【社説①・12.05】:韓国「戒厳令」 強権が招いた混乱を憂慮する
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.05】:韓国「戒厳令」 強権が招いた混乱を憂慮する
韓国の尹錫悦大統領は国政の停滞を「戒厳令」という強権手法で打破しようとしたのだろうが、かえって自らを窮地に追い込む結果となった。
韓国の内政が大混乱に陥れば、日韓関係はじめ東アジアの安全保障環境に悪影響を及ぼすのは必至だ。事態を憂慮する。
尹大統領は3日夜、突然、国会を含む一切の政治活動を禁止する非常戒厳を宣言した。
国会で多数を占める左派系の野党勢力が政府高官の 弾劾 訴追案の提出などを連発し、国政をまひさせたことを「北朝鮮に従う反国家勢力」の行動だとみなし、自由憲法秩序を守るためと強調した。
非常戒厳の宣言は、1979年に当時の朴正熙大統領が暗殺された時に発令されて以来となる。87年の民主化以降では初めてだ。
だが、国会が非常戒厳の解除を求める決議案を可決したため、尹氏は宣言から約6時間後に解除を発表した。国会には一時、軍隊が入り、抗議する市民が周辺に集まるなど情勢が緊迫した。激しい衝突に至らなかったのは幸いだ。
北朝鮮の強権体制を非難し、自由秩序を守ると言いながら、国会に軍を入れるなど強権をふるったのでは、本末転倒である。
野党は、非常戒厳の宣言は「憲法違反だ」と主張し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。
可決には全300議員のうち3分の2以上の賛成が必要だ。与党は108議席と、3分の1以上を占めるが、造反者の数次第では可決され、憲法裁判所が 罷免 の是非を判断することになる。
韓国政治の混迷が、日韓関係に与える影響を懸念する。尹氏は就任以降、一貫して対日関係の改善を推進してきた。
懸案だった元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題を巡り、韓国政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う解決策を示し、日韓関係を正常化させた。岸田前首相との間で、互いの国を定期的に訪問するシャトル外交も復活した。
尹氏の決断は高く評価されなければならないが、韓国内では野党を中心に「日本に譲歩しすぎだ」との批判が根強い。
尹氏の任期はあと2年半弱で、今回の騒動でさらに求心力を失えば、日本との協力や、日米韓による連携にも支障が及ぶ。
北朝鮮は核・ミサイル開発を進め、ロシアに派兵してウクライナ侵略にも加担している。韓国の混乱の長期化は、北朝鮮を利するだけだ。つけいる隙を与えないよう、事態の早期収拾を期待する。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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