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【社説・12.23】:【仮装身分捜査】:闇バイト根絶の実現を

2024-12-24 05:05:40 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【社説・12.23】:【仮装身分捜査】:闇バイト根絶の実現を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:【仮装身分捜査】:闇バイト根絶の実現を

 交流サイト(SNS)を通じて犯罪の実行役を募る闇バイトが絡んだ事件が後を絶たない。国民の体感治安が悪化しているだけでなく、若者らが都合よく使われ凶悪犯罪に加担させられている。対策を急がなければならない。
 政府は闇バイト問題の緊急対策をまとめた。柱は捜査員が身分を偽り犯人に接触し摘発する「仮装身分捜査」の導入だ。来年早期の実施を目指す。
 手口は巧妙化し、従来の捜査方法では対応しきれない側面がある。新たな手法に期待がかかる一方、適用範囲の拡大などの懸念も指摘される。捜査当局は慎重に運用し、根絶につなげる必要がある。
 一連の事件は、SNSなどで緩くつながる「匿名・流動型犯罪グループ(匿流(とくりゅう))」による犯行とみられている。SNS上に求人情報を投稿し、応募者に身分証などの個人情報を送らせ、脅迫して犯行に加担させるケースが目立つ。指示役や首謀者は姿を見せず、連絡に秘匿性の高い通信アプリを使うため、実態をつかみにくい。
 仮装身分捜査は、捜査員が闇バイトに応募し、犯人側に架空の身分証などを提示。身分を偽装して接触し、摘発につなげることを想定している。被害の発生防止のほか、犯行への抑止効果も期待される。
 似た捜査手法に、捜査員が身分を隠して犯罪を誘発し摘発する「おとり捜査」がある。国内では薬物事件などに限定して用いられてきた。
 一方、特殊詐欺など組織犯罪が深刻化する中、仮装身分捜査も長年検討はされてきた。ただ、身分証の偽造が公文書偽造罪に当たるとの懸念があり実現しなかった経緯がある。
 今回は、「正当な業務による行為は罰しない」との刑法の規定から違法性は退けられると判断された。闇バイト関連の事件のみに適用し、警察庁は運用指針を策定する方針だ。
 しかし、適用範囲の解釈がなし崩し的に拡大しかねないとの指摘がある。海外でも米国やドイツなどで導入されているが、安易な拡大は行き過ぎた捜査を生む。乱用を防ぐ仕組みが求められる。
 緊急対策はこのほか、民間の事業者にも協力を求めた。SNS事業者にアカウント開設時の本人確認の厳格化を要請する。違法な求人情報を明確に定義し、削除も促す。
 ただ、指示役が使う秘匿性の高い通信アプリの規制については課題が残る。こうしたアプリは海外事業者が提供している。日本には窓口がなく運営実態も不透明で、指示役特定の障害になっている。
 新たな被害を防ぐには指示役の摘発が不可欠だ。緊急対策では事業者に対する窓口設置の働きかけにとどまった。憲法が保障する通信の秘密に配慮しながら、指示役特定への方策を探る必要がある。
 警察庁によると、11月末までの約1カ月半で各地の警察が闇バイトへの応募者らを対象に保護措置をとった事例は125件だった。犯罪の手前で踏みとどまる流れも一層強めたい。
 
 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月23日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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