【主張①・12.20】:北九州事件逮捕 動機追及し防犯へ共有を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.20】:北九州事件逮捕 動機追及し防犯へ共有を
容疑者は近くにいた。北九州市小倉南区のマクドナルド店舗で中学3年の男女2人が刃物で刺されて死傷した事件で、福岡県警は近所に住む43歳の男を逮捕した。まずは男子中学生に対する殺人未遂容疑を適用した。
中学生2人が殺傷される事件のあったマクドナルドの店舗=北九州市小倉南区
人々が憩うファストフード店という身近な日常空間での凶行だ。容疑者は凶器を持ったまま逃走し、一刻も早い検挙が望まれていた。事件発生から5日後の逮捕となった。
車での目撃情報から容疑者が浮上し、防犯カメラ映像の解析から足取りを追う「リレー捜査」で逮捕につなげた。容疑者は犯行を認めているという。
問題は動機の解明だ。
この事件が地域に与えた影響は甚大だった。事件2日後には、北九州市の市立小中高校などで4千人超、3日後も2千人超が登校見合わせを余儀なくされた。刃物を持つ容疑者が付近を徘徊(はいかい)している可能性もあり、地域住民は不要不急の外出を控える非常事態に陥っていた。その恐怖は察するに余りある。
子供が殺傷される事件はとりわけ衝撃が大きい。容疑者はなぜこのような凶行を企図し、なぜマクドナルド店舗を現場に選び、なぜ中学生を狙ったのか。類似犯罪を防ぐためにも、厳しく追及し、細大もらさず供述させなければいけない。
捜査・裁判による事実関係の解明は、犯行を防ぐための情報・知見となる。警察、検察は容疑者を完全に自供させ、その情報を社会に共有すべきだ。それが地域、街の犯罪耐性を強めることにつながる。きわめて不幸な事件だが、この犠牲を無駄にすまい。二度とこのような凶行を許してはならない。
闇バイト強盗などの影響で体感治安は悪化している。これ以上の社会不安を防ぐ意味でも、北九州事件の犯人逮捕が長引かなかったのは良かった。
全国では凶悪事件の発生が相次ぐ。18日の白昼には神戸市の三宮駅で70代女性が49歳の女からいきなり包丁で背中などを刺されて負傷し、同日夜には千葉県柏市で住宅8棟が焼ける火災が発生し、近くの50代夫婦が刺され殺害されるという不可解な事件が起きた。
慌ただしい年の瀬の凶行は社会不安をより強める。警察の速やかな検挙を望むと同時に、地域・社会も防犯力を高める方策を検討する必要がある。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。