《社説①・12.22》:太陽光パネルの再利用 実効性担保できる制度に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.22》:太陽光パネルの再利用 実効性担保できる制度に
再生可能エネルギーの拡大は重要である。ただ、不要になった設備が環境破壊を招かぬよう、実効性ある対策を講じることが欠かせない。
政府が、使用済み太陽光パネルのリサイクルを義務づける制度を導入する方針を打ち出した。回収したパネルから、ガラスや金属などを取り出し、新たな製品の原材料に使う。来年の通常国会に関連法案を提出する。
太陽光発電は、東京電力福島第1原発事故後に急速に普及した。再生エネで生み出した電気を大手電力が固定価格で買い取る制度(FIT)が2012年に始まったためだ。
メガソーラーが各地に設置され、住宅での活用も広がった。電源構成に占める太陽光の割合は11年度には0・4%だったが、22年度は9・2%に急増した。
浮上したのが廃棄物の問題だ。
パネルの耐用年数は20~30年とされる。発生するごみは30年代半ばから急増し、最大で年約50万トンになる。その量はリサイクルが義務化されているエアコンやテレビなどの家電と同程度という。
これまでに生じたごみの多くは埋め立て処理されている。今後さらに廃棄量が増えれば、処分場の容量が足りなくなる。
課題は山積している。
日本全体のリサイクル処理能力は年7万トン程度にとどまっている。補助金などで施設を拡充していくことが求められる。
リサイクル費用は、製造業者や輸入業者が負担する。過剰に製品価格へ転嫁されないよう、国はコスト低減に向けて調整力を発揮してほしい。回収物の再利用を促す仕組みも整えなければならない。
国が、脱炭素社会の実現を掲げるなか、再生エネがさらに広がることは確実だ。東京都は来年度から新築住宅への太陽光パネル設置を義務づける。
メガソーラーは、建設用地の森林伐採や景観悪化などの問題を起こしている。たとえ地球温暖化対策に貢献しても、社会の重荷になっては市民の理解は得られまい。
資源の乏しい日本にとって、循環型社会の構築は急務だ。脱炭素の取り組みを持続可能にするエネルギー政策を練り上げていく必要がある。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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