路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【金口木舌】:未来を着ている

2020-12-31 06:01:00 | 【社会保障施策・年金(国民、老齢、共済、障害)・医療、介護保険・生活保護・

【金口木舌】:未来を着ている

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌】:未来を着ている 

 「制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている」。歌人の俵万智さんが息子の中学入学時に詠んだ一首。子どもの可能性は無限大。温かい気持ちになる

 ▼子どもが初めて制服に袖を通すとき、成長を実感する親は多いだろう。年が明けると入学シーズンがやってくる。入学費用のかさむ時期でもある。子の成長は喜ばしいが、ランドセルや制服の出費に頭を抱える世帯は少なくないのでは
 ▼当方も2月ごろ、子どもの中学入学を控え制服、教材費を合わせ約6万円の出費があり苦心した。複数の子の入学が重なるならなおさらだ
 ▼新型コロナウイルス拡大による、ひとり親世帯への影響を調べた労働政策研究・研修機構の調査で、年末に暮らし向きが「苦しい」と回答したひとり親が計60・8%。預貯金が「一切ない」は23%に上った。沖縄はワーキングプア率も全国比で突出して多い
 ▼入学費用の捻出が困難な世帯が増えそうだ。手だてはある。市町村の母子寡婦福祉会は寄付を募り、ランドセル購入代に充てる事業を実施している。不要になった制服を集めて無料配布する民間団体もある
 ▼俵さんは、冒頭の短歌について子どもたちの「『未来サイズ』が大きくたっぷりしたものであることを、祈らずはいられない」と記す。子どもが健やかに育つ社会であってほしい。子どもたちを支える手は多いほどいい。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2020年12月26日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【自民党】:議員年金の復活検討、「特権」に世論反発も

2020-12-31 05:06:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【自民党】:議員年金の復活検討、「特権」に世論反発も

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【自民党】:議員年金の復活検討、「特権」に世論反発も 

 自民党が2006年に廃止された国会議員互助年金と、11年廃止の地方議員年金の復活に向けた検討に入った。引退後の生活を保障し、なり手不足などを解消するのが狙い。しかし、受給資格を得るまでの期間の短さや、多額の公費負担から「議員特権」と批判されて廃止した経緯があり、世論の反発も予想される。

議員年金の復活検討 自民党 「特権」に世論反発も

 二階俊博幹事長が20年9月の菅政権発足直後、党幹部に制度復活の検討を指示。新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、党幹部は「コロナが収束すれば検討を本格的に進めていく」と話す。21年秋までにある衆院選を見据えて、地方議会からの要望が強い地方議員年金を優先させ世論の反応を見極める案も浮上する。 

 議員年金は引退後の所得保障を目的とし、国会議員が1958年、地方議員が61年に制度創設。国会議員の場合、保険料は年126万6千円で10年間支払えば、65歳から年412万円が支給され、在職期間が1年増えるごとに年8万2400円増額されるという仕組みだった。しかし、公的年金に比べて受給資格を得る期間が短いことや、7割に上る公費の支出が疑問視され、06年に廃止された。

 地方議員年金も同様の指摘があったほか、市町村合併で保険料を払う議員が減り財政破綻が見込まれたため、11年に廃止した。

 兼職・兼業が禁止される議員は国民年金しか入れない。引退後の生活が安定しないとして各地方議会が議員の厚生年金加入を可能とする法整備を求めている。

 自民党は議員のなり手不足に対応するため、15年に法整備を検討する作業部会を設置。法案を作成したが、党内若手らの反発で18年7月に国会提出を断念した。党内では現在も「議員とはいえ老後の身分保障は必要」(参院若手)、「公費負担が多すぎて構造として成り立たない」(閣僚経験者)と賛否両論がある。

 成蹊大の高安健将教授(比較政治学)は、兼業・兼職禁止の緩和など、なり手の裾野を広げるための改革と合わせた議論の必要性を強調。その上で「一般の公的年金の給付水準や自己負担の割合を念頭に、あり方を考えるべきだ」と指摘している。(竹中達哉)

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・自民党・国会議員の議員年金復活】  2020年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【自民党】:特権とならない制度を 議員年金復活検討

2020-12-31 05:06:40 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【自民党】:特権とならない制度を 議員年金復活検討

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【自民党】:特権とならない制度を 議員年金復活検討 

 <解説>議員年金の復活に向けた自民党の動きは、コロナ禍で経済的に苦しむ国民が多い中、世論の理解を得るのは難しい。検討を進めるならば、国会議員の新たな「特権」とならないための制度設計と説明責任が欠かせない。

 政策研究大学院大学の増山幹高教授(政治学)は「国民からは議員が特権的な地位にあり、手当や政務活動費などが不明朗な形で使われていると思われている。議員活動全般の収支の透明化と合わせた議論が必要だ」と指摘する。

 特に国会議員の待遇については、領収書不要で1人当たり年1200万円支給され「第2の給料」と呼ばれる文書通信交通滞在費や、都心の一等地ながら格安家賃の議員宿舎などに疑問の声が上がる。

 これらの問題を放置したまま、いったん廃止した年金を復活させようとすれば、「お手盛りだ」との批判は免れない。

 一方で、地方議員のなり手不足は深刻化し、定数割れの地方議員選挙も多い。兼業・兼職禁止の緩和や妊娠・出産前後の女性議員の働き方など早急に検討すべき課題は多い。誰もが立候補できる環境がなければ、民主主義の根幹が揺らぐ。

 金銭的な問題や不安のために意欲ある人が政治の舞台から排除されてはならない。

 「特権」と言われない安定的な生活保障をどう構築するか。政治側には慎重な議論と丁寧な説明が不可欠であり、自分たちの「代表」として議員を送り出す有権者側も動向を注視する必要がある。(竹中達哉)

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・自民党・国会議員の議員年金復活】  2020年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【株価】:コロナで翻弄の1年 感染拡大の春急落→年末終値 歴代3位に

2020-12-31 05:06:30 | 【金融・金融庁・日銀・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【株価】:コロナで翻弄の1年 感染拡大の春急落→年末終値 歴代3位に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【株価】:コロナで翻弄の1年 感染拡大の春急落→年末終値 歴代3位に 

 30日に最後の取引を終えた2020年の東京株式市場は、新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された。景気後退の不安から春先に株価が急落したが、各国の金融・財政政策やワクチン開発の進展によって反転。コロナ前を大きく上回る水準に上昇し、29日には日経平均株価が1990年以来30年ぶりの高値を記録した。年間の値幅(高値と安値の差)も30年ぶりに1万円を超えるなど、激動の展開となった。東京証券取引所の大納会で鐘を打つマネックス証券の清明祐子社長(壇上中央)=30日午後、東京都中央区(代表撮影)

 30日の日経平均の終値は前日比123円98銭安の2万7444円17銭。前日に大きく上げたため利益を確定させる売りが多かったが、年末としてはバブル経済で史上最高値をつけた1989年以来31年ぶりの高値で、歴代3位だった。

 今年は感染拡大の深刻化で人やモノの動きが止まった2、3月に日経平均が約7300円下落。3月19日には1万6552円と4年ぶりの安値を付けた。大手証券の関係者は「売りが売りを呼ぶパニック的な状況だった」と振り返る。

 しかしその後は大規模な金融緩和や財政出動により資金が市場に流れ込み、V字回復。9月にコロナ前の水準に戻った。10月には東京証券取引所のシステム故障で終日取引停止という前代未聞の事態が起きたが、市況は堅調を保った。米大統領選で懸念されたほどの混乱が無かったことやワクチン開発の進展、米国の大規模な追加経済対策などを好材料に、上昇を続けた。

 日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)は30日に東証で開かれた大納会で「コロナに振り回されたが、1年を通してみると非常に堅調な相場展開だった」と振り返った。感染拡大防止のため著名人のゲストを招かず、一般観覧も中止した。

 来年も株価上昇が続くとの見方は多い。楽天証券の窪田真之氏は「ワクチン供給により世界経済が正常化に向かうことが想定される」とし、秋ごろに日経平均が3万円に達するとみる。一方で「コロナ変異種への不安が株価の重しとなる可能性もある」と指摘する。

 また、市場全体では上昇基調だが、コロナ禍で業種や企業によって業績が二極化している。需要が増えたIT関連が好調な一方、旅行や航空関連は低迷する。ワクチン供給による景気回復が幅広く浸透するには一定の時間がかかりそうだ。実体経済と株価の乖離(かいり)への警戒感も広がりつつあり、先行きはなお見通しにくい。(権藤泉)

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 経済 【金融・株式】  2020年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説①】:コロナ下の入試 感染を防ぎ実力発揮を

2020-12-31 05:05:55 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①】:コロナ下の入試 感染を防ぎ実力発揮を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:コロナ下の入試 感染を防ぎ実力発揮を 

 大学の一般入試の幕開けとなる大学入学共通テストまで、残り半月に迫った。全国の受験生53万人余が出願している。

 今回が初の実施となり、出題の形式や内容が新しくなった。しかも新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、追試験の日程や方法が確定するまで時間を要した。

 コロナの感染拡大は今も歯止めが掛からず、収束は見通せない。感染力が強まったとされる変異種が出現したことも気がかりだ。

 各大学や大学入試センターは感染対策を徹底し、試験を円滑に進める責務がある。不測の事態が生じた場合でも、受験生が不利益を被らない対応を求めたい。

 受験生は大きな不安を抱えながら机に向かっていることだろう。本番までの日々は体調管理に気を配り、実力を発揮してほしい。

 共通テストは来年1月16、17日に「第1日程」、同30、31日に学習遅れが生じた現役生向けの「第2日程」を実施する。

 出願者のほぼ全員が前者を選んだが、コロナに感染した人は後者の第2日程を受験する。第2を受験できなかった場合は、2月中旬に特例追試がある。個別試験でも多くの大学が追試を設けた。

 仕組みは例年に増して複雑だ。各大学や入試センターはきめ細かく情報提供し、安心して受験できる態勢を整える必要がある。

 試験会場では「3密」の回避や検温など、入念な感染防止策が欠かせないのは言うまでもない。

 共通テストは、従来の大学入試センター試験よりも思考力や判断力、表現力に重きを置く。志願者は対応に追われていよう。

 それに加えて、コロナ禍が志望校選びに影響した。家計の厳しさなどから、受験生の間で志望先の地元・安全志向が広まった。

 受験生を取り巻く環境は一人一人異なっている。高校などでの進路指導では、それぞれの状況を十分に考慮しながら、実力や適性に応じた支援を尽くしてほしい。

 受験の際はマスク着用や手洗い励行といった基本動作を押さえ、感染を防ぐことが肝要だ。インフルエンザは今季、感染者が少ないものの警戒を怠ってはならない。

 共通テストが導入されるまでには、国の制度設計の甘さから混乱が続いた。

 記述式問題の見送りや英語民間試験の活用断念などが相次ぎ、受験生や教育現場は振り回された。

 国はこの失態を踏まえ、実施後に問題点を洗い出し、より良い形に改善する責任を負っている。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月31日  05:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説②】:米FBを提訴 問われるM&Aの実態

2020-12-31 05:05:50 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【社説②】:米FBを提訴 問われるM&Aの実態

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:米FBを提訴 問われるM&Aの実態 

 米連邦取引委員会(FTC)や州当局が今月、交流サイト大手のフェイスブック(FB)を反トラスト法(独占禁止法)違反で連邦地裁に提訴した。

 FBによる写真共有アプリのインスタグラム、通話アプリのワッツアップの買収が交流サイト市場の健全な競争を損なったとして、両事業の分離を求めている。

 GAFAと呼ばれる米巨大IT企業が米当局により独禁法違反で提訴されたのは、10月のグーグルに続いて2社目だ。

 GAFAは企業の合併・買収(M&A)を重ねて成長してきた。訴訟の行方次第では、IT業界全体の大きな転換点となりうる。

 FBは全面的に争う姿勢を示している。詳細な情報公開と実態の解明を求めたい。

 法廷で争われるFBによる買収は2012、14年にそれぞれFTCが承認して行われたものだ。

 FBはこの点を強調し、当局に認められた買収を後でとがめられては、企業活動に大きな支障を来すと主張している。

 米国では承認を得た買収が後に問題視された例は他にもあるが、当局に対する経済界の信頼が揺らぎかねないのも確かだ。

 FTCは、FBによる買収が消費者の不利益につながったことなどを明確に示す必要があろう。

 GAFAによる企業買収は、ここ数年で400社を超える。相次ぐ買収は将来の競合を避けるのが目的ではないか、と批判する声が米国内に高まっている。

 FTCは今回の提訴でFB側にそうした狙いがあったことを示すメールを入手しているという。

 FBは2社の買収ではリスクを負って多額の費用をかけたとして反論している。これまでの案件を含めて、M&Aの目的や実態を明らかにしてもらいたい。

 グーグルは今月も、オンライン広告での競争阻害などを理由に複数の州当局から2回訴えられた。

 膨大なデータを集め、市場や世論形成に強大な影響力を持つようになったGAFAについて、米議会でも法規制の強化が必要との声が主流になりつつある。

 欧州連合(EU)は、GAFAを念頭にした包括的なデジタル規制案を公表した。巨額の制裁金や事業分割も可能にする厳しい内容だ。英仏などは独自のデジタル課税に動いている。

 日本は巨大IT規制の新法を来春までに施行する予定だ。海外の動向を注視し、状況によっては罰則の強化なども検討すべきだ。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【卓上四季】:大みそかの夜

2020-12-31 05:05:45 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【卓上四季】:大みそかの夜

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:大みそかの夜

 「徒然草」第十九段に大みそかの情景がある。「晦日(つごもり)の夜、いたう闇(くら)きに、松どもともして、夜半(よなか)過ぐるまで、人の、門叩(たた)き、走りありきて、何事にかあらん、ことことしくのゝしりて」。続いて訪れる静寂が新年を迎える厳粛さを際立たせる▼春に新年が始まった旧暦では節分の豆まきは大みそかに行われた。古代中国の邪気払いの行事「追儺(ついな)」と習合し追放の対象となった鬼は、旧(ふる)い時間の象徴だった。過去の災いを一掃して新年を迎えたいという人の願いは今も変わらない▼2020年は近年まれにみる災厄に見舞われた。パンデミック(世界的大流行)による犠牲者数の多さに限らない。人の醜さや弱さがもたらした禍もあった▼作家半村良さんの母が東京・蒲田で安旅館を営んでいたころの話だ。寒い大みそかの夜一人の男が現れる。「あのお客さん駅で泣いてたんだよ」。半村さんが告げると母親はつぶやいた。「大変だねえ、みんな」(「大みそかの客」)▼何か事情があるかもと親子は気をもむが、年明けには支払いをきちんと済ませ出て行った。男が泊まった四畳半を掃除しながら半村さんは考える。どんな悲しみを抱え、戦っていたのだろうか▼過去という鬼を退治することは容易ではないが、その苦痛も分け合えば多少は和らぐのではないか。新しい朝に踏み出す一歩はどこへ向かうだろう。そこが温かい場所であればと願う。2020・12・31

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説①】:回顧2020 コロナから命守る政策を

2020-12-31 05:05:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①】:回顧2020 コロナから命守る政策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:回顧2020 コロナから命守る政策を 

 新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄(ほんろう)され、恐怖した1年だった。世界中で8千万人以上が感染し、今までに170万を超える命が奪われている。歴史に深く刻まれるのは間違いない。

 感染防止へ各国は国境を閉じ、都市封鎖も繰り返されている。

 国内では4月に新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が出され、不要不急の外出や飲食店の営業などが自粛を求められた。学校も一斉休校となった。

 人やモノの動きが途絶え、社会は一変した。東京五輪・パラリンピックも1年延期された。経済への影響は大きく、事態は深刻だ。

 来年には国内でワクチン接種が始まるだろうが、行き届くには時間がかかる。しばらくはこれまで同様、感染予防に注意しながらの生活を余儀なくされるだろう。

 孤立を避け、助け合う。そんな日常を根づかせたい。

 政府は国民の生命、財産を守り、生活を支える政策を徹底させなければならない。

 ■政府の姿勢が一因だ

 国内で感染者が初めて確認されたのは1月15日だった。その後、感染は数週間で全国に広がる。

 道内では2月末に全小中学校への休校要請があり、道独自の「緊急事態」も宣言された。

 全国的には安倍晋三前首相がイベントの中止や延期、小中高校に休校を要請し、緊急事態宣言で国民の多くが「巣ごもり」を受け入れた。宣言は7週間続いた。

 にもかかわらず、感染拡大は今や第3波が襲来し、医療体制は旭川などで崩壊の危機を招いた。

 要因の一つは政府のちぐはぐな政策にあろう。菅義偉首相は感染防止を求めつつ、観光などを支援する「Go To」事業を進め、国民に移動を促した。

 有識者による「新型コロナ対応・民間臨時調査会」は、「場当たり的」と指摘した。科学的知見を軽視すれば危ういということだ。

 一方で、自粛要請を強めれば個人の権利の抑圧につながる。芸術やスポーツなどの活動は豊かな生活に欠かせない。公共の利益とのバランスに注意する必要がある。

 医療従事者や感染者などへの差別的な言動が心配だ。感染リスクは誰にもあることを理解したい。

 ■目に余る独り善がり

 コロナ下で「政治とカネ」の問題が相次いだ。忘れてはならない。

 安倍氏の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭の問題のほか、河井克行前法相と妻の案里参院議員の公選法違反事件や、吉川貴盛元農水相の贈収賄疑惑などだ。

 さらに衆院調査局の調べによると、安倍氏は「桜を見る会」問題で事実と異なる国会答弁を少なくとも118回行ったという。

 菅首相は山積する問題の真相解明を進めるべきだ。しかし、その姿勢は不十分と言うしかない。

 日本学術会議の会員候補任命拒否では理由を示していない。立法府軽視も甚だしい。

 権力側の姿勢からは、政権維持には国民への説明はなおざりでいいという独り善がりが透ける。

 民主主義の根幹を揺るがしかねない。歴代最長の安倍前政権を継承した菅首相が疑惑の幕引きを許せば、政治不信は増幅しよう。

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に入った後志管内の寿都町、神恵内村の動きも自分中心ではないだろうか。

 周辺町村の意向は脇に置き、住民の意見の把握も十分ではない。「肌感覚」で強引に進める手法は民主的な手続きとは言い難い。

 ■強権政治が拡大する

 世界でも指導者の言動が社会に不安の種をまき散らした。

 11月の米大統領選は民主党のバイデン氏が勝利を確定したが、トランプ大統領は今も敗北宣言はしていない。

 民主政治の土台である選挙制度をないがしろにし、米国内の分断をいっそう深めた。この事態を引き起こした責任はあまりに重い。

 習近平体制が続く中国の強権姿勢には懸念が強まる。香港に対し6月には国家安全維持法を施行し民主派への締め付けを強めた。

 中国が返還時に50年変えないと約束した「一国二制度」は、すでに有名無実化されている。

 世界中では富の集中が進み、格差が拡大する。不安や不満が募り、社会の安定を揺るがす。

 スウェーデンの調査機関V―Dem独自の調査では、世界の民主主義国は昨年8カ国減り、今世紀初めて非民主主義国が上回った。

 民主主義や自由など従来の価値観が信頼を失い、強権的な政治が広がる現実を憂う。貧困層を直撃するコロナ禍がこの流れを後押しする可能性がある。世界が岐路に立っているように見える。

 人々が安心と豊かさを感じてこそ、平和は保たれる。指導者が目を向けるべきはそこしかない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【卓上四季】:パブリック

2020-12-31 05:05:35 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【卓上四季】:パブリック

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:パブリック

 1998年のある日、司書として働き始めたばかりの図書館職員はミャンマー出身の住民のリクエストを受けた。「ビルマ語の漫画を読みたい」。「多文化社会の社会教育」(明石書店)で紹介されたある公立図書館のお話だ▼職員は全国の図書館に問い合わせたが、見つからない。書店で扱うのは仏典ばかり。入手方法を探る中で働きづめのミャンマー人の境遇を知り、利用機会を設けようと飲食店で夜間図書館を開いたことが転機となる。「お役に立つなら」と寄贈する人の協力の輪が広がった▼公共サービスの在り方を考えさせられる。閲覧や検索、教育と図書館の役割は幅広い。求職情報を提供する国もある。そこはあらゆる住民生活に関わる公共の空間(パブリック)だ▼その空間は誰のためのものか。今夏日本でも公開された映画「パブリック 図書館の奇跡」はそう問いかけた▼大寒波の夜、シェルターに入れない住民たちが寒さをしのごうと図書館に立てこもった。行動を共にし警察と対峙(たいじ)する図書館職員がその理由を答える。「ここには告発しても足りぬ罪がある。ここには涙では表しきれぬ悲しみがある」。スタインベックの「怒りの葡萄(ぶどう)」の一節だ▼パブリックとは、すべての人に開放された空間をいう。コロナ禍で職を失った人がいる。寒空の下行き場のない人がいる。同じ社会に暮らす人の境遇に思いを致す小晦日(つごもり)である。2020・12・30

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年12月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説①】:学術会議改編 任命拒否問題が本筋だ

2020-12-31 05:05:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・暮らしに根差した民芸】

【社説①】:学術会議改編 任命拒否問題が本筋だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:学術会議改編 任命拒否問題が本筋だ 

 政府は年内に一定の方向性を示すとしていた日本学術会議の在り方について、結論を来春以降に先送りした。

 政権支持率が急落する中、会議の改編を強引に進めてさらに批判が高まるのを避けたのだろう。

 しかし政府がなお会議側に、政府の特別機関からの独立を促していることは看過できない。

 先週の両者の協議では、現行形態にこだわらず独立した法人にすることを含めて検討し、来年4月までに改革案を示すよう求めた。

 すでに会議側は、現行形態が国を代表する学術団体の要件を全て満たしていると結論づけている。

 独立性の高い政府機関ゆえに提言や報告に重みが増し、政府に歯止めをかける役割を果たせよう。

 問題の本筋は別にある。学術会議が推薦した候補のうち6人の任命を、菅義偉首相が一方的に拒否したことこそ問われるべきだ。

 会議側は再三説明を求めているが回答はない。改革要求は問題のすり替えだ。任命拒否を撤回させ、真相解明を急がねばならない。

 政府・自民党は学術会議の会員構成にも矛先を向けている。

 現在は人文・社会科学、生命科学、理学・工学の3部各70人だ。

 自民党は、国内の科学者は理系が多く、構成が偏っていると問題視し、政府は先週、会議側に構成比率の再考を求めた。

 任命拒否された6人は人文・社会科学の研究者で、安倍前政権の下で成立した安全保障関連法や「共謀罪」法などに反対してきた。

 改革を求める政権の動きは、国の重要政策や任命拒否を批判する人文・社会科学の研究者たちをけん制する意図が色濃い。

 1983年に旧総理府が作成した国会想定問答では「首相は日本学術会議の職務に対し指揮監督権を持っていない」としていた。

 だが政府は任命拒否後、首相に学術会議の監督権があるとする内部文書を安倍政権下の2018年に作成していたと明らかにした。

 憲法が禁じた集団的自衛権の行使容認や、前例のない検察官の定年延長などと同様、過去の政府見解や、国会論議を通じて積み重ねた法解釈を、恣意(しい)的に変更するものだ。断じて認められない。

 杉田和博官房副長官が今回の任命拒否だけでなく、安倍政権下の2018年の会員人事にも関与しいたことが明らかになった。それを示す公文書もある。

 杉田氏を国会に招致し、首相とのやりとりを含め、すべてつまびらかにさせなければならない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月29日  05:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説②】:道開発予算 選択と集中が見えない

2020-12-31 05:05:25 | 【金融・金融庁・日銀・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【社説②】:道開発予算 選択と集中が見えない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:道開発予算 選択と集中が見えない

 

2021年度の北海道開発予算案は5718億円で、20年度当初比で10・5%減となった。

 20年度第3次補正予算案に前倒し計上した分を加えた「15カ月予算」では7758億円となり、20年度の当初と19年度補正を合わせた総額より微増した。

 事業分野別に見ると、前年度と予算規模はほぼ変わらない。道路や河川、農業基盤整備など、各分野の事業費維持を前提にしているためだ。

 予算編成があまりに硬直化していないか。社会情勢の変化を踏まえ、新たな事業を速やかに行うことが大切だ。今は防災やコロナ関連事業で対策が急務と言える。事業の選択と集中が欠かせない。

 開発局は、地域の実情を把握するためには道や市町村と普段から十分な協議を行うことが重要だ。前例踏襲型の予算編成を脱する発想の転換が不可欠である。

 日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震の発生が予測される。開発予算では、津波の予想浸水域を回避する高規格幹線道路の整備推進を盛り込むが、従来の道路整備計画にとどまっている。不十分だ。

 21年度から国土強靱(きょうじん)化5カ年計画が始まる。地域住民の生命を守るために、高台への避難路やタワーの整備を集中して行うことも検討してよいだろう。

 コロナ禍での食と観光対策も、生産基盤の整備や観光地への交通アクセス改善など、既存事業を継承した項目が並ぶ。真摯(しんし)に地域の意見を聞いて、分野別の予算枠にとらわれない対応を望みたい。

 観光や地域振興策を考える場合、公共交通網の整備を一体で検討する視点が必要になる。道路と空港、港湾、鉄道の結び付きが、人の往来や物流を支えている。

 しかし、開発予算には慣例として鉄道関連事業が含まれていない。国がJR北海道に21年度から3年間で総額1302億円の支援を行うのも開発予算とは別枠だ。

 JRは赤字路線の廃止を進めている。開発予算の枠組みで論議をすれば、地域の交通網を守る方策を練り上げることも可能になろう。鉄道関連事業の盛り込みを検討してもよいのではないか。

 来年は、省庁再編で北海道開発庁が国土交通省に統合されてから20年を迎える。意識改革を求められたが、今もなお、公共事業推進型を抜け出せていない。

 観光立国を目指す北海道がコロナ禍で疲弊している。窮状を支え、復興に向けて知恵を絞ることのできる組織が求められる。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【卓上四季】:歓喜の歌

2020-12-31 05:05:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【卓上四季】:歓喜の歌

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:歓喜の歌

 若きワーグナーが「あらゆる神秘の中の神秘」を感じたベートーベンの交響曲第九番。音楽だけでは伝わらないが、より遠くへ伝える拡声器(音響に組み込んだ合唱)を用い、聴衆との間の境界を取り払おうとしたのではないか。元ドルトムント大教授のゲック氏は、そう考えた▼詩人シラーの「歓喜に寄せて」に感激し、作曲の宣言から完成まで31年。声楽が加わる最終楽章のスケッチに苦闘の跡が残る。いわゆる「恐怖のファンファーレ」の後に「今日は祝うべき日だ」と記しながら、続く3楽章の反復で「これではない」「より明るいもの」「優しすぎる」と繰り返し、最後に「ああこれだ見つけた歓喜よ」と結んだ▼王政復古の政治的激動の中、音楽家の無力も感じたのだろうか。楽聖は聴衆の助けを借り、すべての人を兄弟へと導く輪唱に思いを託した(「ベートーヴェンの交響曲」音楽之友社)▼日本ではすっかり師走の風物詩となった「第九」演奏会。今年も感染対策を工夫し全国各地で催された。例年以上に心に響いたことだろう▼1824年5月の初演。聴覚を失いながら自らも舞台で指揮棒を振ったベートーベン。促され振り返って見たものは、手やハンカチを振り喝采を送る人々の姿だった▼一人では解決しないこともある。音楽にも限界はあろう。それでも、試練の先に「歓喜」があると信じたいコロナ禍の「第九」である。2020・12・29

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年12月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説①】:夫婦別姓の議論 差別の放置許されない

2020-12-31 05:05:15 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【社説①】:夫婦別姓の議論 差別の放置許されない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:夫婦別姓の議論 差別の放置許されない 

 選択的夫婦別姓制度の導入が見通せない。

 今後5年の女性政策の指針となる第5次男女共同参画基本計画が先週、閣議決定された。そこでの言及は、自民党の保守派によって骨抜きにされた表現となった。

 夫婦が望めばそれぞれ結婚前の姓を名乗れる制度だ。家族の形は多様になっており、選択肢として制度化するのは時代の要請だ。

 なのに自民党は流れに逆らい続けている。夫婦同姓を義務づける日本の民法の規定は差別的だとして、国連の委員会から再三是正勧告を受けている。自民党の行いは差別の放置に等しい。

 自民党は社会の実態を直視し、導入に向け議論を進めるべきだ。

 選択的夫婦別姓制度は、2000年の最初の計画から15年の第4次計画までいずれにも、具体的施策として位置づけられてきた。

 第5次の策定に当たり内閣府は従来の「検討を進める」から、「政府においても必要な対応を進める」と踏み込んだ原案を示した。

 女性の社会進出を踏まえた妥当な方針だ。橋本聖子男女共同参画担当相も導入に意欲的だった。

 しかし、これに伝統的な家族観を重視する自民党保守派が警戒感を強め、強く反発した。

 会合に動員をかけて議論を主導し、選択的夫婦別姓の文言を削除させ、表現を「さらなる検討を進める」に押し戻した。時代錯誤も甚だしい。やすやすと受け入れた党にも失望を禁じ得ない。

 結婚後も働く女性は増えている。姓を変えるのは圧倒的に女性だが、仕事の実績を引き継ぎにくいという不満が聞かれる。

 やむなく事実婚を選べば各種控除が受けられないなどの不利益を被る。現行制度が時代にそぐわなくなっているのは明らかだ。

 保守派は夫婦別姓を認めれば「家族の絆が壊れる」という。

 夫婦同姓を義務づける国は日本以外ないとされるが、諸外国の家族のつながりは弱いのか。説得力を著しく欠く主張だ。

 法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を法相に答申してから24年がたつ。この間、最高裁は現行制度を合憲と判断し、議論を進めるよう国会に促している。

 最近も東京の事実婚夫婦3組の特別抗告審を大法廷に回付し、改めて憲法判断を示す見通しだ。

 政治がこれ以上不作為を続けることは許されない。かつて選択的夫婦別姓に賛同した菅義偉首相もだんまりを決め込むのではなく、リーダーシップを発揮すべきだ。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月28日  06:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説②】:新幹線札幌延伸 要対策土の対応丁寧に

2020-12-31 05:05:10 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【社説②】:新幹線札幌延伸 要対策土の対応丁寧に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:新幹線札幌延伸 要対策土の対応丁寧に 

 2030年度開業予定の北海道新幹線札幌延伸で、政府は21年度予算案に前年度当初より20億円多い950億円を計上した。

 予定区間の80%を占めるトンネル掘削工事が本格化するためだ。

 だが、工事で生じる要対策土(汚染土)を巡る問題が各地で起きている。札樽トンネル(小樽―札幌)では、札幌市内の処分地が住民の反発でなお決まっていない。

 要対策土は鉛やヒ素など健康被害を起こす重金属を含む。不安を感じるのは当然だろう。

 建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は安全に処理するというが、説得材料に欠ける。

 日程ありきで強引に進めれば禍根を残す。説明を尽くし、計画修正にも柔軟に対応すべきだ。

 トンネル工事に伴い、札幌市内では要対策土約110万立方メートルが発生する見込みだ。機構と市は候補地を厚別区厚別町山本、手稲区金山、手稲山口の3カ所とし、手稲山口では事前調査に着手した。

 各地の住民説明会では地下水汚染や農業などへの影響を懸念する声が根強かった。「詳細な説明は事前調査を終えた工法決定後」とする市側の対応にも不満が募る。

 工法決定後では修正は難しい。住宅街の地下を通る区間もある。現段階での市の説明を求めたい。

 気になるのは機構の態度だ。出先部局幹部は報道向け説明会で、21年度に処分地が未定なら「工法や工期の大幅な変更が避けられない」と開業遅れを示唆した。

 札幌市は30年冬季五輪・パラリンピック誘致を目指し、開業前倒しを要望する。市の足元を見透かした圧力ともとれよう。乱暴な発言には住民の不信も増す。

 渡島トンネル(北斗市―渡島管内八雲町)では、要対策土が北斗市内の仮置き場の容量を超え、10月から工事を中断した。再開は来年3月という。計画自体に甘さがなかったか検証が必要だ。

 機構は北陸新幹線敦賀延伸の開業遅れと建設費増の責任を問われ、北村隆志理事長が辞任を表明した。閉鎖体質も問題化し、国は自治体との間で定期的に情報共有するよう機構に指示した。

 道内でも速やかに詳細な情報を提示し、市町村は住民と対話する場を改めて設ける必要がある。道も全体の調整役を担うべきだ。

 新型コロナ禍で鉄道は深刻な不振が続く。8年前の着工時に想定した経済効果も不透明となった。

 要対策土処分は後世にまで影響が及ぶ。住民の納得がゆく結論を丁寧に模索してほしい。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年12月28日  06:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【卓上四季】:国民のせいなのか

2020-12-31 05:05:05 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【卓上四季】:国民のせいなのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:国民のせいなのか

 日本で数十万人の死者を出したスペイン風邪の第1、2波が日本を襲った1918年(大正7年)は波乱の年だった▼寺内正毅内閣がシベリア出兵を行うとの予測からコメなどの物価が高騰し、富山などで米騒動が起きた。新聞社の政権批判は激しく、記事が内乱を暗示したとして大阪朝日新聞を告発した「白虹事件」のような言論弾圧もあった▼寺内首相は「物価騰貴に伴う生活難の多大なる場合に於(お)いては、知らず識(し)らず国民思想の変化を来す」と地方長官らに訓示する。大正デモクラシーの広がりを警戒し、思想統制を強めた▼新型コロナの今年を振り返って思う。社会が不安定で思い通りにならない時、政治指導者は国民に責任転嫁するのか。菅義偉首相は銀座での夜会合出席を「国民の誤解を招くという意味において」反省してみせた。「国民は誤解していない」とネットで批判が広がったのも理解できる▼春には当時の加藤勝信厚労相が、「体温37・5度以上」の目安が受診の基準のように受け取られたことを「われわれから見れば誤解」と釈明した。現場が悪いと言わんばかりだ。医療従事者は悔しい思いをしただろう▼オルツェウスキー著「官僚政治」(後藤新平訳)は、官僚の特徴を「一般人民と隔たって立ち、上から社会を見下ろす」と表した。菅、加藤両氏の言動は、彼らが政治家ではなく、官僚なのかという錯覚を抱かせる。2020・12・28

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年12月28日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする