【金口木舌】:時代の空気
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:時代の空気
「法廷は天候に左右されないが、時代の空気には左右される」。映画「ビリーブ 未来への大逆転」に出てくるせりふだ。9月に他界した米国の最高裁判事ルース・ギンズバーグ氏(享年87)の半生を描いた作品
▼1970年代、ギンズバーグ氏が勝ち取った裁判に、母親を介護する男性が未婚を理由に介護費用の税金の控除が受けられないのはおかしいという訴えがある。当時、控除を受けられるのは女性と既婚男性のみだった
▼「介護は女性が担うもの」という性別役割分業を固定化する法律は、男性にも不利益を与えていることを認めさせた。生涯を通して全ての人の権利を擁護・推進した
▼日本にも似た事例がある。婚姻歴のないシングルマザーに、これまで適用されていなかった税金の控除が本年度から認められることになった。当事者団体の根強い要請が国会議員を動かし、画期的な税制改正となった
▼離婚・死別の母子世帯と異なり控除が適用されない未婚の場合、保育料や公営住宅の家賃の算定で高くなり、不利益があった。法制定時に比べ、時代の空気の変化を議員が理解したことが大きい
▼「真の変化は一歩ずつもたらされる」とは、ギンズバーグ氏の言葉。人の考えや価値観は急に変えることはできないが、時代の空気をつくるのは私たち。どのような空気にするかは私たちの意識にかかっている。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2020年12月16日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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