【社説・12.20】:【ホンダ・日産】:日本車のあすを占う統合
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.20】:【ホンダ・日産】:日本車のあすを占う統合
日本の「お家芸」といえる自動車産業も、世界的な競争激化に思い切った生き残り策を講じ得なくなったということだろう。
自動車大手のホンダと日産自動車が経営統合に向け、協議を始めたことが分かった。日産と企業連合を組む三菱自動車も合流する見込みだ。
実現すれば、総販売台数は800万台を突破。トヨタ自動車グループ、ドイツのフォルクスワーゲングループに次ぐ世界3位の巨大グループが誕生する。
いま自動車産業は「100年に1度」の変革期にあるといわれる。電気自動車(EV)や自動運転技術が進展し、米国のテスラや中国の比亜迪(BYD)といった新興メーカーが急成長しつつある。
ホンダ、日産の経営統合は、規模の利を生かし、世界の動きに対抗できる技術や製品を開発できるかが鍵となる。日本車のあすを占う戦略といってよいだろう。協議の行方が注目される。
経営統合は、持ち株会社を設立し、両社が傘下に入る形が検討されている。それぞれの企業、ブランドは残しつつ、経営資源を共有化。経営基盤や技術開発の強化を図る狙いがある。
特に日産は販売不振で経営が悪化している。先月発表した2024年9月中間連結決算は、純利益が前年同期比93・5%減の192億円という厳しさで、世界で9千人の人員削減を発表した。
株価も低迷し、台湾の電子機器受託生産大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が買収の動きを見せているとされる。ホンダとの経営統合は海外からの買収を回避する狙いもありそうだ。
そのため日産救済の側面が強く感じられるが、ホンダ側にも事情がある。国内にはトヨタ自動車という巨人がいる以上、生き残りを懸けて手を組む相手といえば、日産しかないのが実情だろう。
両社は今年3月、EVなどの分野で戦略提携の検討を始めると発表。それが日産の経営悪化もあって、経営統合の協議にまで発展したとみられる。
窮余の合従連衡と言えなくもないが、ともに日本の自動車産業をリードしてきた企業である。それぞれ異なる得意分野を持つ。
日産は過去、比較的早い時期にEVを開発した。ホンダはハイブリッド車(HV)市場をけん引してきた実績がある。三菱自動車もプラグインハイブリッド車(PHV)の技術がある。
今後は燃料電池車(FCV)や自動運転技術の競争も一層激しくなりそうだ。企業風土も歴史も異なる両社の統合は予断を許さないが、強みを持ち寄り、相乗効果を発揮できる統合にしなければならない。
一方で、統合によるコスト削減や、エンジン車に比べて部品数が少ないEV車の開発・生産の強化は、部品メーカーなどサプライチェーン(供給網)への影響が大きい。
両社には社会的な責任も十分踏まえた協議が求められる。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月20日 05:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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