昨日の記事で、安倍首相のあいさつを批判しました。「抑止力」論としての日米軍事同盟を容認する立場にたつ朝日の姑息さは、安倍首相の憲法尊重擁護の義務違反を追及しなかったことです。憲法の平和主義こそが、安倍首相の祖父岸信介の弟である佐藤栄作をして非核三原則を国是たらしめたのですが、安倍首相には、そうした視点と関連は、いっさい無視でした。
以下の部分、思想と論理に象徴的です。現状追認思想とゴマカシです。あのスイスの「共同声明」が起草されてきた経過を踏まえれば、朝日のような第三者的思想が、如何に有害なものか、検証する必要があると思います。「日本人」に説教する前に、戦争被爆国としての日本のジャーナリズムとして、憲法の平和主義を戴く日本のマスコミとして何を伝えていかなければならないのか、自覚すべきです。
…ただ、市長がめざす「信頼と対話にもとづく安全保障体制」への道筋は容易ではない。日本は核の傘だけでなく、原発事故を経てもなお、原子力への依存を続けている。今回の平和宣言も核兵器を「絶対悪」と断じつつ、「平和利用」の是非には触れなかった。「核に頼る被爆国」の矛盾と向き合い、被爆地の祈りを世界にどう伝えるか。日本人はいま、核廃絶への長い道のりを歩む覚悟を改めて問われている。(引用ここまで)
そういう意味で、一見すると安倍政権を批判しているかのような書き方をしながら、実は、朝日は安倍政権の応援団となっているのです。ここでも検証できました。以下、その部分を掲載しておきますので、ご検討ください。
朝日6日付夕刊 「絶対悪」廃絶へ連携を 広島被爆68年
広島への原爆投下から68年を迎えた6日、広島市中区の平和記念公園で平和記念式典が開かれた。松井一実市長は平和宣言で、核兵器を「非人道兵器の極みであり『絶対悪』」とし、廃絶を訴え、国際社会との連携を求めた。▼2面=平和宣言全文、9面=継ぐバトン
松井市長は広島を「日本国憲法が掲げる崇高な平和主義を体現する地」と位置づけた。核保有国を念頭に「威嚇によって国の安全を守り続けることができると思っているのですか」と語りかけ、対話による安全保障体制への転換を訴えた。4月にスイスージュネーブであった核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会で、核兵器の非人道性を訴える共同声明に80力国が賛同したことを踏まえ、「核廃絶を訴える国が着実に増加している」と指摘。賛同しなかった日本政府に連携を求めた。
オバマ米大統領が6月にベルリンで、核兵器のさらなる削減に言及したことを「核軍縮の決意を表明した」と評価。一方で、日本と、NPT非加盟のインドとの原子力協定交渉は「核兵器を廃絶する障害になりかねない」と批判した。
式典に参列した安倍晋三首相はあいさつで「我々には、確実に、核兵器のない世界を実現していく責務があります」と表明した。
6日時点の被爆者の平均年齢は79歳に迫る。遺族代表と松井市長は、この1年で死亡した5859人の名簿を原爆死没者慰霊碑に納めた。式典には約5万人(市発表)が参列。外国代表は70カ国と欧州連合、国連総会議長が集い、初参加は2カ国だった。2010年と昨年に続き、米国のジョン・ルース駐日大使が参列・福島県浪江町の馬東部町長も昨年に続いて出席した。(後藤洋平)
朝日6日付夕刊 踏み込んだ平和宣言 <解説>
松井一実・広島市長は6日の平和宣言で、参列した安倍晋三首相を前に、核不拡散条約(NPT)体制の外で核開発を進めるインドに対し、原子力技術の移転をめざす日本政府の姿勢に懸念を表明した。市長は2年前の就任以来、「核兵器廃絶は国の役割」として政府への批判を避けていたが、今回は一歩踏み込んだ。▼1面参照
きっかけは今年4月。NPT再検討会議の準備委員会が開かれたスイスで、被爆2世の松井市長は、核兵器の非人道性を訴える共同声明に署名するよう政府に迫つた。だが、期待は裏切られた。市長は帰国後、「広島からより強いメッセージを打ち出すべきだ」と周囲に語ったという。
政府が共同声明に同調しなかったのは、米国の核の傘に依存する安全保障政策を優先したためだ。市長は平和宣言で、核保有国や核・抑止を支えとする国々に「威嚇によって国の安全を守り続けられると思っているのか」と訴えた。
ただ、市長がめざす「信頼と対話にもとづく安全保障体制」への道筋は容易ではない。日本は核の傘だけでなく、原発事故を経てもなお、原子力への依存を続けている。今回の平和宣言も核兵器を「絶対悪」と断じつつ、「平和利用」の是非には触れなかった。
「核に頼る被爆国」の矛盾と向き合い、被爆地の祈りを世界にどう伝えるか。日本人はいま、核廃絶への長い道のりを歩む覚悟を改めて問われている。(後藤洋平)
朝日7日付・37面 首相あいさつ被爆者らはどう聞いた 改憲の動きと矛盾感じる 核廃絶の取組不十分
原爆投下から68年を迎えた広島。安倍晋三首相は6日、6年ぶりとなる平和記念式典でのいさつに臨んだ。核兵器廃絶や平和実現への意欲を強調したが、集団的自衛権の憲法解釈の変更や改憲に傾く政権の姿勢を懸念する声もある。被爆者らは「広島演説」をどう聞いたのか。
「改憲の動きとの矛盾を感じるが、全世界の前で訴えた言葉は信じたい」 埼玉県所沢市の坂下紀子さん(70)は県遺族代表として、6日の平和記念式典に出席した。安倍首相があいさつで、歴代首相と同様に「核廃絶」や「非核三原則の堅持」を語ったことに安心した。
4月の核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で、核兵器の非人道性を訴える共同声明に政府が署名しなかったことに疑問が募った。今年は「首相が非核三原則に触れないかも」と耳を傾けた。「首相の言葉は重く感じた。その通り実行してほしい」
広島市で母や兄とともに被爆。母は「あの地獄絵は絶対に繰り返してはいけない」と言い続けた。子どもの頃、式典への参加は家族行事だった。 結婚後に広島を離れ、今年、四十数年ぶりに式典に臨んだ。「いくら核廃絶を訴えても、憲法9条を変えたら世界から疑われてしまう。改憲の動きがある中で平和の大切さを確認したい」と思ったからだ。
「戦後の日本を築いた先人たちが平和と繁栄の祖国を作り、与えてくれた」 首相のこの言葉に広島市の田坂キヨカさん(85)は憤りを感じた。「先人がした最も大きなことは戦争をしないと誓った憲法を守り続けたことではないか」 17歳の時、働いていた陸軍被服支廠の倉庫で被爆した。腕にガラス片が突き刺さった。急激な視力の低下にも悩まされ続けた。
「いまの憲法は『皆殺し爆弾』で死んでいった人たちの犠牲の上にある」。改憲をめざす首相は、戦争の恐ろしさを知らないのではないかと心配している。
岡山県倉敷市から式典に参列した佐藤徹夫さん(73)は5歳の時、広島市の自宅前で被爆した。首相のあいさつを聞き、「選挙に大勝しても、出しゃぱらずに控えめの発言に終始した」と受け止めた。 改憲に賛成の立場だ。核武装を進める北朝鮮、緊張が続く中国への対応として一定の軍備が必要だと思う。だが、安倍政権の核兵器廃絶への取り組みには不満を感じている。「外交力を使って、もっと積極的に核軍縮を世界に働きかけるべきなのに、全然やっていない」(引用ここまで)
朝日と比べて、赤旗の書き方はどうでしょうか?検討してみてください。朝日の伝えていない「もう一つの事実」をどのように伝えているか!です。
赤旗7日付2面 安倍政権の核容認・原発推進姿勢 ヒロシマと相いれず
安倍音三首相の平和記念式典でのあいさつは、核兵器廃絶という点でも、原発ゼロという点でも、この間の日本政府の後退を明りょうに印象付けるものでした。
「被爆国を名乗る資格はない。断じて許せない」(広島被爆者団体連絡会議)「ただちに署名し『核兵器禁止条約』締結に向け努力を」(広島県原爆被害者団体協議会)―。式典後の懇談の場で首相や関係閣僚を前に、被爆者代表からは政府の核兵器廃絶に対する取り組みに対して、怒りと失望の言葉や厳しい指摘が相次ぎました。
怒りの背景にあるのは、安倍政権の核兵器容認姿勢です。安倍政権は4月のNPT再検討会議準備委員会で、核兵器の非人道性を告発する共同声明(80力国賛同)への署名を拒否。声明の「いかなる状況下でも」核兵器を使用しないとした記述が「日本の安全保障の状況を考えた時にふさわしい表現か検討した結果、賛同を見送った」(4月25日、菅官房長官会見)ためです。
これは、米国の「核の傘」の下、一定の状況下では核兵器使用を容認する態度であり、核兵器を「非人道兵器の極みであり『絶対悪』」(広島市長「平和宣言」)とする姿勢とは相いれないものです。
原発政策でも安倍政権は「二度と核被災者を生みたくない」とするヒロシマ・被爆者の願いに逆行しようとしています。松井一実市長はNPT未加盟のインドとの原子力協定交渉について「核兵器を廃絶する上では障害となりかねない」と原発推進に懸念を表明。被爆者代表からも[命という視点から原発を廃止する国としての方針を](広島県労働組合会議被爆者団体連絡協議会)との声が出されました。
9条改憲を狙う安倍首相に求められているのは「日本国憲法が掲げる崇高な平和主義を体現する地」(「平和宣言」)、ヒロシマの今なお続く被爆者の苦しみと、怒りの声を聞くことです。(池田晋)
赤旗7日付2面 平和式典、首相、憲法順守言わず 広島市長 原子力協定に疑問
安倍音三首相は6日、広島市で開かれた平和記念式典で、「非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、恒久平和の実現に力を惜しまぬことをお誓い」するとあいさつしました。
「憲法の順守」と「非核三原則の堅持」については、同式典で毎年首相により言及され、安倍首相自身も第1次政権時の2007年には、「憲法の規定を順守」するとしていましたが、今年の式典では言及しませんでした。
核兵器の非人道性を告発する共同声明(4月、NPT再検討会議第2回準備委員会)に政府として署名を拒否したことにはふれず、「(核兵器の)非道を後の世に、また世界に、伝え続ける務めがある」と強弁。福島第1原発事故以後、民主党政権下で例年言及してきた脱原発方針についてもふれませんでした。
一方、松井一実広島市長は「平和宣言」で核兵器の非人道性に対する国際世論の高まりを踏まえ、「核兵器廃絶をめざす国々との連携を強化することを求める」と国に要望。NPT未加盟のインドとの原子力協定交渉について「核兵器を廃絶する上では障害となりかねない」と原発推進に懸念を示しました。(引用ここまで)
安倍首相は、大東亜戦争の戦争責任、戦争認識問題については、後世の史家に判断を委ねると逃げています、自らの正当化論を正当化しています。ところが、この大東亜戦争の最後の場面で引き起こされた原爆投下=核兵器使用については、「私たち日本人は、唯一の、戦争被爆国民であります。そのような者として、我々には、確実に、核兵器のない世界を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります」と「評価」しました。
「私たち日本人」が「唯一の、戦争被爆国民」となったのは何故でしょうか?自然現象の結果として「戦争被曝国民」となったのではりません。柳条湖事件、いわゆる満州事変以来の日中「戦争」とその行き詰まりを打開するためにとして引き起こされたマレー・真珠湾奇襲攻撃の結末として投下されたのではなかったのでしょうか?
その口実は、「満蒙は生命線」「ABCD包囲網」論の正当化でした。その裏には大東亜共栄圏構想がありました。この思想によって引き起こされた悲劇・惨禍をどのように評価するか、です。すでに日本国憲法に、その評価は明確に書かれているのです。安倍首相は、この憲法を尊重擁護する義務を負っているのです。この憲法に明記された戦争認識こそ、あの大東亜戦争正当化を完全に論破するものです。
そうした認識に立つ時、今回の安倍首相のあいさつの犯罪的役割、それを解明し、追及しない朝日の立ち居地は、非常に危険なものと言わざるを得ません。