路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【産経抄・12.31】:大つごもりに救いのない話は似合わない

2024-12-31 05:03:45 | 【金融・金融庁・日銀・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【産経抄・12.31】:大つごもりに救いのない話は似合わない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・12.31】:大つごもりに救いのない話は似合わない 

 今年で五千円札の肖像の役目を終えた明治の文豪、樋口一葉は、24歳の若さでこの世を去った。その直前のいわゆる「奇跡の14カ月」に次々と名作を完成させた。そのひとつが『大つごもり』、大晦日(みそか)の別名である。今井正監督が映画にしており、冬休みに図書館でDVDを見つけた。

樋口一葉(台東区立一葉記念館提供)

 ▼久我美子さんが演じるヒロインのお峰は、貸家を百軒も所有する金持ちの家の女中である。大恩ある伯父が借金を背負い、年を越すためには2円が必要だった。現在なら5万円ほどになる。奥さんに給料の前借を懇願するも拒絶される。大つごもり、切羽詰まったお峰は、硯箱(すずりばこ)の引き出しから2円を盗み出す。露見したら舌をかみ切る覚悟だった。

 ▼10代から母親と妹との3人の暮らしを支えていた一葉は、貧乏の辛(つら)さが身に染みていた。華族や政治家の妻や娘が通う歌塾「萩(はぎ)の舎(や)」にも出入りしていたから、金満家の性癖も知っていた。『樋口一葉』(小野芙紗子著)によると、「萩の舎」で2円が紛失し一葉が疑われる出来事もあったらしい。

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 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2024年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・12.30】:回顧2024 日欧韓で政情が不安定に 専制国家を勢いづかせるな

2024-12-31 05:03:40 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【主張①・12.30】:回顧2024 日欧韓で政情が不安定に 専制国家を勢いづかせるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.30】:回顧2024 日欧韓で政情が不安定に 専制国家を勢いづかせるな

 国際秩序が専制国家の挑戦を受ける中、民主主義を奉じる国々が十分に結束できたとは言い難い1年だった。

 背景に国内の政情不安があったことは否定できない。日本の政治も混迷の度合いを深め、いまなおその状況から脱却できずにいる。

米フロリダ州の集会に妻のメラニアさんと登場し、ポーズをとるトランプ前大統領。大統領選の勝利宣言を行った=11月6日(ロイター)

 反日的な中国、ロシア、北朝鮮に囲まれている日本は、独立と繁栄を守るために抑止力と対処力を強化し、自由で開かれたインド太平洋、国際秩序の担い手として能動的役割を果たさなければならない。

 だが、岸田文雄前首相と石破茂首相は、自民党の旧安倍派を中心とする派閥パーティー収入不記載事件に端を発した政治とカネの問題に振り回された。

 ◆総裁交代も再建進まず

 東京地検特捜部が1月に元衆院議員、池田佳隆被告を逮捕するなど立件を進めていく中、自民は派閥や政治資金の問題に取り組むことを迫られた。

 しかし、信頼回復に至らなかった。8月に岸田氏は「自民が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」と述べ、9月の総裁選への不出馬を表明した。

 総裁選は史上最多の9人が立候補した。政策論争を通じて、党の立て直しは進むとの見方も当初はあった。

 だが、新総裁に選ばれた石破首相は衆院選を巡り、不記載だった前議員の非公認を増やしたり、比例代表との重複立候補を認めなかったりした。政治とカネの問題ばかりが報じられ、最大の争点となり、与党過半数割れの大敗につながった。石破首相に大きな責任がある。

 政権選択選挙の衆院選は、外交安全保障など国家の針路を問う選挙にならなかった。

 衆院選公示の前日である10月14日、中国は台湾を包囲する形で大規模な軍事演習を行った。8月には中国軍機が日本の領空を侵犯し、9月には空母「遼寧」が一時日本の接続水域に入り、ロシア軍機が領空侵犯した。北朝鮮は弾道ミサイルを相次いで発射した。 

 脅威が高まっているにもかかわらず、各党の幹部や候補者から危機認識があまり聞かれなかったのは理解に苦しむ。

 外交安保が十分論じられなかった責任は野党にもある。立憲民主党なども政治とカネの問題に焦点を当てていたからだ。

 9月の立民代表選で新代表に選ばれた野田佳彦元首相は「本気で政権を取りにいく」と語った。だが、そもそも立民には政権担当能力が欠けている。野田氏も従前通り、集団的自衛権の限定行使容認について違憲との考えを維持している。日米同盟を揺るがす危うい姿勢だ。

 衆院選で立民が大幅に議席を伸ばしたのは、自民批判票の受け皿になったからで、立民自体への強い支持とはいえない。

 30年ぶりの少数与党政権は将来の展望を描けずにいる。

 ◆SNSが選挙左右した

 地方選では、SNSを駆使した無所属候補が善戦または当選する現象が起きた。

 7月の東京都知事選で前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が次点となり、11月の兵庫県知事選で斎藤元彦氏が再選したのはその典型だ。有権者の既成政党への忌避感の高まりも影響していよう。 

 政情が不安定化したのは日本だけではない。欧州諸国も激変に見舞われた。フランスでは国民議会(下院)の総選挙で、マクロン大統領の与党連合が議席の3分の1に届かなかった。12月には内閣不信任が決議された。ドイツでは11月にショルツ連立政権が崩壊した。英国では7月の総選挙で与党が大敗し、14年ぶりに政権交代した。

 ロシアが侵略を続けるウクライナへの支援で結束が重要なときに、欧州各国の政治が不安定なままでは対露圧力を弱めることにもなりかねない。

 来年1月20日に米大統領に再登板するトランプ氏が強引な早期停戦を目指しているとみられることも不安材料である。

 米大統領選では社会の分断がさらに深まった。トランプ氏は演説中に銃撃された。もし暗殺されていたら、収拾のつかない大混乱に陥っただろう。

 韓国では尹錫悦大統領が一時戒厳令を宣布する暴挙に出た。大統領弾劾訴追案が可決されるなど混乱が続いている。

 内政だけに気を取られすぎていては、専制国家に乗じられてしまう。日本をはじめとする民主主義の国々はそのことを強く認識せねばならない。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年12月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【産経抄】:「産経抄」35年書き続けた名コラムニスト石井英夫さん逝く

2024-12-31 05:03:35 | 【訃報・告別式・通夜・お別れの会・病死・事故死・災害死・被害による死他】

【産経抄・12.30】:「産経抄」35年書き続けた名コラムニスト石井英夫さん逝く

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・12.30】:「産経抄」35年書き続けた名コラムニスト石井英夫さん逝く

 『産経抄』を35年にわたり執筆した石井英夫さんは、読者からの問い合わせがあると、必ず自分で応対した。執筆中のある日、「今日の産経抄について聞きたい」と読者から卓上に電話がかかってきた。

洒脱かつ鋭い世相分析で知られた石井英夫さん

 ▼「今日、私何を書きましたっけ?」と返す石井さんに、読者は「今日書いたことをもう忘れるのか」。石井さんは苦笑交じりに言ったという。「明日のことを書きながら電話を受けているので、今日までの分をいったん忘れないと前へ進めないんです」

 ▼世の中の全てのニュースは哀歓苦楽を伴う。「忘れる」は、それらの感情を引き受け、筆を執るコラムニストの重責の暗喩ではなかったか。週6日の執筆を重ねること35年、その数は1万本に上る。産経抄を小紙の顔へと育てた石井さんの訃報が届いた。91歳だった。

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 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2024年12月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・12.29】:大統領代行を弾劾 韓国野党は愚挙に走るな

2024-12-31 05:03:25 | 【韓国・在韓米軍・従軍慰安婦問題・強制労働・島根県竹島(韓国名・独島)の領有権】

【主張①・12.29】:大統領代行を弾劾 韓国野党は愚挙に走るな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.29】:大統領代行を弾劾 韓国野党は愚挙に走るな 

 韓国の国会が、大統領権限を代行する韓悳洙首相の弾劾訴追案を可決した。韓氏は職務停止となり、崔相穆経済副首相兼企画財政相が大統領代行を引き継いだ。

 尹錫悦大統領への弾劾訴追から2週間で、韓氏は国政を預かる席を追われたことになる。

 「共に民主党」など韓国野党による今回の弾劾訴追は行き過ぎの観が否めない。

韓悳洙首相の弾劾訴追案の可決ラインを過半数とした禹元植議長(奥)に抗議する与党議員ら(共同)

 国政を麻痺(まひ)させ、国際信用をさらに落としても構わないのか。すでに市場は反応し、ウォン安が進行している。

 民主主義国で政府与党と野党が対立するのはやむを得ないが、国を動揺させないため節度を弁(わきま)えるべきだ。

 それを無視して戒厳令を発した尹大統領が弾劾訴追されたのは当然だ。ただし、野党が弾劾訴追をさらに重ねれば、自身への批判も高まるだろう。尹氏が戒厳令に走った理由の一つに、野党側の閣僚らへの弾劾連発による国政停滞があった。戒厳令という暴挙を招き寄せた反省は野党側にはないようだ。

 韓国の憲法裁判所では尹氏の弾劾審判が始まった。裁判官の定員は9人だが、今は3人が欠員である。大統領弾劾には6人の賛成が必要で、1人でも反対すれば棄却される状況だ。

 野党は国会で裁判官3人の補充案を決めたが、韓氏が任命を留保したため弾劾訴追案を可決した。野党は、後任の崔氏が裁判官任命を認めなければ弾劾訴追案を出す構えという。

 だが、この問題は弾劾訴追よりも話し合いで解決すべき事柄である。

 韓国の大統領は、外交を含む国政の最高責任者であり、軍の最高司令官である。代行であっても極めて重い責任を担う。

 北朝鮮はロシアのウクライナ侵略に加担し、その代価として軍事技術を得て核・ミサイル戦力を強化しようとしている。米国では来年1月20日にトランプ政権が始動する。

 このような時期に、大統領権限保持者の地位が不安定なままで韓国は対応できるのか。北朝鮮などが、軍事挑発や世論工作を仕掛けてくる恐れもある。

 混乱する韓国政治の現状は、日本を含む地域の安全保障も損なう。李氏朝鮮時代の激しい政争だった「党争」を現代に再現させるような真似(まね)はもう控えてもらいたい。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年12月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張②・12.29】:自殺強要「殺人罪」 いじめ犯抑止につなげよ

2024-12-31 05:03:20 | 【学校等の陰惨ないじめ・暴力・体罰・自死・家庭での虐待・不登校・児相】

【主張②・12.29】:自殺強要「殺人罪」 いじめ犯抑止につなげよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.29】:自殺強要「殺人罪」 いじめ犯抑止につなげよ 

 直接手を下していなくても、被害者を精神的に追い込み自殺させた者は殺人の実行行為をしたに等しい。殺人罪に問う。警察、検察の意欲的な立件だ。

 東京都板橋区の踏切で昨年12月、男性が電車にはねられ死亡した事件で、暴力やいじめで男性を精神的に支配し、踏切内に立つよう仕向け、自殺させたとして警視庁が殺人容疑で逮捕した元同僚4人のうち、検察が2人を殺人罪で起訴した。

男性が列車にはねられて死亡した東武東上線の踏切(内田優作撮影)

 手は下さずに「自殺させた」行為が自殺幇助(ほうじょ)罪ではなく殺人罪で起訴されるのは珍しく、踏み込んだ刑事処分だ。同種事件の捜査への影響は大きい。

 男性は1人で踏切に立ち入り、電車にはねられた。外形上は第三者の関与はないが、捜査の過程で、男性が邪魔だとする趣旨のやりとりを4人がSNSで交わし、死亡現場まで車で連れて行っていたことが判明した。警視庁は1年をかけて殺人罪適用へ捜査を詰めていた。

 被害者を精神的に支配し、犯人が企図する犯罪行為を強要する「間接正犯」の立件はハードルが高い。被害者の精神状態が被告たちに支配されていたことを、捜査側が証拠で示せるかが重要なポイントになる。

 間接正犯の適用は既遂の殺人事件ではほとんど例がない。今回は被害者が死亡していることからも、精神状態の立証は特に難しいとみられている。

 自殺強要に殺人罪が適用できるか否か、裁判では激しい論争が繰り広げられるだろう。自殺教唆罪の法定刑は6カ月以上7年以下の懲役または禁錮、殺人罪は死刑または無期もしくは5年以上の懲役だ。適用罪名によって量刑が大きく異なる。

 検察は今回、被害者を踏切まで連行した2人だけに殺人罪を適用した。現場にいなかった残り2人は監禁罪での起訴にとどめ、殺人罪については処分保留とし、捜査を続けるとした。こちらには、男性への執拗(しつよう)ないじめを主導したとみられる元職場のトップがいる。引き続きの徹底捜査がなされるべきだ。

 ただ、捜査機関がこうしたいじめ自殺を殺人罪で訴追した意義は大きい。陰湿ないじめのエスカレーションへの刑事的対処として、国民感情に沿う対応だと評価する。これを、いじめから派生する犯罪の抑止につなげたい。その観点からも裁判の審理が注目される。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年12月29日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【産経抄・12.29】:国家の予算も〝楽にならざり〟

2024-12-31 05:03:15 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【産経抄・12.29】:国家の予算も〝楽にならざり〟

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・12.29】:国家の予算も〝楽にならざり〟

 江戸の昔は日用品の買い物といえば、つけ払いだった。例えば、酒屋で調味料を買うとする。少額の勘定は月末や四半期など、きりのいい日にまとめて清算した。八百屋や魚屋も同じ具合だから、支払いが滞ると結構な額になる。

令和7年度予算案の閣議決定などを受け、記者団の取材に応じる石破茂首相=27日午後、首相官邸(春名中撮影)

 ▼こんな狂歌ががある。<たくはへ(蓄え)もみな月(尽き)はてて一文も/けふはなごしのはらい(払い)だにせず>。半期の支払いに窮した、6月(水無月)末の情景をうたっている。無病息災を願う「夏越(なごし)の祓(はらえ)」に掛け、「勘定は払えない」と。開き直る姿が微苦笑を誘う。

 ▼1年の決算日は大晦日(おおみそか)だった。商家の取り立てはいつもより厳しく、古典落語でおなじみの「払え」「払えぬ」のバトルは暮れの風物詩になった。それも除夜の鐘が鳴るまでのことで、正月はしばし休戦になったという。平和といえば平和である。

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【社説①・12.31】:能登地震1年 住まいの再建へ手厚い支援を

2024-12-31 05:00:55 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【社説①・12.31】:能登地震1年 住まいの再建へ手厚い支援を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.31】:能登地震1年 住まいの再建へ手厚い支援を

 元日に起きた能登半島地震から1年となる。被災地は秋にも豪雨に見舞われ、暮らしの再建が遅れている。国や自治体は復興が着実に進むよう、現地を手厚く支援してほしい。 

 被災地では、崩れ落ちた家屋が今も無残な姿で残されていた。営業を再開した店舗は少なく、人影もまばらだ。新年を迎える華やいだ雰囲気は感じられない。

 9月の豪雨は、地域の再生に急ブレーキをかけた。仮設住宅が泥水につかり、住民らは再び避難を強いられた。最近、室内に入り込んだ泥の除去作業が終わり、ようやく再入居が始まった段階だ。

 倒壊家屋については、自治体が所有者に代わって取り壊す「公費解体」が作業員の不足などで遅れていたが、ここに来て進み始めた。家屋の撤去が進まなければ、復興はおぼつかない。さらにペースを上げて取り組んでもらいたい。

 家を失った住民の悩みは、今後どこで暮らしていくかだ。

 応急的に建てられた仮設住宅は、原則2年しか住めない。元の家があった場所に住宅を再建するには多額の費用がかかる。被災地は高齢者が多く、これから建て直すべきか迷う人も少なくない。

 県外などで避難生活を送る人にとっては、故郷に戻るかどうかも難しい選択になるに違いない。

 地元自治体はこれから、被災者が安価な家賃で入居できる「災害公営住宅」の整備に取りかかる。建設場所や住宅のタイプがまだ決まっていないため、自宅を再建するか、公営住宅に入るか、住民が決めにくい状況にある。

 自治体は、できるだけ早く公営住宅のプランを住民に示す必要がある。自宅の再建を考える人には、公的な支援金や融資制度などもある。自治体は、住民の相談に丁寧に応じる体制を整えるべきだ。

 輪島市は今月、朝市周辺の整備や、輪島塗などの地場産業の再興を盛り込んだ「復興まちづくり計画」案を公表した。街の将来像が見えなければ、住民は前を向くことができない。他の地域も復興の計画作りを急いでほしい。

 復興には長い時間と多くの人手がかかる。国や他の自治体は、現地に引き続き応援職員を派遣し、サポートする必要がある。民間のボランティアも息の長い支援を続けていきたい。

 立て続けに被災した住民のショックは大きい。再び巡ってくる元日に地震の記憶がよみがえり、心身が不安定になることも心配される。医療・福祉の専門人材による住民のケアも欠かせない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・12.31】:ガザ支援の停止 住民を見殺しにするつもりか

2024-12-31 05:00:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【社説②・12.31】:ガザ支援の停止 住民を見殺しにするつもりか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.31】:ガザ支援の停止 住民を見殺しにするつもりか

 パレスチナ自治区ガザで人道支援を行う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動が危機に 瀕 ひん している。

 イスラエル国内での活動を禁じる法律の施行が1月下旬に迫っているためだ。このままでは、すでに飢餓状態にあるガザ住民はイスラエル側からの補給路を断たれ、見殺しにされる。見過ごすわけにはいかない。

 UNRWAはイスラエルに接するガザとヨルダン川西岸などでの食料配給や医療支援などを任務とする。イスラエル軍がガザに侵攻し、病院や学校が標的にされる中でも活動を続けてきた。

 だが、ガザ北部はイスラエル軍に包囲され、2か月以上も食料や水を届けられずにいる。 飢饉 ききん の広がりが懸念される。

 イスラエル国会で10月に成立した法律が施行されれば、UNRWAの活動の重点であるイスラエル経由の支援は継続できなくなる。職員のイスラエル滞在ビザが無効になり、イスラエル当局との接触も禁止される。

 日本はUNRWAと連携してパレスチナ支援を進め、学校の建設や下水道網の整備などの事業を実現してきた。こうした支援も、現地に届かなくなる恐れがある。

 国連総会は今月、UNRWAの活動を全面的に支持し、イスラエルを非難する決議案を日本を含む159か国の賛成で採択した。米国とイスラエルは反対したが、国際世論が人道支援の継続を強く求めていることの表れである。

 UNRWAは国連総会の決議によって設立され、具体的な任務が定められている。その活動を国連加盟国であるイスラエルが一方的に妨害するのは、人道主義に対する挑戦と言わざるを得ない。

 イスラエルの後ろ盾である米国はUNRWAに対し、資金拠出を停止するなど厳しい立場を続けている。こうしたバイデン政権の姿勢が、イスラエルの強気を支えてきたのではないか。

 ガザではすでに多くの女性や子供を含む4万5000人以上が死亡している。イスラエルとイスラム主義組織ハマスに停戦を求める声がかつてなく強まっている。

 まもなく米国ではトランプ氏が大統領に就任する。イスラエル寄りの傾向は鮮明だが、かねて停戦が必要だとも主張してきた。

 イスラエルのネタニヤフ首相は停戦の実現に向けた協議に積極的に取り組むとともに、人道支援の継続に協力すべきだ。まずはUNRWAの活動を禁止する法律の施行を見合わせたらどうか。

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【社説①・12.30】:日中外相会談 懸案解決へ具体策を講じよ

2024-12-31 05:00:45 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説①・12.30】:日中外相会談 懸案解決へ具体策を講じよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.30】:日中外相会談 懸案解決へ具体策を講じよ

 友好ムードを演出するだけで、懸案が何一つ前進しないのでは、日中間の安定的な関係の構築など望めまい。

 いずれの問題も、解決する責任はまず中国にある。早急に具体策を講じるべきだ。

 岩屋外相が訪中し、中国の王毅外相と会談した。約3時間の会談で両外相は、日中双方の利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進を確認したほか、王氏が来年早期に来日し、その際に閣僚級の経済対話を開くことでも一致した。

 会談で王氏は「中日関係が安定すれば、アジアが国際社会で重要な役割を果たせる」と述べた。

 先月には、ペルーでの国際会議に合わせて石破首相と中国の習近平国家主席が初めて会談した。重層的な対話を継続し、日中間の様々な課題を着実に処理していくことが不可欠である。

 だが、懸案は解決に向かうどころか、むしろ悪化している。

 政府は今月、沖縄県の与那国島南方の排他的経済水域(EEZ)内に、中国当局が新たに設置したブイを発見した。ブイには「中国気象局」と表記されていた。

 中国のブイは、昨夏に尖閣沖のEEZ内で、また今年6月には、四国南方にある日本の大陸棚の海域でも見つかっている。日米などの潜水艦の情報収集や、日本周辺の海底ケーブルの調査が狙いではないか、といった見方がある。

 岩屋氏は会談で全てのブイの即時撤去を求めた。これに対し王氏がどう返答したかは、日中双方とも説明していない。そもそも日本政府は、外相会談後まで、新たなブイの存在を公表しなかった。

 日本の海洋権益が脅かされそうになっているのに、日中関係の悪化を懸念して公表をためらっているのだとすれば、ふがいない。

 日本の同意なくEEZ内にブイを設置する行為は、国連海洋法条約に違反している。中国が撤去に応じないのであれば、事前通告をしたうえで日本が撤去することも検討する必要がある。

 岩屋氏は会談で、中国政府による日本産水産物の輸入規制を早期に撤廃するよう改めて求めた。輸入再開の方針は、日中首脳が先月の会談でも確認している。中国政府がいまだに実行していないのは誠実さに欠ける。

 9月に中国・深圳の日本人学校に通う男児が刺殺された事件について、中国政府は今も動機などの説明を拒んでいる。日本人を含め在留外国人の安全は確保している、といった一般論を述べるだけでは、とても信用できない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・12.30】:新NISA1年 貯蓄から投資を確かな流れに

2024-12-31 05:00:40 | 【金融・金融庁・日銀・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【社説②・12.30】:新NISA1年 貯蓄から投資を確かな流れに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.30】:新NISA1年 貯蓄から投資を確かな流れに

 少額投資の運用益を非課税にする「NISA」の制度が大幅に拡充されてから1年となる。国民の安定的な資産形成と経済活性化に向け、着実に定着させていきたい。 

 NISAの口座数は順調に拡大している。9月末で前年比約23%増の約2500万口座に達した。拡充前は60歳以上の高齢者に運用が偏ってきたが、若い世代の口座開設が増えているのが特徴だ。

 30歳代が約17%、20歳代も10%強を占める。40歳代は全体の19%超で最も多く、20~50歳代が3分の2に上るという。

 貯蓄に偏る家計の金融資産を投資に振り向け、経済を活性化することは積年の課題となってきた。だが、バブル経済の崩壊後、株式市場が長く低迷し、国民はリスクを取る投資に及び腰になった。

 今回は、日米の株価がともに史上最高値を更新し、投資への機運が高まったことも追い風になった。幅広い世代における口座数の増加は、家計にも企業にも有益だ。老後の備えとして早くから投資を始める重要性も確認したい。

 日本企業は、海外での工場建設や企業買収など対外直接投資を増やしてきたが、収益の多くは再投資のため海外拠点に留保されている。大企業の業績は高水準にあるが、家計が十分に恩恵を感じられないのはこのためでもある。

 NISAを通じ、企業の利益が家計に還元されていけば、消費の活性化も期待できよう。

 課題は、米国株で運用する投資信託の人気が高く、資金が海外に向かう傾向が強いことだ。海外株に資金が流れることは円安の要因になっているとも指摘される。

 日本企業の内部留保は約600兆円に上る。利益をため込むばかりでなく、設備投資や賃上げに回して成長力を強化し、株式の魅力を高めていく必要がある。

 投資は自己責任でリスクが伴うことも忘れてはならない。

 8月に日経平均株価が暴落した際、資産運用を始めたばかりの人は、投資を継続すべきかどうか迷った人も多いのではないか。

 NISAは長期にわたって少額投資を行い、投資先も分散することでリスクを下げる仕組みだ。官民でそうした点の金融教育を充実させていくことも重要になる。

 投資機運に水を差したのが、東京証券取引所や三菱UFJ銀行、野村証券などで続発した不祥事である。資産運用を委ねる上で、信用が最も大事であるのは論をまたない。金融関係者は襟を正し、職業倫理の向上に努めてほしい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政府】:能動的サイバー防御、国立病院や防衛産業も対象へ調整…2019年に安全保障上の機微情報流出の可能性

2024-12-31 05:00:30 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【政府】:能動的サイバー防御、国立病院や防衛産業も対象へ調整…2019年に安全保障上の機微情報流出の可能性

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:能動的サイバー防御、国立病院や防衛産業も対象へ調整…2019年に安全保障上の機微情報流出の可能性 

 政府は、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に際し、新設する官民の情報共有の枠組みに国立病院や防衛産業を加える方向で調整に入った。いずれも機能不全に陥れば、国民の生活や自衛隊活動に支障をきたすため、情報共有で被害の未然防止につなげる。必要に応じ、政府が防御を支援し、攻撃元の無害化に乗り出すことも検討する。

首相官邸
首相官邸

 複数の政府関係者が明らかにした。政府はサイバー攻撃への対処力を向上させるため、国内外の脅威情報を官民で共有する枠組みを創設する。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発展的に改組した新組織「国家サイバー統括室(仮称)」が運営を担う方向だ。 

 枠組みでは、政府が事業者と平時から最新の脅威情報を共有する。事業者がサイバー攻撃を受けた場合、政府への報告が義務となる。枠組みへの加盟は事業者の任意で、政府は国立病院や防衛産業が加盟を希望する場合は認め、防御対象に加える方針だ。

 枠組みは当初、経済安全保障推進法に基づく、大手電力会社などの基幹インフラ事業者を中心に構成する方針だった。「社会活動の機能維持と安全保障能力の基盤確保」の観点から検討した結果、国立病院と防衛産業も加える必要があると判断した。

 政府は民間などの病院も追加する方向で検討中だが、病床の規模が大きく、救命救急センターを設置するなど地域の中核病院としての機能を担う国立病院の被害防止を先行して進める。医療機関に大規模な被害の発生が予想される事案では、政府が攻撃元サーバーへの侵入・無害化措置などを行うことも検討している。

 防衛産業を巡っては、2019年に三菱電機がサイバー攻撃を受け、同社と取引のある防衛省は計59件の安全保障上の機微情報が流出した可能性があると公表した。22年に改定した国家安全保障戦略では、「防衛生産・技術基盤は防衛力そのもの」と位置付けたように、防衛産業は自衛隊の継戦能力を支える。装備品の機微情報などを扱うため、サイバー攻撃の標的になりやすく、政府は防衛産業の中核企業が枠組みに参加することを想定している。

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 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入】  2024年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・12.31】:能登半島地震1年 復旧道半ば 一層の支援を

2024-12-31 04:06:00 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【社説①・12.31】:能登半島地震1年 復旧道半ば 一層の支援を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.31】:能登半島地震1年 復旧道半ば 一層の支援を

 能登半島地震の発生からあすで1年となる。

 元日を襲った最大震度7の揺れは日本海に突き出た半島に甚大な被害をもたらした。道路の寸断で孤立地区が多発した。
 
 復興に向かおうとしていたさなかの9月、今度は未曽有の豪雨が追い打ちをかけた。
 住民は「さすがに心が折れそうだ」と打ちひしがれた。
 現地では今も崩れた家屋が随所に残り、河川の氾濫跡が痛々しい。断水も一部で続く。
 被災者は仮設住宅や避難所などで不自由な暮らしを続ける。
 地震では助かったのにその後の避難生活で亡くなり、災害関連死に認定される人が増え続けており、2016年熊本地震の222人を上回った。建物倒壊などによる直接死と合わせた犠牲者は500人を超した。
 能登の傷痕は深く、復旧はなお途上だ。復興は見通せない。
 住民の平穏な暮らしを一日も早く取り戻し、地域を再興させなければならない。国はさらに力強く支援すべきだ。

 ■関連死の防止全力で

 災害関連死は70代以上が9割を超える。被災後3カ月以内に死亡した人は8割に達する。
 当初、救援物資が不足し避難所環境が整わず、それが高齢者の負担になった可能性がある。
 石川県はホテルなどへの2次避難を促すなど関連死の防止に努めた。しかし、車で長時間搬送されたことで体調を崩し死亡したケースもあった。
 痛ましい結果が拡大した要因を詳しく分析する必要がある。
 被災地は厳寒期に入った。関連死をこれ以上増やさないため、行政、医療、福祉が連携して被災者をきめ細かくケアしていくことが欠かせない。
 能登の課題を検証してきた政府の有識者会議は11月に報告書をまとめた。被災者の命と尊厳を守るため、避難所の支援から「人の支援」へと考え方を転換するよう促した点が特徴だ。
 避難所環境の最低ラインを示す国際的な「スフィア基準」を踏まえ、食料や衛生的なトイレ、簡易ベッドなどを十分確保することも強く求めている。
 スフィア基準について、政府はこれまで自治体向けの避難所運営の指針で紹介するにとどめていたが、今回、基準を反映させた内容に指針を改定した。
 避難所の環境改善は関連死防止の一歩だ。国際水準に沿った避難所が災害時に即座に設置されるよう、国は自治体任せにせず準備を急いでもらいたい。

 ■住民の思いを大切に

 現地では被災した建物の解体や撤去が遅れている。自治体が所有者に代わって解体・撤去する公費解体を見込む石川県内の3万棟超の建物のうち、作業が完了したのは3分の1ほどだ。
 県内外の業者が従事しているが現地に宿舎が足りない。金沢などから数時間かけて通うケースも多いため作業時間が十分取れないことが影響している。
 半島という地理的特性は1年を経た今、もはや復旧の遅れの理由にはならない。国と県は工事が迅速かつ安全に進むよう、手だてを尽くさねばならない。
 復旧が進まないこともあって被災地では人口流出が進む。
 しかし能登の人たちの郷土愛は強い。厳しい風土の中、いたわり合いながら生きてきた。
 豪華な灯籠を大勢で担ぐ「キリコ祭り」は半島各地で行われる伝統行事で、住民が地元の良さを再認識する場でもある。
 長年祭りに携わる珠洲市三崎町の寺家下出(じけしもで)地区長、出村正広さん(77)は「今秋は縮小して行ったが、祭りはいつまでも住み続けたい故郷の誇り。来年は本格再開できれば」と話す。
 住宅の修繕、介護、会社の再建―と被災者はそれぞれ悩みを抱える。行政は、適切な支援を積極的に提供する親身な取り組みを民間の協力も得て拡充し、暮らしとなりわいの再生につなげてもらいたい。

 ■教訓を将来へ末永く

 能登半島地震は半島北側の海底の活断層が引き起こした。この断層の存在は十数年前に研究者が明らかにしていた。
 だが石川県は、政府の地震調査研究推進本部がその断層のリスク評価をしていなかったことを理由に、被害を低くみた従来想定を見直さなかった。
 科学の知見が生かされず、水道管や道路などの重要インフラが脆弱(ぜいじゃく)なままにされた可能性は否定できないのではないか。
 今回の地震では能登半島の北岸が大きく隆起した。同様の地震と隆起が、千年から数千年の間隔で繰り返されてきたことも分かってきた。
 大地が人間の時間感覚を超えた次元で動いていることを末永く語り継ぐ姿勢が大切になる。
 過疎と高齢化が進んだ山がちな半島で冬、元日に発生するという負の面が重なったのが今回の地震だった。そこに気候変動の影響か、豪雨が重なった。
 
 この被災のありようは今の日本のどこでも生じ得る。能登の教訓を防災・減災に生かすことが国と自治体の責務である。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月31日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説①・12.31】:能登半島地震1年 復旧道半ば 一層の支援を

2024-12-31 04:05:50 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【社説①・12.31】:能登半島地震1年 復旧道半ば 一層の支援を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.31】:能登半島地震1年 復旧道半ば 一層の支援を

 能登半島地震の発生からあすで1年となる。

 元日を襲った最大震度7の揺れは日本海に突き出た半島に甚大な被害をもたらした。道路の寸断で孤立地区が多発した。
 復興に向かおうとしていたさなかの9月、今度は未曽有の豪雨が追い打ちをかけた。
 住民は「さすがに心が折れそうだ」と打ちひしがれた。
 現地では今も崩れた家屋が随所に残り、河川の氾濫跡が痛々しい。断水も一部で続く。
 被災者は仮設住宅や避難所などで不自由な暮らしを続ける。
 地震では助かったのにその後の避難生活で亡くなり、災害関連死に認定される人が増え続けており、2016年熊本地震の222人を上回った。建物倒壊などによる直接死と合わせた犠牲者は500人を超した。
 能登の傷痕は深く、復旧はなお途上だ。復興は見通せない。
 住民の平穏な暮らしを一日も早く取り戻し、地域を再興させなければならない。国はさらに力強く支援すべきだ。

 ■関連死の防止全力で

 災害関連死は70代以上が9割を超える。被災後3カ月以内に死亡した人は8割に達する。
 当初、救援物資が不足し避難所環境が整わず、それが高齢者の負担になった可能性がある。
 石川県はホテルなどへの2次避難を促すなど関連死の防止に努めた。しかし、車で長時間搬送されたことで体調を崩し死亡したケースもあった。
 痛ましい結果が拡大した要因を詳しく分析する必要がある。
 被災地は厳寒期に入った。関連死をこれ以上増やさないため、行政、医療、福祉が連携して被災者をきめ細かくケアしていくことが欠かせない。
 能登の課題を検証してきた政府の有識者会議は11月に報告書をまとめた。被災者の命と尊厳を守るため、避難所の支援から「人の支援」へと考え方を転換するよう促した点が特徴だ。
 避難所環境の最低ラインを示す国際的な「スフィア基準」を踏まえ、食料や衛生的なトイレ、簡易ベッドなどを十分確保することも強く求めている。
 スフィア基準について、政府はこれまで自治体向けの避難所運営の指針で紹介するにとどめていたが、今回、基準を反映させた内容に指針を改定した。
 避難所の環境改善は関連死防止の一歩だ。国際水準に沿った避難所が災害時に即座に設置されるよう、国は自治体任せにせず準備を急いでもらいたい。

 ■住民の思いを大切に

 現地では被災した建物の解体や撤去が遅れている。自治体が所有者に代わって解体・撤去する公費解体を見込む石川県内の3万棟超の建物のうち、作業が完了したのは3分の1ほどだ。
 県内外の業者が従事しているが現地に宿舎が足りない。金沢などから数時間かけて通うケースも多いため作業時間が十分取れないことが影響している。
 半島という地理的特性は1年を経た今、もはや復旧の遅れの理由にはならない。国と県は工事が迅速かつ安全に進むよう、手だてを尽くさねばならない。
 復旧が進まないこともあって被災地では人口流出が進む。
 しかし能登の人たちの郷土愛は強い。厳しい風土の中、いたわり合いながら生きてきた。
 豪華な灯籠を大勢で担ぐ「キリコ祭り」は半島各地で行われる伝統行事で、住民が地元の良さを再認識する場でもある。
 長年祭りに携わる珠洲市三崎町の寺家下出(じけしもで)地区長、出村正広さん(77)は「今秋は縮小して行ったが、祭りはいつまでも住み続けたい故郷の誇り。来年は本格再開できれば」と話す。
 住宅の修繕、介護、会社の再建―と被災者はそれぞれ悩みを抱える。行政は、適切な支援を積極的に提供する親身な取り組みを民間の協力も得て拡充し、暮らしとなりわいの再生につなげてもらいたい。

 ■教訓を将来へ末永く

 能登半島地震は半島北側の海底の活断層が引き起こした。この断層の存在は十数年前に研究者が明らかにしていた。
 だが石川県は、政府の地震調査研究推進本部がその断層のリスク評価をしていなかったことを理由に、被害を低くみた従来想定を見直さなかった。
 科学の知見が生かされず、水道管や道路などの重要インフラが脆弱(ぜいじゃく)なままにされた可能性は否定できないのではないか。
 今回の地震では能登半島の北岸が大きく隆起した。同様の地震と隆起が、千年から数千年の間隔で繰り返されてきたことも分かってきた。
 大地が人間の時間感覚を超えた次元で動いていることを末永く語り継ぐ姿勢が大切になる。
 過疎と高齢化が進んだ山がちな半島で冬、元日に発生するという負の面が重なったのが今回の地震だった。そこに気候変動の影響か、豪雨が重なった。
 この被災のありようは今の日本のどこでも生じ得る。能登の教訓を防災・減災に生かすことが国と自治体の責務である。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月31日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【卓上四季・12.31】:年の瀬のまちかどで

2024-12-31 04:05:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【卓上四季・12.31】:年の瀬のまちかどで

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・12.31】:年の瀬のまちかどで

 
 なにかと気ぜわしかった1年がもう終わる。
 
 大そうじやおせちの準備は済んでいないけれど、ひと休みしよう。
 
 風のない好天は久しぶり。年の瀬の...、
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2024年12月31日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・12.31】:沖縄予算4年連続減 国会で「なぜ」の検証を

2024-12-31 04:01:50 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【社説・12.31】:沖縄予算4年連続減 国会で「なぜ」の検証を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.31】:沖縄予算4年連続減 国会で「なぜ」の検証を

 政府は2025年度予算案を閣議決定した。内閣府の沖縄関係予算案は2642億円で、24年度当初から36億円減。県が強く求めていた3千億円台を4年連続で割り込んだ。 

 石破茂首相は先の臨時国会の所信表明演説で次のように語った。

 「沖縄振興の経済効果を十分に域内に波及させ、実感していただけるよう、沖縄経済の強化に向けて支援を継続する」

 県が併せて要望していた一括交付金も721億円で12年度の創設から最低となる中、「沖縄経済の強化」を実感することは難しい。

 本年度は補正予算額が大きかったこともあるが、来年度の一般会計が115兆円と過去最大を更新したのとは対照的といえる。

 コロナ禍からの経済回復を確実なものとし、地域の持続的成長につなげる予算となるのか。

 産業振興など自立型経済の構築に向けた個々の事業を否定するものではない。とりわけ子どもの貧困対策の充実、新たに盛り込まれた子どものウェルビーイング(心身の健康や幸福)実現に向けた調査などに注目している。

 しかし、新基地建設を巡る県と政府の対立が、それとは関係のない予算に影を落とし続ける問題は見過ごしにできない。

 沖縄予算の減額が目立つようになったのは、新基地に反対する翁長雄志知事誕生以降の15年度からだ。

 新基地を「踏み絵」にした対応と同時にあからさまなのが、県内部の分断である。

              ■    ■

 沖縄関係予算の中でも、国が市町村に直接交付する特定事業推進費は10億円増の95億円を計上し、過去最高となった。

 特定事業費が突如導入されたのは19年度。政府は「一括交付金を補完するもの」と説明したが、一括交付金を減額し特定事業費に置き換えているように映る。

 見え隠れするのは市町村に対しコントロールを強めたい政府のやり方だ。地域分断の狙いも透ける。

 ただ特定事業費は制度導入からの5年間で、執行率が一度も6割にも達していない。使い残した不用額の合計は62億円余りに上る。

 政治的思惑が漂う予算であるが故、見積もりや査定に甘さが生じているのではないか。

 一括交付金が減額された時、不用額や繰越額の多さが指摘されたが、特定事業費はどうなのか。

              ■    ■

 政府は年明けの通常国会に予算案を提出する。これまでと違い少数与党下の国会では、野党の協力を得なければ予算は成立しない。

 立憲民主党など野党からは予算の増額や、特定事業推進費の見直しなどを求める声が上がっている。

 基地との関連性や国の裁量が高まる沖縄予算についてきちんとした検証が必要だ。

 沖縄予算は県民のための予算であり、沖縄発展のための予算である。

 振興のあるべき姿について踏み込んだ議論を求めたい。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月31日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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