■逃げ回る県警トップに被害女性の悲痛な叫び

 この文書を起点に、ストーカー被害に遭った女性と、事件に関係した複数の元警察官による証言から新たな疑惑に発展。県議会で追及された県警は、前述した防犯カメラ映像の消去という、これまで秘められていた事実を明かさざるを得なくなる。そうした経緯を経て飛びだしたのが、記者会見における南茂明元霧島署長と野川本部長の「謝罪」「お詫び」発言だった。その後、野川本部長は県議会で姿勢を一変させ謝罪を拒否(*既報参照)。被害女性は今月初め、一連の経緯を踏まえ、次の文案の「申入書」を野川本部長あてに送付していた。

鹿児島県警察本部
野川明輝本部長 殿

申入書

 本年8月2日の記者会見で、今年3月まで霧島署長だった南茂昭生活安全部長は、私が被害に遭ったストーカー事件について聞かれ、「私が霧島署長に在任中の事案であり、職員の軽率な行動と、被害者の信条に寄り添った対応を取れなかったことで、被害者に対して怖い思い、不快な思いをさせて、警察不信を招いたこと、当時の現場責任者として謝罪をしたいと思います。誠に申し訳ございませんでした」と述べたことが報じられています。

 これを受けた形で貴殿は、同日の会見で、「被害者の方には警察に対して疑念や不安な思いをさせ、お詫び申し上げます。被害者の方から、被害者への説明が不十分であったこと、霧島署から本部への連絡がなかったことが結果的に不安につながった。今後はこのようなことがないように、しっかり取り組んで、理解を得られるように努力したい」と述べられています。

 しかし、8月6日に行なわれた県議会総務警察委員会の集中審議において県議会議員からこの点について確認を求められた貴殿は、「被害者に対する個別の謝罪については、これは当事者間で行われるべきものでございますので、基本的には公の場において明らかにするものではないと認識してございます」と答弁されています。

1 そこでお尋ねですが、8月2日の会見で、貴殿は「被害者」と述べられていますが、その被害者とは誰を指していますか?また、「お詫び申し上げます」とは、誰を対象に発せられた言葉ですか?

2 8月6日の県議会質疑で貴殿は、一転して「被害者に対する個別の謝罪については、これは当事者間で行われるべきもの」と謝罪拒否ともとれる発言をされています。発言に整合性がないと感じていますが、この点についてご説明下さい。

3 6日の発言だと2日の「お詫び」発言とまったく違う姿勢ということになりますが、貴殿が言う「当事者間」とは、私と犯人の警察官のことですか?

4 貴殿は、「謝罪」については私に犯人と交渉しろとおっしゃっておられるのですか?

5 県警はこれまで、私に対して事件についての説明はもちろん、防犯カメラ映像の内、昨年2月18、19両日の静止画は残してその後の映像を消去したことなどまったく説明してきませんでした。県公安委員会から受け取った文書には、県警側からの報告として「防犯カメラなどの関係資料を精査しましたが、2月20日から少なくとも3月3日までの間、当該署員が、勤務先及びその直近の駐車場に接近した客観的な証拠は認められませんでした」とあります。県警はなぜ、公安委員会に18、19の両日の静止画はあるが、20日以降の画像は消去したと正確に報告しなかったのか、合理的な説明を求めます。

【結語】
 私に対する謝罪と、1から5までの質問に対する回答を、早急に文書で発出していただきますよう、強く申し入れます。

 昨年2月にストーカー被害に遭っていることを初めて県警・霧島署に相談して以来、まともな対応をしてもらえなかった被害女性が、県警に事件捜査の過程について説明と謝罪を求めるのは当然だ。

 加害者とされる巡査部長は同月23日、クリーニング店の前で現職警官に目撃されていた。その姿を捉えられる位置に設置してある防犯カメラの映像が残っているはずだったが、県警の捜査結果は「映っていない」。県警の動きに不信を抱いた彼女が県公安委員会に苦情を申し立てたことに対し、同年6月に同委員会が発出した「苦情処理結果通知」は、《2月20日から少なくとも3月3日までの間、当該職員が、勤務先及びその直近の駐車場に接近した客観的証拠は認められませんでした。》――つまり証拠がないという警察の言い分を何の疑いも抱かず追認した内容だった。ところが、今年7月19日の県議会で県警は、“(昨年2月)18、19日の防犯カメラ映像には問題の巡査部長の車が映っており静止画として残したが、あとの画像は消去した”と白状する。

 県警と公安委員会が、防犯カメラ映像の確認開始日を「2月20日」にしたのは明らかなごまかしだ。それ以前からの映像――とりわけ巡査部長が被害女性に名刺を押し付けた「2月19日」とその前日の「2月18日」の映像のことに触れていなかったのは、県警が意図的にストーカーの証拠を隠滅した証左だった。騙された格好の被害女性が、一連の経緯について説明を求めるのは当然だろう。

 事件当時の霧島署長・南茂明氏は現在、ストーカー事案を担当する生活安全部長。その南氏が、公式の場で「謝罪をしたい」と明言し、野川本部長も殊勝に「被害者の方には警察に対して疑念や不安な思いをさせ、お詫び申し上げます」と言った。野川氏は県議会で前言を撤回し、「謝罪は当事者間で行われるべきもの」と豹変したが、県警トップとして被害者に対する説明責任はあるはずだ。それが、被害女性の当然の申入れを黙殺というのだから呆れるしかない。県警が繰り返す「反省」「改革」を信用する県民は皆無に近いはずだ。

 腐敗組織に二度三度と打ちのめされてきた被害女性が、絞り出すように苦しい胸の内を明かした。悲痛な叫びと言うべきだろう。

 昨年の事件以来、思い出すと蕁麻疹が出たり、髪が抜けて円形脱毛症になり恥ずかしくて美容室に行けなかかったり、寝る前に何十回も鍵をしたかどうか確認しに行ったり、何日も眠れない日が続いてたりと、そんな日常が当たり前になりました。ただただ普通の生活に戻りたい、それだけが私の願いです。

 恐怖に耐えられず、自分で命を絶とうと考えたこともありました。霧島署、県警、公安委員会、なんのための組織でしょうか?私がまたストーカー被害に遭ったり、苦しみが続いて命を落としたりしたら、どう責任を取るのか教えて欲しいくらいです。本田(元生活安全部長)さんの事件から状況が変わり、多くの人から励ましの言葉をいただきました。おかげで何とか立っています。卑劣な行為には、絶対に負けたくないですから。

 前にお話しした通り、今年の7月18日に県警の人身安全・少年課から突然電話がありました。「明日、県議会の委員会に野川本部長が出席しますが、あなたの事件について質問が出るかもしれません。事件のことを答弁してもいいですか」という内容でした。私はこれまで、ただの一度も事件のことについて何の説明も謝罪も受けていません。何度も求めてきましたが、ずっと黙殺されてきました。「そんなことは止めて下さい」と言わせたかったのでしょうが、私は隠すことは何もないですから、「話してもらって結構ですよ、ただし、本当のことを」と答えました。自分たちにとって必要なことはやるけれど、今回の申入れのように都合の悪いことは黙殺するということですね。被害者と向きあわない警察には不信感しかありません。

 もう一つ、どうしても言いたいことがあります。自民党や公明党の議員さんたちは県議会の百条委員会に反対されています。その方々に聞いてみたい。あなたたちの子供さんやお孫さんが、性被害に遭ったとしても同じ態度をとられるのですか?弱者の苦しみが分かっているのですか?

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【話題・隠ぺい疑惑に揺れる鹿児島県警】  2024年09月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【HUNTER・僭越ながら「論」・07.01】:「ウォッチドッグ」ー鹿児島県警問題の背景ー

2024-11-05 05:15:30 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【HUNTER・僭越ながら「論」・07.01】:「ウォッチドッグ」ー鹿児島県警問題の背景ー

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・僭越ながら「論」・07.01】:「ウォッチドッグ」ー鹿児島県警問題の背景ー 

 鹿児島県警の警察官による「内部告発」に絡んで、ハンターに対する家宅捜索(ガサ入れ)が行われ、情報漏洩を行ったとして元巡査長が逮捕・起訴された。不当なガサ入れで別の「内部告発」を見つけ出した県警は、元県警生活安全部長を同じように逮捕し、検察が起訴した。

 いずれの事案も、内部告発された先がネットメディアの記者であり、フリーのジャーナリストという大組織に属さない存在だったからこそ、躊躇なく強制捜査の対象にしたとしか思えない。現に、今回以上に問題だった過去のケースでは、逮捕者どころかガサ入れさえも行われていない。本稿は、警察組織と「ウォッチドッグ」であることを放棄した大手メディアへの警鐘である。

 ■自殺未遂者まで出した「読売新聞」の誤送信問題

 2012年7月20日、福岡県警や裁判所を担当する報道各社の記者に、読売新聞の記者からメールが配信された。当時、報道関係者の間で噂になっていた現職警官の収賄事件に関する捜査情報で、取材相手が福岡県警の監察官であることが分かる内容だった。いわゆる「取材メモ」である。

 社内向けに送信したつもりが他社の記者に送ってしまったというお粗末な「誤送信」だったが、事実関係を掴んだハンターが報じたことで、大変な問題に発展する。詳しい顛末については、旧サイトの配信記事をご覧いただきたい。

 参照記事 ⇒ “読売新聞記者の大失態 前代未聞の「取材メモ」誤送信と問題点
 参照記事 ⇒ “読売新聞 異例の早期処分にも多くの疑問

 絶対に守らなければならない「情報源」を明かしたことは記者失格=解雇で済むかもしれないが、捜査情報を漏らした警察官は「守秘義務違反」、情報を聞き出してスクープを狙った記者は情報漏洩の「そそのかし」にあたる。責任を感じたのか、捜査情報を漏らした監察官は、ハンターの報道後、自殺未遂を図っていたことが分かっている。では、監察官が漏らした情報とはいかなるものだったのか――。以下に再掲する。

12・7・20 監察

・おれが聞いているのは、福博会にガサ情報を流した見返りに金を受け取ったことは 聞いている。時期や額については聞いていない。

・福博会のことも、主席から一応知らせておくと言われた程度で、細かい話までは聞いていない。ただ福博会というのは間違いないよ

・工藤会の件については、おれは聞いていない。ただ担当者が違うからすべてを聞けるわけではない。

・難しいのは、相手が暴力団で裏がとれていないこと。あくまで本人が言っているだけで、現金でやり取りしているから裏がとれていないこと。

主席に聞いているのは着手は8月初め。異動の関係もあって、その時期になると聞いた。それでダメだったら、事件として挙げるのはあきらめると言っていた。

・個人的にはいつ書いてもいい話しだと思う。

・あなたが判断するのか知らないけど、けしからん話であることは間違いない。

・主席は各社知っていると言っていた。会社かどうかはわからない。ただ、主席によると最初にあたってきたのは朝日で、7月10日ぐらいらしい。何で朝日がとれるのかわからないと言っていた。

 読売の記者の取材日は7月20日。話を聞き出した相手は「監察」となっている。メモの内容を見ると、事案が指定暴力団「福博会」側に捜査情報を漏らして見返りの現金を受け取ったという贈収賄であることが分かる。「主席」とあるのは警務部監察官室トップの首席監察官のことで、その人物が言った「8月初め」という着手時期まで明記してあった。取材した記者は、事件化近しと判断し、この日のうちにメモの全文をメールで送信していた。ただし、送信した先が読売新聞の同僚ではなく、他社の記者たちだったというわけだ。

 ハンターの報道を受けた読売新聞西部本社の動きは早かった。8月14日朝刊で当事者の社会部記者を諭旨退職処分にしたことや事案の顛末を記事の中で公表。さらに、誤送信と県警がらみの「誤報」に関係した社会部長と編集局長、社会部デスクと法務室長らに対する処分に加え、コンプライアンス担当の常務取締役総務局長が役員報酬の一部を返上することを明らかにする。

 報道機関としての適格性を著しく欠く事態に免職や更迭という厳しい処分を選択した同紙だったが、ハンターの報道がなかったとすれば、メール誤送信の事実は闇に葬られていた可能性が高い。誤送信に気付いた読売側は、送信先の他社の記者たちに「なかったことにしてほしい」と虫のいい話をしていたからだ。しかも、誤送信した内容を、翌朝の朝刊1面でスクープ記事にしたのだから面の皮が厚いと言うしかない。これは、誤送信があった当日、同紙が「話は漏れない」と甘く考えていた証拠でもある。

 他紙は、やむなく同日夕刊で読売の報道を追いかけたが、結果的に福岡県警は十分に堀を埋めるだけの時間を奪われ、中途半端な形で逮捕に踏み切らざるを得なくなったという。報道合戦が始まった当初、贈賄側の行方は不明のままだったとされ、先走った報道が捜査妨害となり、犯人の逃亡を助ける形となっていた可能性さえある。読売への情報漏洩は、重大な違法行為だった。

 ■守られる癒着構造― 捜査機関と大手メディア 

 問題は、明らかな情報漏洩=守秘義務違反事件だったにもかかわらず、実行者は逮捕されず、読売新聞には家宅捜索さえ行われなかった、という点だ。現在問題になっている鹿児島県警の「内部告発」は、組織が行った不当捜査を世に知らせるためのもの。一方、読売誤送信で明らかになった警察官の行為は明らかな公務員法違反だ。三大紙の一角を占める読売への捜査情報漏洩は事件化せず、警察を批判する弱小メディアにはガサ入れまでして内部告発者を逮捕する――。この違いを容認することは到底できない。

 大手メディアにガサ入れが入ったという事例を、記者は寡聞にして知らない。あったら大問題になっていたはずで、三大紙をはじめとする大手メディアは黙っていなかったろう。だが、今回の鹿児島県警の暴走については、朝日がせいぜい社説で批判した程度。三大紙が大きなニュースとして扱っているのは、県警本部長による不当捜査の指示があったと告発した県警幹部の逮捕と、おそらくシナリオを用意した上での警察庁の特別監査に関することだけだ。再審請求や国賠訴訟で捜査機関側が不利になる証拠書類の廃棄を促した「刑事企画課だより」についても、西日本新聞が朝刊1面に大見出しを付けて追及し、南日本新聞が追随したに過ぎない。毎日もその件を扱ったが、扱いとしては小さかった。

 一連の三大紙の姿勢は、ネットメディアへのガサ入れを「対岸の火事」としか見ていない証拠だ。多くのジャーナリストが「アリの一穴になりかねない」と警鐘を鳴らしているが、これも無視する構えである。根底にあるのが、「記者クラブ制度」によって保たれてきた捜査機関と三大紙を中心とする大手メディアの癒着構造であることは疑う余地がない。いずれの組織も、予定調和の世界を乱されたくないだけなのだ。

 前述の読売新聞の誤送信問題と今回の公益通報を巡る大手メディアの報道姿勢はその象徴的な出来事なのだが、依然として「夜討ち朝駆け」という美名のもと、記者クラブメディアへの情報漏洩が繰り返されている。先月6日に本サイトで配信した《鹿児島県警、情報漏洩の捜査中に情報漏洩》で報じた通り、「警察関係者によると」と情報源を警察であることを示す守秘義務違反の証拠記事は、毎日のようにたれ流されている。(*下は読売新聞6月7日朝刊の紙面)

 余談ながら、先日、極めて珍しいことに読売の記者がハンターへの「挨拶」を申し入れてきた。来るだけましだと思って迎え入れたが、やってきたのは二人。しかも、着座するなり取材用とみられるノートを取り出した。“挨拶ではなく取材であるなら、最初からそう言え”と叱責した上で、「夜討ち朝駆け」が単なるネタもらいになっている現状を批判して、その後の取材にはきちんと答えた。しかし、翌朝になって紙面に掲載された彼らの記事に出てきたのは、相変わらずの「捜査関係者」。反省という言葉を知らないであれば、猿以下である。

 そうした意味で、南日本新聞6月29日朝刊の記事も酷かった。(*下が同日付南日本新聞の誌面。赤い囲みはハンター編集部)

 問題の箇所は、《情報を受け取ったとされるのはウェブメディアを運営する福岡市の60代男性記者。県警などによると男性記者が犯罪経歴を受け取る前に、1人の氏名、生年月日、住所、本籍を被告にメッセージで送信した記録が残っていた。被告は警察の聴取で「求められたから送った」という趣旨の話をしている》という一文。この内容について、同紙はハンターに確認もしていない。つまり、裁判前に県警がたれ流した情報を、裏付けも取らずに記事にしたということ。前述の読売の件同様、新聞が警察の広報としての役目を果たしている証左だろう。これでは、ウォッチドッグどころか警察の飼い犬だ。公平・公正を装って権力側の提供する情報を無批判に流す報道は、読者や視聴者に対する背信行為に他ならない。

 「夜討ち朝駆け」だの、夜回りだのと格好いいことを言っているが、しょせんはただの“ネタもらい”に過ぎない。厳密にいえば、捜査情報が洩れれば捜査機関側の「守秘義務違反」であり、それをねだったのであれば記者は共犯か幇助に問われる。記者クラブメディアが絡んだ違法行為だけ許されるというのであれば、法治国家の名が廃るというものだ。

 「夜討ち朝駆け」を全否定するつもりはない。そもそも、それが許されてきたのは、捜査機関をはじめとする権力側が、不当な捜査や不正を行っていないかを監視し、間違った方向に行くのを止める一つの手段として認められていたからだ。しかし、繰り返しになるが昨今の「夜討ち朝駆け」は、スクープをものにするためだけの歪んだ取材活動になっており、そこに付け込む捜査機関が、情報統制や印象操作の道具として逆利用しているのが現状だろう。そのいずれにも「正義」はない。

 ■強制性交事件と鹿児島メディア

 鹿児島県警を舞台にした2件の「内部通報」の発端となったのは、2021年秋に起きた強制性交事件である。当時、県が設置した新型コロナウイルスの療養施設で、県医師会の男性職員(2022年10月に退職)に性被害を受けたとして、療養施設に勤務していた女性スタッフが告訴した件だ。

 この件では、警部補として中央署に勤務していた男性職員の父親と男性職員が先手を打って同署に出向き、「刑事事件にはならない」という結論を引き出したあとだったため、警察は組織ぐるみで被害女性を門前払いにするという、理不尽な「警察一家」擁護が行われたことが明らかになっている。

 ようやく告訴状を受理した後も、事件を矮小化しようとする警察幹部の思惑によって捜査は停滞。送検さえされていなかった2022年、県医師会の池田琢哉会長(先月15日に退任)と顧問弁護士の新倉哲朗氏(和田久法律事務所)が、記者会見を開いて「合意に基づく性行為だった」と断言し、性犯罪被害を訴えている女性に、さらに大きな精神的ダメージを与えるという暴挙に出る。ここまでも、その後も、女性の人権を無視した県医師会や、不当な捜査指揮を行っていた鹿児島県警を追及したのはハンターだけ。鹿児島に、「ウォッチドッグ」はいなかった。

 ネットメディアは玉石混交だ。それは認める。大手メディアがネットメディアを見下すのも当然と思うしかないケースがあることも知っている。しかし、報じる内容が「事実」であれば、それを掘り起こせなかった多くの記者たちは、提起された問題から目を背けてはなるまい。特に弱者が被害を訴えている事例や、警察や自治体の不正については、後追いであれ何であれ、きちんと検証して報じるべきではないのだろうか?少なくともハンターは、警察の圧力に屈することはないし、弱い立場の人たちに寄り添う報道は絶対にやめない。ドン・キホーテで結構だ。

(中願寺純則) 

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【僭越ながら「論」・疑惑・鹿児島県警による未発表不祥事報告】  2024年07月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【HUNTER・僭越ながら「論」・06.12】:鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(下)2件の公益通報と強制性交事件

2024-11-05 05:15:20 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【HUNTER・僭越ながら「論」・06.12】:鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(下)2件の公益通報と強制性交事件

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・僭越ながら「論」・06.12】:鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(下)2件の公益通報と強制性交事件 

 鹿児島県警の警察官による「公益通報」が、2件立て続けに表面化した。1件目は井上昌一前刑事部長の不当な捜査指揮の証拠となる「告訴・告発事件処理簿一覧表」、2件目は野川県警本部長による警察官の犯罪行為隠蔽を告発する内容だった。一連の公益通報が行われるきっかけとなったのは、2021年9月に起きた鹿児島県医師会の男性職員(22年10月に退職)による強制性交が疑われた事件。この事件における不当捜査の実態を、ハンターに家宅捜索までして隠そうとしてきた鹿児島県警に、問題の「原点」が何かを問い直す。

 ■「闇をあばいてください。」

 4月8日の家宅捜索の際、ハンターの業務用パソコンにあったのが、本サイトに寄稿している北海道のジャーナリスト・小笠原淳氏に郵送されていた差出人不明の郵便物の画像だった。郵便物の内容は現職の警察官が犯した3件の違法行為が隠蔽されていることを示すもので、「闇をあばいてください。」とあった。ただ、県警は処理簿のデータにこだわりを見せただけで、3件の告発については訊ねようともしなかった。記事化が先行することを恐れ、意図的にそうしたということだ。

 3件の告発事案の“裏付け”がいずれも取れない状態だったが、ハンターへの家宅捜索の際に偶然内部通報の内容を知った県警は、5月30日に告発文に記載されていたうちの1件を立件。それが、現職警官による盗撮事件だった。この件についても県警は、立件はしたものの「捜査車両」を使っていたことなど、不都合な事実は隠して公表している。他の2件――現職警官によるストーカー事件と公金詐取については、6月6日から8日にかけて配信した小笠原氏の3本の記事に詳述しており、ぜひご一読願いたい。

・【鹿児島県警「情報漏洩」の真相(1)|盗撮事件、幹部が「静観」指示か
・【鹿児島県警「情報漏洩」の真相(2)|ストーカー事件「巡回連絡簿悪用」も隠蔽か
・【鹿児島県警「情報漏洩」の真相(3)|隠蔽された警視の公金詐取と改変された「刑事企画課だより」

 5月31日、県警はこの件に絡んで情報漏洩を行った疑いがあるとして、県警の前生活安全部長を国家公務員法違反で逮捕。6月2日に送検した。逮捕容疑となったのは、小笠原淳氏に、捜査情報を記した文書を封入した郵便物を送ったことだった。しかし、鹿児島簡易裁判所で開かれた勾留理由開示手続きでは、逮捕された前生活安全部長が、県警本部長による2件の事件隠蔽があったことを知らせるための「内部通報」――つまり公益通報だったことを暴露。県警トップによる事件の隠蔽が疑われるという異例の展開となっている。

 当初、送られてきた告発文について小笠原氏と検討したが、事件隠蔽を指示したのが刑事部長だという指摘には疑問を持っていた。隠蔽指示が出されたという盗撮事件も、立件されなかったというストーカー事件も、生活安全部マター。「本部長指揮」になっているのなら、刑事部が口を出す話ではない。刑事部長は、「静観しろ」(文書の記述)と指示する立場にない。「静観しろ」と言えるのは、生活安全部長か本部長の二人。そうなると捜査全体を止める権限を持つのは本部長だけだ。強制性交事件の不当捜査を追及してきたハンターがターゲットにしてきたのが前刑事部長だったことから、あえて前刑事部長に取材をかけさせ、本部長指揮の実態を聞き出させようと考えたとすれば、告発の記述にも合点がいく。ただ、いずれの事案も裏取りが困難。どうしたものかと迷っていた状況を一変させたのが、盗撮犯と元生安部長の逮捕だった。こうして県警自らが“裏取り”してくれた形になったことが、6月6日から8日にかけての配信記事につながっている。

 ■「公益通報」

 公益通報の壁は厚い。しかし、「情報漏洩」という単なる犯罪として片付けられようとしている2件の事件で問題になった文書が、本サイトでこれまで配信してきた記事の裏付けとなったのは事実。いずれの文書も県警幹部による不当捜査、犯罪の隠蔽を裏付ける貴重な証拠だった。それらの文書がなければ、県警の闇に光をあてることはできなかったはずだ。いずれも「公益通報」であると確信している。2件の公益通報の1件目は、告訴・告発事件処理簿一覧表(*下の画像)の提供によって、次が「闇をあばいてください。」で始まる告発文によってなされた県警の不当な捜査指揮に対する抵抗だったとみることもできる。

 重ねて述べるが、一連の事案の発端となったのは、新型コロナ療養施設内において起きた県医師会の元職員による強制性交事件だ。この件を追い続ける過程で、告訴・告発事件処理簿一覧表が不当捜査の証拠として登場し、配信記事を読んでいた元生活安全部長が本サイトと北海道のジャーナリストに信頼を寄せ、内部通報に及んだものと考える。

 鹿児島県警によるハンターへの強制捜査は報道弾圧である。本稿をもって正式な抗議とするが、筆者がそれ以上に声を大にして訴えたいのは、強制性交事件の事実上のもみ消しがいかに不当なものであるかということ。たしかに報道弾圧は大問題だが、筆者はガサ入れを受けようが逮捕されようが、一向にかまわない。一人でも多くのジャーナリストや政治家が、卑劣な人間たちに踏みにじられてきた女性に救いの手を差し伸べてくれることをお願いしたい。筆者も小笠原氏も、そのために戦ってきたのだから。

 ■強制性交事件の経緯

 最後に、問題の強制性交事件について経緯を振り返っておきたい。

 すべては、鹿児島県警中央警察署が性被害の訴えを門前払いにしたことから始まった。それに続く不当捜査。次いで、県医師会の池田琢哉会長が、強制性交を否定するためわざわざ会見まで開いて喧伝した「合意に基づく性行為」という主張――。医師会は男性職員を庇うことで池田体制を維持することを企図し、県警は男性職員の父親が警察官だったことから「警察一家」の体面を保つため事件のもみ消し、さらには不当捜査に走った。そうした経緯は、今回明るみに出た前生活安全部長によるものとされる郵便物に記されていた3件の警察職員による事件隠蔽の構図に重なる。

 相手が警察であれ医師会であれ、腐敗した権力に立ち向かうのが報道の使命だろう。2年間、それをやり通した結果が、鹿児島県警によるハンターへの家宅捜索であり、被疑者調べだったとしても、私は歩みを止めるわけにはいかない。

 ■ニュースサイト「ハンター」 中願寺純則

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【僭越ながら「論」・疑惑・鹿児島県警による未発表不祥事報告】  2024年06月12日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【HUNTER・僭越ながら「論」・06.11】:鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(上)「県民の信頼を取り戻す」「抜本的な対策を進める」

2024-11-05 05:15:10 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【HUNTER・僭越ながら「論」・06.11】:鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(上)「県民の信頼を取り戻す」「抜本的な対策を進める」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・僭越ながら「論」・06.11】:鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(上)「県民の信頼を取り戻す」「抜本的な対策を進める」

 「県民の信頼を取り戻す」「抜本的な対策を進める」――警察官による違法行為が明るみに出るたび繰り返されている鹿児島県警のこうしたコメントが、実現することは絶対にない。県警が、表面化した事件の背景や真相を隠し続けているからだ。それだけではなく、まだ隠蔽されたままになっている事件さえ複数ある。本稿は、報道の自由を否定した鹿児島県警に対する抗議であり、この問題の「原点」(強制性交事件)が何かを問い直す、ハンターからの最後通告である。

 ■「情報漏洩」で県警の思惑に乗る地元メディア

 昨年来、鹿児島県警の警察官による不祥事発覚が相次いだ。公表された主なものを列挙する。

・未成年者に対する淫行があったとする強制性交事件(2023年10月)

・20代女性へのつきまとい行為によるストーカー規制法違反事件(同月)

地方公務員法違反(守秘義務違反)事件(今年3月)

・不同意わいせつ事件(今年4月)

・性的姿態撮影処罰法違反(盗撮)事件(今年5月)

国家公務員法違反(守秘義務違反)事件(今年5月)

 はじめに、2件の守秘義務違反に関する事案については、公務員法に触れるものではなく、「公益通報」あるいは「内部通報」であるということをハッキリさせておきたい。さらに、2件の守秘義務違反事案の発端となったのが、鹿児島県医師会の元男性職員が訴えられた強制性交事件における不当捜査であることも明確にしておかなければならない。原点を知らずして、公益通報の経緯を語ることはできないということだ。

 その上で述べる。2件の公益通報は、いずれも県警内部の不正・腐敗を正すための告発であり、その発端となったのが県医師会の元職員による強制性交事件だ。わいせつ事案と公益通報を同列に扱い、「警察官の犯罪」「とんでもない警察官」などと批判する地元メディアの報道を見てきたが、底の浅さに呆れるばかりである。残念なことに、守秘義務違反事案の動機に疑問を持ち、事案の経緯を丹念に迫った調査報道を、筆者は寡聞にして知らない。

 公益通報の背景にあるのは、鹿児島県警という組織の悪しき体質だ。これまでの地元メディアの報道は、それを隠したい県警の思惑に乗る形になっている。報道の使命は、権力の監視であると同時に、歪んだ力によって隠された真実を暴くことではないのだろうか。警察や医師会といった権力側の発表を何の疑いもなく記事にすることで、本当に裁かれなければならない人物が笑い、悪質な犯罪が闇に葬られることを、鹿児島メディアは自覚すべきだ。

 ■公益通報の発端は強制性交事件

 ハンターは、2022年3月に強制性交事件の第一報となる『コロナ療養施設で職員が性行為|鹿児島県医師会に問われる規範意識(1)』を配信。その後、県医師会の人権を無視した被害女性への仕打ちに加え、告訴事案となった本件の捜査を担当した鹿児島県警中央警察署が“もみけし”を図ったり(参照記事→『鹿児島県警が性被害を訴えた女性を門前払い|医師会・わいせつ行為者の父は元警官』)、不当な捜査指揮が行われたことなどを報じてきた。

 その過程で入手したのが、強制性交事件で不当な捜査指揮があったことを裏付ける「告訴・告発事件処理簿一覧表」であったことは、一連の配信記事で明らかにしてきたとおりだ(参考記事⇒『鹿児島県警、腐敗の証明|背景に「警察一家」擁護と特定団体との癒着)。従って、本サイトが入手した処理簿は「公益通報」によるものだったと確信している。

 入手した処理簿によって明らかになったのは、中央署長から県警刑事部長に出世していた井上昌一氏によるものとみられる不当な捜査指揮の実態。流出の原因を知られたくなかった県警は当初、処理簿に記された一部の民間人にのみ情報が漏れたことを謝罪し、幕引きを図る構えだった。形を変えた隠蔽だ。しかし、強制性交事件の真相を埋もらせるわけにはいかない。意を決した筆者は、2024年2月21日に鹿児島県警本部を訪問した。

 この時の県警の対応は異常としか言いようがなく、処理簿一覧表を確認させた上で公表・謝罪を条件に保有していた一覧表を渡そうとしたが、県警側は拒否。処理簿に触れようともしなかった。他の都道府県の警察本部なら、正式な受け取りは避けても、その場で処理簿のコピーだけはとっていたはずだ。それさえできなかったのは、処理簿一覧表を受け取って公表した時点で事が大きくなり、蒸し返されたくない「強制性交事件」に再度光が当たることになると考えたからだろう。

 そもそも鹿児島県警は、強制性交事件に関する本サイトの数回のアプローチに、一度も向き合おうとせず、徹底的に黙殺することで組織防衛を図ってきた。改めて、これまでの県警とのやり取りを振り返っておきたい。

【2023年1月10日】
 性被害を訴えて助けを求めた女性を門前払いにしたことや、女性の言い分を聞く前に「刑事事件にはならない」などと結論付けたのは事実かどうかを確認するため、鹿児島中央署に出向き取材申し入れ。中央署側は、「こちらでは対応できない」として取材拒否。やむなく受付に署長宛ての質問書(*下の画像)を預けたところ、同署は「受け取れない」(同署警務課)として、翌日に配達証明付きでハンターの記者に返送してきた。

【2023年6月5日】
 強制性交事件で被疑者となった鹿児島県医師会男性職員の父親で、鹿児島中央署に勤務していた元警部補が息子の事件に不当介入したこと、さらには県警がこうした事実を知りながら組織ぐるみで事件送致を遅らせた形になっていることについて申し立てるため監察官への面会を求めたが、「総務部総務課」の警部と警部補が対応。監察官は対応せず、その後の連絡もなかった。

 こうして沈黙を決め込んでいた県警は今年3月、処理簿の相次ぐ流出を重くみた警察庁や国家公安員会から厳しい指摘を受け、50人体制で調査することを表明。ようやく情報漏洩の事実を認めて公式に謝罪したが、発端が強制性交事件の不当捜査にあることには一切言及していない。都合の悪いことを隠すため、「情報漏洩」だけに焦点を当てさせようとする思惑が透けて見える展開だ。以後、地元メディアは何の疑いもたず、その誘導に乗って県警発表をたれ流した。「官」を妄信するのは、この国のメディアを蝕む病である。

 ■報道弾圧 — ハンターへの家宅捜索

 4月8日朝、突然ハンターの事務所に来た鹿児島県警の捜査員が、地公法違反の関係先だとして令状を振りかざしながら家宅捜索。翌日、いったん押収して持ち去ったハンター所有のパソコンに残されていた処理簿などのデータを、返却時に削除するという暴挙に及んだ。

 さらに県警は同月18日、筆者に対して被疑者告知。21日と23日、情報漏洩に関わった疑いがあるとして筆者を取り調べた。筆者は、報道に携わる者としては当然の「情報源及び取材過程の秘匿」を貫いたが、強制性交事件のもみ消しを図ったとみられる県警と鹿児島県医師会の闇を追及してきたハンターに対する、あからさまな報道弾圧だった。本サイトが強制捜査をうける謂れはなく、怒りを込めて抗議しておきたい。

 前述の通り、ハンターはこれまで、県警幹部による不当な捜査指揮を厳しく批判する一方、県警本部を訪問して流出資料の提供という形での協力を申し出たほか、3月になって県警側が求めてきた面会要請にも応じる約束をしていた。

 これに対し県警は、同県警本部を訪れた本サイト記者の申し出を拒否。さらに自分たちの方から頼んできた面会要請も、約束前日の夕方になって一方的にキャンセルするという不誠実な姿勢だった。

 あろうことか県警は、強制性交事件の真相を歪めた県医師会と県警を追及してきたハンターへの強制捜査着手と同時に、同事件で被害を訴えてきた女性の雇用主にまで捜査の手をのばした。“これ以上騒ぐな!医師会と県警に逆らうな!”という、腐敗権力側の脅し――。ハンターは県警と医師会の癒着を疑ってきたが、間違いではないと考えている。(以下、次稿

 ■ニュースサイト「ハンター」 中願寺純則

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【僭越ながら「論」・疑惑・鹿児島県警による未発表不祥事報告】  2024年06月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【主張①・11.05】:在日中国人に弾圧 見て見ぬふりはできない

2024-11-05 05:00:30 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【主張①・11.05】:在日中国人に弾圧 見て見ぬふりはできない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・11.05】:在日中国人に弾圧 見て見ぬふりはできない 

 日本において中国政府への抗議活動などに加わった在日中国人に対し、中国政府が圧力をかけているとする調査結果を、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が公表した。

 新疆ウイグル、チベット、内モンゴル自治区、香港の出身者を含む中国人への人権弾圧である。HRWによる今年6~8月のインタビューで、中国政府の人権弾圧への抗議や民族文化の紹介などをしたことのある25人のうち16人が中国当局の圧力を証言した。

演説する中国の習近平国家主席=9月29日、北京の人民大会堂(共同)

 中国の警察が中国にいる親類を通じて、日本での活動中止を求めてきた。親戚と電話していると警察が代わり、帰国しないと「家族がどうなっても知らないぞ」と脅された。在日中国大使館で、チベットに戻らないと旅券の更新はできないと言われた人もいた。

 日本は言論の自由が保障された民主主義国だ。どの国の出身者であれ、言論の自由を享受する資格がある。調査結果が事実であれば、在日中国人への圧力は人権侵害である。日本国の主権を侵害するケースがあるかもしれない。

 日本の外務省や警察は実態を調べ、事実を確認すれば中国政府の不当な行為をやめさせなくてはならない。日本が尊ぶ価値を土足で踏み荒らす行為を容認してはならない。

 HRWは「日本政府は中国政府に対し『国境を越えた人権弾圧』を許さないと明確にすべきだ」と訴えた。問題を放置すれば、国際社会での日本の信用にも関わろう。無関心は人権弾圧への間接的な加担になる。

 中国外務省は「国境を越えて弾圧を行ったことはない」とするが、「国境を越えた弾圧」の実態は日本以外の国でも報告されている。

 中国は、公安の出先機関を外国に設け、在外中国人を拘束したり、帰国を強制したりするなどの「海外闇警察」活動を行っていた。明白な主権侵害である「海外闇警察」は、米国やドイツ、オランダなどで摘発され、閉鎖命令を受けている。

 HRWのインタビューに応じた複数の人が「日本の警察は助けてくれないだろう」と考え、日本側に助けを求めなかったことも分かった。日本政府はこれを恥じなくてはならない。日本は、自由の擁護者であり続けるべきだ。 

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【主張②・11.05】:同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ

2024-11-05 05:00:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【主張②・11.05】:同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・11.05】:同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ 

 同性婚を認めない民法などの規定について東京高裁は、違憲との判断をくだした。

 男女間を前提とし、社会の根幹を成す婚姻制度を壊しかねない不当な判決だと言わざるを得ない。

 訴訟は同性カップルの当事者7人が国に計700万円の損害賠償を求めていた。全国5地裁に6件起こされた同種訴訟で、高裁判決は札幌に続き「違憲」とされた。

 最高裁の統一的判断が示されていないことなどから、国への賠償請求は退けられた。

同性婚訴訟の東京高裁判決を受け、会見した原告と弁護団=10月30日、東京都千代田区(関勝行撮影)

 判決では、同性婚を認めない規定について法の下の平等を定めた憲法14条1項と、結婚や家族に関し個人の尊厳や平等に立脚した立法を求めた24条2項に違反すると断じた。

 男女間にしか結婚を認めないことは「合理的な根拠に基づかない差別的取り扱いにあたる」とまで踏み込んだ。

 だが、国側が主張してきたように婚姻制度は、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。歴史的に形成された社会の自然な考え方であり、これに根拠がないと断じる方が乱暴ではないか。

 憲法24条2項を挙げ、「違憲」とする解釈には無理がある。同条1項で婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」すると規定し、「両性」が男女を指すのは明らかだ。これを受けた2項も男女の結婚などに関するものだ。国側が言うように、憲法は同性婚を想定しておらず、違憲の問題を生じる余地はない―と考えるのが妥当だ。

 判決では各種の世論調査で同性婚を支持する人が増えているとしている。同性同士にも結婚に相当するような法的保護を与えることへの社会的な受容度が「相当高まっている」とも言う。それなら同性婚を想定していない憲法の改正を論議するのが筋ではないのか。

 判決では、異性間の婚姻とは別の規定を含め「複数の選択肢」があるとし、立法を求めている。

 同性愛など性的少数者への偏見や差別をなくす取り組みが必要なのはもちろんだが、そうした権利擁護と、結婚や家族のあり方の議論は分けて考えるべきだ。民法などの結婚や家族に関する規定は、伝統や慣習を立法化したものであり、国民の合意を得た慎重な議論が必要だ。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.05】:石垣陸自がパレード 軍事色前面で不適切だ

2024-11-05 04:01:50 | 【防衛省・自衛隊・防衛費、大綱・沖縄防衛局・軍需産業・Jアラート・シェルター】

【社説・11.05】:石垣陸自がパレード 軍事色前面で不適切だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.05】:石垣陸自がパレード 軍事色前面で不適切だ

 島の祭りのパレードで、迷彩服の隊員が「一撃必墜」の旗を掲げ隊列を組んで行進する-。そうした状況には違和感が拭えない。 

 石垣市で開かれた石垣島まつりの市民大パレードに、陸上自衛隊石垣駐屯地の隊員ら約70人が参加し、迷彩服姿で行進した。

 まつりは1953年の商工祭に由来。市長を委員長として経済関係者などの実行委員会形式で開催され、地元の団体・企業と市民の交流を図る一大イベントだ。

 メーンプログラムのパレードでは、企業のほか自治会や小学校など地域のさまざまな団体が日頃の活動をPRしながら練り歩く。

 そこに昨年から陸自が参加している。「公務」の位置付けで、昨年も約120人が迷彩服で行進した。

<button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26">「一撃必墜」「闘魂」などと書かれたのぼり旗を持って行進する自衛隊員ら=3日、石垣市</button>
 「一撃必墜」「闘魂」などと書かれたのぼり旗を持って行進する自衛隊員ら=3日、石垣市(沖縄タイムス)

 指揮官が部隊の状況を調べる「観閲行進」さながらの行進に、一部の市民からは「戦争を想起させる」と懸念する声が上がった。

 一方、中山義隆石垣市長は、市議会で自衛隊の参加を問われ「問題ない」との認識を示した。

 その結果、今年も再び参加したのである。まつり会場には陸自の「出店」も設けられ、軍用車両などの装備品が展示された。

 パレードは昨年より規模を縮小したものの、「一撃必墜」や「闘魂」などと書かれたのぼり旗を持って歩く隊員もいた。

 「一撃必墜」は敵のミサイルを一撃で撃ち落とすという意味だ。第348高射中隊のスローガンのようなものという。

                 ■    ■

 沖縄戦では、日本軍第32軍が「一人十殺」(1人で10人の敵を殺すこと)を合い言葉に、県民を戦場に駆り出した。

 32軍の長勇参謀長は「全県民が兵隊になり、一人十殺の闘魂を持って敵を撃破するのだ」とげきを飛ばした。

 のぼり旗は、そうしたことを彷彿(ほうふつ)とさせる。地域の行事に自衛隊が参加することはこれまでもあったが、今回のように軍事色を前面に出すのは異例のことだ。

 このところ各地で自衛隊のこうした政治的な行動が目立つ。年明けには陸自幹部や宮古島駐屯地の幹部らが制服を着て神社に集団参拝する問題が相次いだ。

 4月には陸自が公式X(旧ツイッター)で、「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」と投稿していたことも明らかになり、防衛省が「誤解を招いた」として削除した経緯がある。

                 ■    ■

 憲法9条の下、自衛隊には「専守防衛」や「非核三原則」などさまざまな制約が課せられてきた。それが安保法制により大きく転換してきた。

 集団的自衛権の行使容認をはじめ、敵基地攻撃能力の保持など「平和国家」の根幹に関わる決定が、十分な国会議論もなく押し進められてきたのである。

 今回の祭り参加はこうしたなし崩し的な変化の延長線上にあり、市民との交流というより政治的なものに映る。不安をあおる行動は厳に慎むべきだ。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月05日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.04】:[沖縄戦80年]軍官民共生共死 軍の方針が惨劇を招く

2024-11-05 04:01:40 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説・11.04】:[沖縄戦80年]軍官民共生共死 軍の方針が惨劇を招く

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.04】:[沖縄戦80年]軍官民共生共死 軍の方針が惨劇を招く

 今から80年前の1944年。沖縄では、米軍上陸必至とみて、急ピッチで戦争準備が進んでいた。 

 この年の夏から秋にかけ、沖縄住民の命運を決定付けるような重要な方針が、軍や政府から相次いで示された。

 8月31日、第32軍兵団長会同において牛島満司令官が行った訓示。

 10月6日、閣議決定された決戦与論指導方策要綱。

 10月、参謀本部と教育総監部が作成し全軍に配布した上陸防禦(ぼうぎょ)教令(案)。

 11月18日、第32軍司令部が出した報道宣伝防諜(ぼうちょう)等に関する県民指導要綱。

 これらの文書は大本営や沖縄の32軍司令部などが当時、何を考えていたのかを示すもので、秘密扱いされ、一般に知られることはなかった。

 牛島司令官は訓示の中で、現地自活を徹底するとともに、官民が喜んで軍の作戦に寄与するよう住民を指導し、防諜には特に注意するよう求めている。

 与論指導方策要綱は、米英人の残忍性を実例を挙げて示し、彼らの暴虐行為を暴露するなど敵がい心を育てることが重要だと説く。

 上陸防禦教令は「不逞(ふてい)の分子等に対しては機を失せず、断固たる処置」を講じると強調している。

 県民指導要綱は「六十万県民の総決起を促し」「軍官民共生共死の一体化」をうたっている。

                    ■    ■

 「軍官民共生共死の一体化」という言葉は、沖縄戦を象徴するキーワードとして繰り返し引用され、語られてきた。

 沖縄戦で「集団自決」(強制集団死)や日本兵による住民殺害が相次いだのはなぜか。

 これらの文書は、その問いを検証するための欠かせない資料である。

 将兵が身に付けるべき行動規範を説いた戦陣訓は、天皇のために死ぬことを賛美し、敵の捕虜になることを事実上、禁じた。

 そのような戦場道徳を身に付けた将兵は、軍事機密が漏れるのを恐れ、住民が捕虜になるのを警戒した。

 実際、沖縄戦では米軍上陸後にスパイ容疑をかけられ、日本兵に殺害されるケースが各地で起きている。

 サイパンの戦いでは、多くの邦人が断崖から身を投じた。米兵に対する恐怖心が刷り込まれていたのだ。

                  ■    ■

 なぜ日本軍は、投降を認めることで住民を保護するという「まっとうな方針」を採用せず、民間人まで道連れにしたのか。

 サイパン陥落の際、大本営・政府連絡会議でこの問題が持ち上がり、議論が交わされた。

 「居留邦人に自害を強要することなく軍とともに最後まで戦い、敵手に落ちる場合あってもやむを得ない」との趣旨の結論になったという。だが、この結論は秘密にされた。

 民間人の投降を許容する方針が明確に示されていれば、沖縄戦の様相は変わっていたはずだ。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月04日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・11.05】:不登校11年連続増 保護者の支援に力を注げ

2024-11-05 04:00:20 | 【文科省・教育制度、現場の実態把握・教員の資質・不登校・文化庁・

【社説・11.05】:不登校11年連続増 保護者の支援に力を注げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.05】:不登校11年連続増 保護者の支援に力を注げ 

 文部科学省の2023年度の問題行動・不登校調査で、全国の小中学校で不登校の児童生徒が11年連続で増加し、3・7%に当たる34万6482人になった。学校内外の居場所づくりや教員の働き方改革など、文科省はさまざまな対策をとっているが、追いついていない。不登校の保護者は困難の中にある。学校での対策とともに、不登校の児童生徒とその保護者への支援にもっと力を注ぐべきだ。

 沖縄県の不登校も小中高合わせて8240人で、小中は過去最多で合計も最多だった。割合は小中高とも全国平均を上回り、小学校はワーストだった。今年6月に公表された県の「沖縄子ども調査」では、不登校、いじめ、ひきこもり、高校中退、ヤングケアラーなど子どもが抱える困難の経験は、所得が低いほど割合が高かった。沖縄では貧困対策も合わせた総合的抜本的な取り組みが必要だ。

 22年にNPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」の保護者への調査で、不登校により支出が増えたという回答が91・5%に達した。増えた理由は、食費が最も多く、フリースクールなどの利用料と交通費、通院・カウンセリング料が続いた。勤務日数を減らさざるを得ず、約30%が世帯収入が減ったと答えた。

 今年10月公表された東京のフリースクール運営会社SOZOWの調査では、保護者の5人に1人が仕事を辞めざるを得なかったと答え、半数以上が「気分の落ち込み」があると答えた。同社代表は「自治体によって相談窓口の整備状況や取り組みにばらつきがある。親が孤立しない環境の整備が必要だ」と訴えた。

 不登校急増の原因は明確ではないという。文科省の前回22年度の調査では不登校の理由については、本人に起因する「無気力・不安」が過半数の51・8%を占めた。しかし、不登校を経験した小中高生や担任らに尋ねた委託調査とは大きな隔たりがあった。そのため、今回は相談など具体的な事実があったかを尋ねる形式にしたが、傾向は変わらなかった。学校側だけでなく、児童生徒本人に答えてもらう方法を検討すべきである。

 この間、文科省は教員数の増加や働き方改革、「校内フリースクール」と言われる校内教育支援センターの設置などを進めてきた。「校内の居場所」を民間と連携してつくる動きもある。こども家庭庁は来年度の概算要求に、専門の支援員を自治体に配置し、地域と連携しながら保護者向けの相談を受ける制度を盛り込んだ。多種多様な支援の動きは評価したい。

 不登校急増の背景に「過度な決まり事や指導で、子どもが安心できない学校になっていないか」と問う声も現場にある。一人一人それぞれの学びの形として、学校が変わり、学校以外の方法も認められ保障される教育政策が求められている。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月05日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【金口木舌・11.05】:地域が支えた受章

2024-11-05 04:00:10 | 【皇室・天皇・褒章・皇后・皇太子・元号・宮家・皇室財産・皇族の戦争責任】...

【金口木舌・11.05】:地域が支えた受章

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・11.05】:地域が支えた受章 

 古い日記帳の一文に目が止まった。「世の中が月世界旅行の時代になっても、幼い時からの年中行事だけはなくしたくない」。地域を大切にする人柄が文面に表れている

 ▼日記の主は金武酒造の創業者・奥間慶幸さん。1949年に酒造所を立ち上げたが、64年に30代で亡くなった。地域行事への参加、家族への思いに加え、借金を抱えた苦しさも赤裸々に記した

 ▼酒造所の2代目は妻の輝子さんが継いだ。子育てをしながら、返済のために養豚も兼業し、働き詰めの日々。家族を支えたのは金武の人たちだった。町内の商店には、金武酒造の銘柄「龍」以外置かない店舗もあった

 ▼このほど発表された秋の褒章を金武酒造の奥間尚登前社長、叙勲をインターリンク沖縄の豊川あさみ社長が受章した。2人は慶幸さん、輝子さんの下で育ったきょうだい。ものづくり、地域振興が評価された

 ▼2人が口にするのは「地域への感謝」。「銘柄と同じく『たつ年』で、きょうだいでの受章は巡り合わせのよう。父母も喜んでいると思う」と豊川さん。2人はこれからも金武で、食材を生かした製品を発信し続けるつもりだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年11月05日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【産経・FNN合同世論調査】:自民支持率、18歳~20代は12・5% 「政治とカネ」になお強い不信感

2024-11-05 00:15:50 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【産経・FNN合同世論調査】:自民支持率、18歳~20代は12・5% 「政治とカネ」になお強い不信感

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経・FNN合同世論調査】:自民支持率、18歳~20代は12・5% 「政治とカネ」になお強い不信感 

 産経新聞社とFNNの合同世論調査では、70歳以上の年齢層だけで石破茂内閣の支持が不支持を上回った。自民党も高齢層の支持が高い傾向が明らかとなった。

 18歳~20代で石破内閣を「支持する」と答えたのは32・0%で、「支持しない」は61・0%。30代も支持が28・8%、不支持が59・4%だった。唯一、70歳以上で支持(58・5%)が不支持(36・4%)より多かった。前回調査(10月5、6両日)では、ほとんどの年齢層で支持が不支持を上回っていた。

 自民の支持率は25・8%となり、前回調査の34・3%から8・5ポイント下がった。年代別で「支持政党が自民」と答えたのは、70歳以上35・0%、60代28・0%、50代23・7%、40代30・3%、30代14・8%、18歳~20代12・5%だった。

 一方、自民の派閥パーティー収入不記載事件を巡り、不記載があった候補者を非公認などとして衆院選に臨んだことで「政治とカネの問題」にけじめがついたかを尋ねたところ、「ついていない」が85・5%、「ついた」は10・6%だった。

 非公認で当選した議員らが自民会派入りすることについては「自民会派入りは適切ではない」が52・0%、「すぐに会派入りしても問題ない」は13・2%にとどまった。

 再発防止に必要な政治改革を2つ聞いたところ、「政策活動費の使い道の公開」(40・9%)が最も多く、「政治資金の透明化やデジタル化での公開」(34・0%)、「政治資金をチェックする第三者機関の設置」(28・5%)、「政治資金パーティーの全面禁止」(27・2%)などが続いた。(内藤慎二)

 元稿:産経新聞社 主要ニュース 政治 【政局・世論調査】  2024年11月04日  19:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【産経・FNN合同世論調査】:与野党連携は「政策ごと」65%支持 国民民主への期待感浮き彫り

2024-11-05 00:15:40 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【産経・FNN合同世論調査】:与野党連携は「政策ごと」65%支持 国民民主への期待感浮き彫り

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経・FNN合同世論調査】:与野党連携は「政策ごと」65%支持 国民民主への期待感浮き彫り 

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、与党との連携の可否を政策ごとに決める国民民主党の方針を支持する回答が65・1%を占め、「新しい意思決定の仕組み」(玉木雄一郎代表)に対する期待感が浮き彫りになった。年収が103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」の解消などを巡り、与党との交渉で具体的な政策推進につなげられるかが焦点となる。

国民民主党の玉木雄一郎代表=10月29日、国会内(春名中撮影)

 国民民主は、自民、公明各党との間で、「103万円の壁」引き上げなどの案件ごとに政策協議を行う方針を確認している。11日には石破茂首相(自民総裁)と玉木氏が党首会談に臨む方向だ。

 国民民主が主張する「103万円の壁」の引き上げを巡り、世論調査では「引き上げるべきだ」との回答が77・2%に達した。

 玉木氏は3日放送のBSテレ東番組で、引き上げは「有権者との約束だ」と述べ、自民が応じない場合は政権運営に協力しない姿勢を示している。「壁」が解消されなければ「国民民主に期待した人にとってもゼロ回答だ」とも指摘した。与党への牽制(けんせい)を重ねる玉木氏にとって、世論の賛同は追い風といえそうだ。

 期待感は政党支持率にも表れている。10月5、6両日の前回調査で1・3%だった国民民主の支持率は、8・8ポイント上昇して10・1%となった。

 今回の調査では、他の野党も前回より支持率を伸ばす傾向がみられたが、6・4ポイント増(13・7%)の立憲民主党、1・4ポイント増(3・5%)の共産党、1.3ポイント増(5・3%)の日本維新の会などと比較して、国民民主の上昇幅の大きさは際立っている。

 元稿:産経新聞社 主要ニュース 政治 【政局・世論調査】  2024年11月04日  18:47:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする