《社説②・12.23》:梅毒が県内最多 予防と啓発 工夫をもっと
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.23》:梅毒が県内最多 予防と啓発 工夫をもっと
性感染症「梅毒」の今年の長野県内の患者報告数が、11月下旬の速報値で81人となり、現在の調査方法になった1999年以降で最も多くなった。
最多更新は3年連続となる。感染の拡大に歯止めがかかっていない。深刻な事態である。
梅毒は早期の感染に気づきにくい上、検査をためらう人も少なくない。安心して相談や検査に踏み出せるよう、県は知識の普及と啓発に力を注いでもらいたい。
感染者の内訳は男性60人、女性21人。年代別では男性は50代が最多で20代、40代と続く。女性が20代が最多で、次が30代だ。
全国でも急拡大している。感染者数は2011年ごろから増加傾向となり、22、23年は年間1万人を超えた。今年も速報値で、既に1万2千人を超えた。年代別では男性は20~50代、女性は20代が際だって増えている。若い世代に広がっている点が気にかかる。
梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が引き起こす。性行為により口や性器などの粘膜、皮膚から感染し、キスでもうつることがある。つまり日常で性的接触があれば誰もがかかる可能性がある。
感染すると3週間ほどの潜伏期間を経て陰部や口腔(こうくう)内にしこりができたり、リンパ節が腫れたりする。この段階で検査を受けるかどうかがその後の鍵を握る。
陽性と診断されても、早期に適切な治療を受ければ完治も望める。感染拡大も防げる。
悩ましいのは治療をせずとも自然に症状が消えることがあり、無症状の人もいることだ。病原体が消えたわけではない。3カ月以上たつと病原体は全身に回り、赤い発疹疹などの症状が出る。やがて心臓や血管、脳などの臓器に病変が生じ、死に至ることもある。
特に気をつけたいのが、妊娠中の女性だ。感染すると胎盤を通じて胎児にうつす恐れがある。流産や死産、さらには赤ちゃんが梅毒にかかった状態で生まれる「先天梅毒」になるリスクが高まる。
国立感染症研究所のまとめでは昨年、先天梅毒の子どもが急増し、1年間で37人に上った。妊婦健診など早めの検査と治療により、母子の健康を守りたい。
県内の保健所では梅毒の検査を匿名、無料で受けられる。これは広く知られているだろうか。
福岡県は昨年度、若年層向けに、人気漫画の主人公が匿名、無料検査を紹介する予防啓発動画を独自に制作しSNSに配信した。こうした取り組みも参考に、長野県も情報発信を強化してほしい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月23日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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