《余録・12.23》:言い得て妙とは、このことか…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.23》:言い得て妙とは、このことか…
言い得て妙とは、このことか。「魂柱」と呼ばれる一本の棒が弦楽器の内部にある。表板と裏板をつなぎ、音色や響きを豊かにする。バイオリンならば直径約6ミリ、長さ約5センチ。どの楽器にも先人の知恵と技が施されている
▲多数の楽器が登場するのが交響曲だ。コンサート会場には、縁もゆかりもなく、職業や年齢などがばらばらな聴衆が集う。同じタイミングで心を震わせ、ときに嘆息する
▲この光景を、音楽書専門の編集者で桜美林大講師の木村元さん(59)は「社会的属性が脱ぎ捨てられる場」と表現する。ライブが、理性を超えた本来の感性を呼び起こすのだろう
▲各地でベートーベンの交響曲「第九」が演奏されている。構想から約30年間、難聴などの辛苦を経た末の傑作である。混声合唱が付き、演奏時間は約70分と長い。そんな異形の曲が今年、世界初演から200年を迎え、日本では年末の風物詩に定着した
▲曲に込められたメッセージは「自由・平等・博愛」という。ベルリンの壁が崩壊した1989年の12月25日には、東西ドイツの音楽家らによる演奏会が行われた。指揮した巨匠、バーンスタインは第4楽章で歌われる「喜び」という単語を「自由」に変更し、冷戦の終結と一体感を演出した
▲あれから35年。国際社会に広がったのは分断だった。歌詞には、こんな言葉もある。「時流が強く切り離したものを 君の不思議な力は再び結び合わせ すべての人々は兄弟となる」。そんな指導者の出現を祈りたくなる年の瀬だ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年12月23日 02:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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