愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

アベノミクスは日本資本主義の行き詰まりを象徴したが、マスコミのツッコミは曖昧!その原因は!?

2013-06-07 | 日記

安倍講演の内容について、日経と東京、いくつかの地方紙が社説で論評しました。以下、愛国者の邪論が読んでみた感想を述べてみます。そのポイントは、以下のとおりです。

 1.日本資本主義は混迷の一途を辿っているということです。しかし、この混迷を打開する展望は全く見出すことはできていません。それが混迷を深める要因にもなっています。 

2.為替と株の投機というマネーゲームで帳尻を合わせる資本主義は、どんな治療をしようとも、危機を打開することはできず、資本主義の行き詰まりを象徴しています。このことは連日垂れ流されている為替相場と株価の乱高下を解説している専門家の「乱高下正当化」発言を視ていると良く判ります。 

3.そのマネーゲームの「主役」「レギュラー」である機関投資家と個人投資家の矛盾が顕在化してくるのは、間近いでしょう。「イレギュラー」である「労働者」「市民」は最初からリングに上がることが許されていないことは当然ですが、大損するのは、誰か、はっきりしています。機関投資家のなかでも低金利時代を反映して、貯金・貯蓄として投資信託に参入している「個人投資家」ならぬ「年金生活者」の行方も元本保証への期待を大きく裏切る事態が発生しようとしています。 

4.「実体経済」の中身が、まだまだ国民的レベルで認識・確認されていません。封建主義経済から資本主義経済へ発展してきた頃の資本主義の積極的側面は、今や消滅し、「規制改革」=「規制緩和」=「自由競争」の名の下に「優勝劣敗」「弱肉強食」が、巨大な格差社会をつくりだしています。しかも生産労働よりも、マネーゲームによる利益誘導操作中軸の資本主義となってしまっています。 

5.この「規制改革」=「規制緩和」という名の「自由競争」は、無秩序経済と無秩序社会を作り出し、これが資本主義の墓堀人になる「芽」の象徴となっているように思われます。本来であれば、資本主義の墓堀人となるべきところですが、張り巡らされた規制緩和オンリーワンイデオロギーによって、シブトク、「規制改革」「自由化」「規制緩和」「景気回復」などという言葉は、あたかも労働者・市民、いわゆる「国民」の生活を改善してくれるかのような日本語として使われ、事実上の資本主義の延命装置となっています。 

6.「実体経済」の担い手として、本来、生産活動に参加する対象である、生産労働の主人公である「労働者」や「市民」は、低賃金労働や非正規労働、ブラック労働など、無秩序経済を反映して、個人投資家軍団に参入する自由を与えられ、なけなしの貯蓄をマネーゲームにつぎ込んでいます。そうしたマネーゲーム劇に参加を促す企業ビジネスがあるほどです。これが資本主義の延命装置の一群を象徴しています。 

6.資本主義の延命装置のもう一つの側面、それは、国民分断です。官と民の対立と分断、公務員バッシング、生活保護者バッシング、非正規派遣労働と正社員、都市と地方の分断対立、これはTPP参加の場合の農村と都市消費者の対立と分断です。沖縄の「負担軽減」と本土の「負担請負」も、その一つです。基地負担に対する補助金と原発立地地域への補助金バラマキです。更に言えば、対中・対朝脅威論の扇動による日本資本主義優越意識のバラマキです。 

7.散々煽ったにもかかわらず失敗した小泉構造改革、更に言えばアベノミクスのパクリである「レーガノミクス」の破綻から学ばず、新しい装いを着せた「期待」を発信し、垂れ流し、煽るマスコミが、今や、「実体経済」の本質中の本質である労働者・国民を大切にする思想の軽視から本当に脱却できるかどうか、その分かれ道に来ていることが、社説の内容をみると浮き彫りになってきています。 

8.しかし、日本資本主義社会に生きるマスコミの「商業主義」は、ジャーナリズム精神との矛盾の中にあって、マスコミ経営のバックである「資本家」の意向から「自由」になっているかと言えば、必ずしも「自由」とはなっていないことが、社説の内容から判ります。アベノミクスの「成長戦略」「規制改革」を「批判」しながら、「もっと徹底しろ」「さもなければ為替も株価も乱高下するぞ」と煽っているのです。 

その点で、むしろ、日本資本主義の延命の尖兵となって規制緩和オンリーワンイデオロギーを振りまいているマスコミもあります。矛盾にさいなまれながらも、苦渋を見せながら展望を見出せない、更にいえば高みの、上から目線のマスコミもあります。 

9.更に言えば、マスコミの多様な立ち居地がどのようなベクトルを合力していくか、その最大の解決手段は、国民の運動・たたかいでしょう。中南米やアメリカ、ヨーロッパの市民や労働者の運動を見れば明瞭です。日本の労働者・市民、とりわけ若者、学生の運動をどのように発展させるか、その要求実現運動の在り方が鋭く問われているように思います。 

10.あの60年代から70年代の諸運動の高まりを再現できるかどうか、です。非正規労働者のテントムラの運動の水脈は、昨年の原発再稼動反対運動へと受け継がれ発展しましたが、今後はオール沖縄・オールフクシマ・オスプレイ配備訓練反対運動、TPP参加反対運動、原発再稼動反対運動、脱・卒原発ゼロ運動の統一的発展、東日本大震災被災地復興運動、生活保護受給者の命を守り、勤労の権利と義務保障運動、ブラック企業告発運動と労働三法実現運動や第一次産業復活運動、公務員労働者運動と民間労働者運動の連帯と発展など、生産現場や各職場、諸地域や学校などにおける個別諸要求実現運動を「ドブ板選挙」のように位置づけつつ、個別の運動として発展させながら、関連させながら、全体として、「新自由主義」と称している資本主義を告発し、命と暮らしを守し、人間の尊厳を回復する運動として資本主義を変革する運動にまで発展させていけるかどうか、です。 

その最大の理論的支柱は日本国憲法です。この運動の先にあるのは、徹底した民主主義です。これこそが、経済原則である資本主義を規制し、民主=ピープルを主人公たらしめていくのです。何故ならば、資本主義こそが、民主主義を発展させ、根付かせ、同時に民主主義こそが、封建主義から資本主義を発展させたことを、今一度想い起こし、民主主義を、今こそ使い、生かしていくのです。 

では、いくつかの社説を掲載しておきます。ご覧ください。 

日経 日本経済 この規制改革は一丁目一番地に値するか 2013/6/7 4:00
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55939130X00C13A6EA1000/

 安倍晋三首相が再始動させた規制改革会議が答申を出した。4カ月の短い間に雇用分野などの改革策を示したのは、民主党政権がほとんど何もしなかったのに比べれば前進だ。だが医療、農業分野の岩盤規制には踏みこまなかった。 私たちは岩盤規制の内側にいる既得権益団体や規制官庁との対決にひるまぬ覚悟を首相に求めてきた。首相は成長戦略を語った講演で「規制改革こそが一丁目一番地だ。国論を二分する岩盤に立ちむかう」と述べたが、答申はその言葉に値するとは言いがたい。 岩盤規制が阻む代表は2つ。混合診療と企業の農地所有である。 混合診療をみとめるのは十年来の政策課題だ。患者が健康保険のきく診療と自由診療を合わせて受けるのを厚生労働省は原則、禁じている。例外として一部の先進医療との併用をみとめているが、種類を限定し、いずれは保険診療にふくめるのを前提にしている。 がん治療などの分野では、世界中の製薬会社が新薬開発にしのぎを削っている。なかには特定の患者の特定の病状にだけ、よくきく高価な薬が出てきた。このような薬を試したい患者は少なくない。 その切実な願いにこたえるために、保険外でも効果と安全性を確認して使えるようにするのが、患者本位の医療改革ではないか。

 また農林水産省は民間企業に農地所有をみとめず、農業生産法人への出資を5割未満に制限している。この農地規制が、耕作放棄地が増大する一因なのは明らかだ。 農業への参入に意欲を燃やす企業が経営規模を広げやすくするために、所有規制はゆるめるのが当然だ。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加にそなえ、グローバル競争に耐えうる農業をつくるためにも、それは必要である。

 改革会議の答申には雇用分野にみるべき点もある。たとえば仕事の中身、勤める場所、働く時間を絞りこむジョブ型正社員(限定社員)を広げるために、来年度に新しいルールをつくると明記した。 正社員と非正規社員の2分類を超え、双方の良い面をあわせ持つ働き方を根づかせて働き手の選択肢を増やすために、ルールをつくる厚労省の手腕がためされる。 答申は官僚が集めた細かい項目も並ぶが、このような制度変更は本来、改革会議の仕事ではない。真の成長戦略へ向け、改革はむしろこれからが本番だ。次の答申へ向け、硬い岩盤に挑んでほしい。 

中日/東京 アベノミクス/国民主役の成長戦略を 2013/6/7 8:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013060702000126.html

 安倍政権の経済政策アベノミクスが雲行き怪しい。異次元の金融緩和で盛り上がった市場も、肝心の成長戦略で失望が広がった。企業最優先でなく、国民が幸せになれる成長戦略に転換すべきだ。 安倍政権は六日、成長戦略に続いて経済・財政政策の指針となる骨太の方針をまとめた。社会保障費抑制のために生活保護をさらに削り込む一方、公共事業は重視するなど相変わらずの姿勢である。 成長戦略の眼目は「世界で一番企業が活動しやすい国」にすることだという。外資を含め企業が進出しやすいよう税制や規制に配慮した「国家戦略特区」をつくる。安全性が確認された原発の再稼働を進める。二〇二〇年にインフラ輸出を三倍に増やし、外国企業の対日直接投資額を倍増させる、などが目玉だ。 「成長戦略の一丁目一番地」とした規制改革では、解雇しやすい正社員といわれる限定正社員の雇用ルールを来年度に決める方針を打ち出した。 これらアベノミクスの成長戦略に通底するのは、経済界の要望に沿った企業利益を最優先する思想であり、働く人や生活者は置き去りにした国民不在の空疎な政策である。「富める者が富めば貧しい者にも富が自然に浸透する」というトリクルダウン経済理論によるといわれるが、米国では貧富の格差がさらに拡大する逆の効果が起きたのは広く知られるところだ。 そんな経済界に配慮したはずの成長戦略だったが、市場の反応は冷淡だ。それは一言でいえば、総花的に事業を並べたものの、目標達成までの実現性が疑わしいためである規制改革でも参院選勝利を最優先して農協や医師会などの既得権には切り込まず、まやかしの姿勢が市場に見透かされた。 そもそも成長戦略や規制改革は誰のためのものか。国民を不幸にするものならば、ない方がましである。介護や医療、文化、スポーツなど国民の幸福につながる成長分野は多々あるはずだ。 デフレ脱却のために経済成長は必要である。だとしても、そのために原発再稼働を急いだり、他国に原発を輸出するのは間違っている。福島原発事故の原因すら究明できていないのである。 フクシマを経験した日本がなすべき成長戦略は、再生可能エネルギーや省エネ分野の研究、実用化に注力することではないのか。世界で一番を目指すならば、こうした地球規模で貢献できる仕事こそがふさわしい使命である。

秋田さきがけ 成長戦略第3弾 練り直し、肉付けも必要 (2013/06/06 付)

http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20130606az

 来るべき参院選挙もにらんでいるのだろう。安倍晋三首相は成長戦略第3弾で1人当たりの国民総所得(GNI)を10年後に150万円以上増やすとの目標を掲げた。高いハードルを乗り越えられる実効性を伴った戦略なのか。その行方をしっかりと見定めていきたい。 「民間活力の爆発」をキーワードに、国民総所得増加目標のほか、3年間で民間投資を約1割増やして70兆円台に回復、2020年にインフラ輸出を30兆円に拡大—といった数値目標が示された。いずれも強気な目標が並んだといえる。 一般医薬品のインターネット販売の原則解禁など規制改革、対象地域を絞って各種規制を緩和する「国家戦略特区」の設置、民間資金を活用した社会資本整備(PFI)の推進—などが第3弾の柱だ。 ただ一般医薬品のインターネット販売によってどれほどの市場拡大が期待できるのか。国家戦略特区では、外国人医師の診療行為を認め、建物の容積率規制を一部緩和するなどとしているが大都市限定の内容に映る。PFIの推進が将来のインフラ整備の切り札になり得るかどうかは未知数。壮大な目標に対して、柱の印象はいかにも細い。 バブル崩壊後、「失われた20年」ともいわれる景気低迷期が続いた。何とか光明を見いだしたいという切実な願いが安倍政権の経済政策「アベノミクス」に託されている。その願いをかなえることなく、単なる期待のまま終わらせてはならない。 成長戦略は、金融緩和、財政出動と共にアベノミクスの「三本の矢」の一つ。順次打ち出してきた成長戦略第1、2弾と合わせ、14日に閣議決定される運びだ。 ただし第3弾の発表に株式市場の反応は手厳しかった。理由は一つと限らないが、昨日の東証株価は大きく下落し、2カ月ぶりの安値水準となった。 アベノミクスへの期待感などから上昇基調だった株価もこのところは乱高下が続く。一般家庭にあっては賃金上昇の恩恵に浴すことなく、むしろ円安による物価上昇が不安要素と受け止められている。成長戦略の実効性への疑念がさらに膨らむ可能性は決して小さくない。 そもそも財政再建や社会保障に対する国民の不安は大きく、容易に払拭(ふっしょく)されない。本県など地方では人口減少や少子高齢化の進行による閉塞(へいそく)感が一段と色濃くなっている。中には経済成長によって解決される課題もあるだろうが、成長戦略によって不安を克服していく道筋を丁寧に示すことも大切だ。 強気一辺倒の目標では市場はもちろん、国民からの信頼も得られない。成長の陰で困窮する層が生じることはないのか。そうした人々に手を差し伸べる対策は怠りないか。経済成長の実現を図っていくに当たり、戦略をさらに練り直し、肉付けしていく必要があろう。 

福島民友 成長戦略第3弾/地方へ効果の波及を考えよ (6月6日付)

http://www.minyu-net.com/shasetsu/syasetu/130606s.html

 安倍晋三首相が成長戦略第3弾を明らかにした。キーワードは「民間活力の爆発」で、目玉は「国家戦略特区」の推進や民間資金を活用した社会資本整備(PFI)の拡大などの規制緩和策だ。これで安倍政権の経済政策「アベノミクス」のうち、「3本目の矢」となる成長戦略のメニューが出そろった。 市場は、このところの株式相場の乱高下などでアベノミクス効果に疑念を抱き始めている。不安を払拭(ふっしょく)して信頼を取り戻すためには、規制緩和策を着実に実行していくことが必要だ。「行動なくして成長なし」と明言する首相の覚悟が試される。 国家戦略特区は、ビジネスをしやすい環境をつくって内外から企業や人材を呼び込むため、大都市を中心に対象地域を限り、税制優遇や規制緩和を特例として認めようという制度。欧米やアジア新興国との「都市間競争」を有利に進め、大都市をけん引役に経済活性化を図ろうとの狙いだが、地域経済が置き去りにされないか心配だ。地方にも効果が波及するよう知恵を絞ってもらいたい。
 政府の規制改革会議は首相に、次世代自動車の「世界最速普及」を目指し、関連規制を見直すなどの具体策を答申した。国内経済への影響が大きい自動車産業の国際競争力強化のために、ぜひ実現させてほしい。 このほか答申は、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売の全面解禁や、多様なエネルギービジネスをもたらす電力システム改革、さらに再生医療の推進のため医療機関が細胞培養を外部委託する際のルールの見直しなどを盛り込んだ。 これを受けて首相は「IT時代に対応した改革、最新の医療技術を一気に普及させるための新しい仕組みづくり」を都内での講演で約束した。答申には賛否両論のある提案も含まれる。生活者の利益向上を最優先に取り組んでもらいたい。 PFIは、国や自治体が持つ空港や道路、下水道といった公共施設やインフラを、所有権はそのままにして営業する権利だけを民間に売る仕組み。政府は老朽化している首都高速道路の改修のため、首都高の上の空間を利用する権利(空中権)を民間に売却して資金調達するアイデアを示すなど意欲的だ。 インフラの老朽化は深刻な社会問題になっているものの、国や地方自治体は財政難で再建する余裕がない。行動力が問われているのは民間企業も同じであり、果敢に挑戦してほしい。 ただ外国では、金融や医療の規制緩和を進めた結果、運営権を手にした企業が収益向上を優先させて料金を引き上げ、利用者の反発を招いたケースもある。バランス感覚が必要だ。規制緩和の効果を重視するあまり、公益性の維持・確保が軽視されることがあってはならない。 

京都 成長戦略素案  家計を潤す施策見えぬ [2013年06月07日掲載]

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/index.html

本当に実現できるのか。誰のための、誰に向けてのものなのか。 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の柱である成長戦略の素案に対し、そう思った人が多いのではないか。 企業支援に重点を置き、達成すべき数値目標を掲げているが、どう実現させるのか具体策に乏しい。しかも新味に欠ける-というのが市場の見方だ。実際、発表後に株価は急落した。 だが、多くの国民にとっての関心事は、成長戦略によって暮らしはよくなるのか、家計が潤うかどうかだろう。 素案には家計を直接支援する施策はほとんどない上、企業が受ける恩恵が家計に行き渡る道筋も見えない。このまま景気回復を実感できない状況が続くようだと、アベノミクスへの期待感はしぼみ、失望に変わりかねない。 すでに公表された成長戦略の第1、2弾に次ぐ第3弾のキーワードは「民間活力の爆発」だ。1人当たりの国民総所得を10年後には150万円以上増やす。3年間で民間設備投資を約1割増やし、70兆円に回復させる-など威勢のいい数字が並ぶ。 ところが、実現させるための政策といえば、目玉の「国家戦略特区」にしても、中身はインターナショナルスクールの設置要件の見直しなどで、めざすような「世界で一番ビジネスがしやすい都市」になれるか、大いに疑問だ。 インフラ整備にあるPFI(民間資金を利用した社会資本整備)活用も、これまでのやり方とどこか違うのかはっきりしない。 企業側が求めていた法人税率引き下げ、解雇規制の緩和など「痛みの伴う改革」は参院選を控え、先送りしたため中途半端な内容になった。あるいは「経済産業省主導の作文」との冷めた見方もあるが、一番の問題は国民のための戦略に見えないことではないか。 安倍首相は、企業がもうかれば給料が上がり雇用も増えるという「トリクルダウン効果」を狙っているのだろうが、かえって貧富の格差を広げかねない。 遠回りのようでも内需拡大と、最低賃金の引き上げなど国民生活の底上げを図ってこそ、デフレ脱却につながるのではないか。 もう一つ大きな問題がある。原発の再稼働に「政府一丸となって最大限に取り組む」としていることだ。福島第1原発の事故は収束が見通せず、事故原因も未解明の中での「原発の活用」が、国民の理解を得られるとは思えない。 大震災を経験した今も、以前と変わらぬ成長戦略でいいのか。この国のありようも問われている。 

琉球新報 成長戦略 威勢はいいが新味なし2013年6月7日

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207668-storytopic-11.html

 日銀の大胆な金融緩和、機動的な財政出動に続き、成長戦略が示され「アベノミクス」の「三本の矢」が出そろった。投資70兆円など威勢のいい目標が並ぶが、具体策は新味に乏しい印象を受ける。 まず企業支援に重点を置き過ぎている。支援する理由は、企業を強くすれば、もうけが滴のように下に垂れてきて、給料が上がり雇用も増える、という理論に基づいている。 楽観し過ぎではないか。景気が回復軌道に乗らなければ、滴は垂れず給料は上がらない。 現に最近の株の乱高下や長期金利の上昇で「アベノミクス」の雲行きは怪しくなっている。円安効果で企業業績は改善しているが、狙い通りに設備投資に結びつくか不透明だ。賃金上昇の兆しも見えない。円安で食品価格や電気料金も上がり「アベノミクス」の副作用が家計を直撃している。 企業に手厚い半面、家計を直接支援する施策は一部にとどまっている。格差が広がる中で貧困層など弱者に対する施策も薄い。 安倍晋三首相は、10年後に1人当たり国民総所得(GNI)が150万円以上拡大するとの目標を表明した。長期戦略の狙いを「頑張って働く人たちの手取りを増やすこと」と説明している。 バラ色に見える将来像だが、年収が単純に150万円増える訳ではない。GNIは国民と企業が1年間に国内外でつくりだしたもうけの総額を表す。150万円の中には企業のもうけが含まれているので、その分を差し引いて考える必要がある。 そもそも150万円の前提として、今後10年の平均で名目3%の経済成長を目指している。人口が減る中で実現可能なのか疑問だ。 雇用分野は、働く時間や勤務地が限られる「限定正社員」の普及が盛り込まれた。だが「正社員」とは名ばかりで解雇条件が緩い。解雇されやすい人を増やす結果になりかねない。 目玉の「国家戦略特区」の設置は、大都市中心に地域を絞って規制緩和する。これでは大都市と、地方の格差が広がってしまうのではないか。 エネルギー分野で、原発の再稼働に「政府一丸となって最大限取り組む」と明記した。原発事故の原因究明が終わらず、原子力政策も定まっていないまま「原発活用」を鮮明に打ち出すことは、理解できず、的外れと言わざるを得ない。 

沖縄タイムス [成長戦略素案]家計への恩恵道筋示せ 2013年6月7日 09時30分

http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-06-07_50169

 安倍政権が経済政策「アベノミクス」の「第三の矢」と位置づける新たな成長戦略の素案が5日、政府から示された。規制緩和で民間活力を高めて医療やエネルギーなどの有望市場を開拓し、国民生活の豊かさを示す指標となる1人当たりの国民総所得(GNI)を10年後に150万円以上増やすといった数値目標を設定している。 第一、第二の矢である大胆な金融緩和や機動的な財政出動はあくまでも時間稼ぎの景気対策にすぎない。日本経済に求められるのは潜在成長力を引き出す戦略であり、その実効性が問われよう。 新たな成長戦略では、2015年度までの3年間とそれ以降の施策スケジュールを整理し、重要施策ごとに政策成果指標を設定する。グローバル競争を勝ち抜ける製造業の復活を目指した緊急構造改革として、最初の3年間を集中投資期間、5年間を緊急構造改革期間とするプログラムも用意し、新事業や事業再編を促進させる。 具体的には、一般医薬品(大衆薬)のインターネット販売を原則解禁とする方針や、大都市中心に地域を絞って規制緩和する「国家戦略特区」の設置も打ち出している。 今回の成長戦略の特徴は、家計支援から企業支援へと大きく軸足を移した点である。企業がもうかれば、給料が上がり雇用も増えるという、企業主導の景気回復を訴えてきた安倍晋三首相の意向が強く反映されている。 ただ、その狙い通りいくのか、実現性に早くも疑問の目が向けられている。    

    ■    ■

 金融緩和による円安効果で輸出産業を中心に大企業は業績を改善している。だが、多くの企業はもうけを投資や事業再編に回すことには慎重姿勢だとされる。企業を後押しする補助金や減税の具体策は年末の予算編成や税制改正に先送りされた。 また、成長戦略の正否の鍵を握るとされた規制緩和も中途半端に終わった感が否めない。例えば、農業の競争力を高めるための「農地の大規模化」を打ち上げながら、参院選を控えて農協などの反発をおそれ、株式会社の農業への全面参入は見送られた。 歴代政権はこれまでも成長戦略を何度となく打ち出してきた。いずれも過大な目標を掲げてバラ色の項目を並べ立てたが、結局は多くが達成されなかった。今回の素案に盛り込まれた政策も従来型の域を出ていないものが多く、二の舞いになる可能性もある。

    ■    ■

 昨年末発足した安倍政権は積極的な財政出動と日銀の金融緩和で、円高からの脱却と市場活性化には一応成功した。その一方で、株価の乱高下や金利上昇、円安で食品価格や電気料金も上がるなど「アベノミクス」の副作用がじわり広がりつつある。 多くの企業支援策が盛り込まれた今回の成長戦略素案につきまとうのは、足元の地域や暮らしへの細かな配慮が乏しい点だ。生活の格差拡大という不安と常に隣り合わせでもある。14日に予定される閣議決定までに、企業の恩恵が庶民の家計に行き渡る道筋を示すべきだ。

(引用ここまで)

 

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