【社説②・12.05】:プラごみ条約 削減対策で合意あきらめるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.05】:プラごみ条約 削減対策で合意あきらめるな
自然界では分解されないプラスチックごみが国境を越えて広がり、深刻な環境被害をもたらしている。国際社会は立場の違いを克服し、具体的な削減対策で合意すべきだ。
プラスチックごみによる汚染を防ぐ国際条約の策定に向けた政府間交渉委員会が、韓国で開かれた。だが、参加国の意見が対立して合意は見送られた。来年以降に会合を再開し、協議を続ける。
国連は2022年に条約策定に関する議論を開始し、5回目となる今回の会合で内容を固める予定だった。期限内に合意に至らなかったのは残念だ。対策がさらに遅れることが懸念される。
環境意識の高い欧州や、大量のごみが漂着している 島嶼 国は、プラスチック製品の生産そのものを規制することを提案している。
これに対し、プラスチックの原料となる石油を生産するロシアやサウジアラビアなどは、経済的な打撃につながるとして、生産規制条項を条約に盛り込むことに強く反対している。
今回の会合でも双方の主張の溝は埋まらず、今後も議論が難航することは避けられない。
安価で丈夫なプラスチックは、包装や自動車部品など多くの分野で利用が増えている。リサイクルなど適切な処理が行われずに廃棄されるプラごみは、年間2200万トンに上り、一部は川や海に流れ込んで世界中に広がっている。
海中で分解されなかったプラスチックが、紫外線や波で細かく砕かれ、「マイクロプラスチック」となって海を漂い、魚などに取り込まれている。人体や生態系に悪影響を与える恐れもある。
プラ製品は、生産や焼却の過程で二酸化炭素を排出する。放置すれば地球温暖化防止にも逆行する。一方で、海岸に大量のプラごみが漂着する島嶼国などを除けば、被害を感じにくく、危機感が共有されているとは言い難い。
しかも、1人当たりの使い捨てプラごみ排出量が世界最多の米国では、来年1月にトランプ政権が発足する。1期目に温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱したように、プラごみでも消極的な姿勢をとる可能性がある。
今後の国際交渉では、欧州に加え、日本も議論を主導する役割を担うべきではないか。
理化学研究所などの研究チームは、海水中で自然に分解される新たなプラスチックを開発した。技術革新でプラごみ問題の根本的な解決に貢献する道を探っていくことも重要になるだろう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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